2015年10月28日

10月28日 あすと長町仮設住宅のコミュニティづくり

震災から4年と7か月。仮設住宅で暮らしていた人たちが、徐々に、生活の場を移し始めています。今朝は、そうした人々がこれから暮らす新しい町、新しいコミュニティの課題について、お伝えします。

お話を伺ったのは、東北工業大学の准教授・新井信幸さん。建築計画、まちづくりを専門とする新井さんは震災直後から、仙台市内の仮設住宅の コミュニティづくりに関わってきました。



◆東北3県の人々が集まった巨大仮設
「あすと長町仮設住宅」。仙台市で一番最初に出来た、一番大きな233戸の仮設住宅。仙台の副都心で結構な繁華街、すぐそばにIKEAがあり再開発用地が残っているところに仮設住宅ができた。
仙台にも沿岸地域があるので、すぐ近所の方が入居するのかと思ったが、沿岸地域から内陸に入っていて「遠い、そんな都会には住みたくねえ」と、最初はなかなか入居が無かった。
その後、仙台市街からも入居するようになり、岩手、気仙沼、南三陸、石巻、南相馬から原発避難者などバラバラの入居者によるコミュニティづくりが必要となった。
そこに何かサポートできないかと思ったが、自分は建築の人間でそういうプロではない。何ができるか考え、ハード面、例えば建物の形を孤立しないように、玄関を占めると中が見えないという環境では孤立してしまうのでそうではないものを提案しようとか、広場も何もない更地なのでそこに縁台を作ってちょっとしたコミュニティスペースを作ろうとか、屋台を作っちゃってカフェを週に1度やってりという、そういうことを居住者と一緒にやってきた。


「あすと長町仮設住宅」、JR東北線・東北新幹線の線路沿いにあるので、ご覧になったという方もいるかも。200を超える仮設住宅が並ぶ本当に大規模なもの。 そこに、岩手・宮城・福島からたくさんの人が避難してきたわけです。ほとんどの方が初対面。そして昨日のお話ではないですが、方言や文化の違いもあり、当初は、様々なトラブルが起きていたようです。そんなバラバラの状態を解消しようと、住民の方々は自発的に動き出したと言います。


◆新しいコミュニティ作り
我々の取り組みもそうだし、お茶会も始まり徐々にはじまり、さらに集会所でも毎日何かがイベントをやる。我々も大工仕事をしていると知らない人がフラッとやってきて、そうして小さなコミュニティが出来て行った。そんなことをしながら夏(2011年)には住民による自治会を作ろうという機運が高まり、自治会の準備会が8月後半に立ち上がり、楽しみながらコミュニティを作ろうということになった。一気に大きなコミュニティを作るのではなく、ペットクラブやカラオケクラブ、ラジオ体操クラブなど小さなクラブが自然発生もあって出来てきた。ブドウの房のような小さなグループができて、それを束ねて2012年3月に正式な自治会となり、顔見知りになった。そこまでは時間がかかったが、円滑に活動的に取り組んで、一人暮らしのおばあちゃんなどはここに住み続けたい、ここが安心なのでほかに写れない。孤立する環境が怖いという人も多く出てきた。仮設から出たその先に公営住宅ができるのは想定していたので、この新しいコミュニティを維持する次のステップを目指せないかと2012年3月くらいから新たな活動が始まった。


LOVE&HOPE。今朝は、宮城県仙台市太白区(たいはくく)のあすと長町仮設住宅のコミュニティづくりについて、お伝えしました。

こうして、あすと長町仮設住宅では、住民が主体となって、ご近所づきあい・コミュニティ作りを
積極的に行う流れができたと言います。そして、復興が進むにつれ、この仮設の町も次の段階へ。復興住宅、災害公営住宅などでの、「生活再建」です。
 
そこで問題になるのは、せっかくこの土地で生まれたコミュニティを、 また崩してしまうこと。これまでご近所づきあいのあったお年寄りが、   移転先で、また孤立してしまう懸念があるということです。
これは全国の仮設住宅で問題になっています。

この続きは明日のこの時間にお届けします。

2015年10月27日

10月27日 東北方言オノマトペ用例集2

昨日に引き続き、東北の方言・オノマトペをまとめた本「東北方言オノマトペ用例集」についてお伝えします。

東日本大震災の直後、全国から被災地に集まった医療チームが東北の方言やニュアンスを理解できず対応に苦労した・・・ということを受けて作られたのが、この本です。今回は、この本に紹介されている様々な方言のオノマトペを、本を作成した方言研究者の竹田晃子さんに解説していただきました。竹田さんご自身、東北・岩手県ご出身です。

◆いかいか、うらうら、はかはか
例えば「いかいか」というオノマトペ。これは鋭くさすように痛む様、炎症の不快感。例としていろんな方言集に挙げられている例文をあげると「くびたー、いかいかっと、針でもさすたみてえに、いでえ」という言い方。くぴた=首。首がチクチクと針でも挿したみたいに痛い・・・という意味。これは岩手の言葉。めまいを表す「うらうら」という言葉がある。岩手県ではこんな例がある「あだま、うらうらってわかんねあ」・・・頭がふらふらしていけない、という意味。その他「はかはか」というオノマトペは、息切れや動悸で胸が苦しい様を表すもの。共通語では「はあはあ」。例としては「坂あがってきたっけ、はかはかになったやあ」。意味は、あの坂を上がってきたらドキドキになったよ。はあはあが付け加わったようなニュアンス。この本の最初の方に序文を書いてくれた大船渡県立病院の先生は「他の地域からお医者さんや看護師さんがチームでやってきてくれて、診療を手伝ってくださったが、通役を付けないと診療が回らないという現実があった」そう。最初は事務職員や地元の方が通訳をしながらやっていたが、だんだん落ち着いてくると訪問診療が始まる。そうなると1対1でしかなくて誰もついてきてくれない。最初に挨拶をして名前を確認したあとは、もう言葉がなにも分からないという状況になった方々がたくさんいらっしゃったそう。みなさん薬や食事などいろいろ医者に質問するのだが、そこにもたくさんの方言が出てくるので、なにを聞かれているのか、質問されているということはわかってもそれに応えることができない状況が続いたという。


実はこの本、医療に関わる人だけでなく、一般の人もこれをきっかけに、東北や、各地の方言に興味を持って欲しい・・・という想いもあるそうです。

そして、方言は東北だけではありません。竹田さんは、こうした方言をまとめる動きが全国に広がることも期待しています。

◆全国に、オノマトペ用例集を広げたい
印刷して、公立病院や大きな病院には1冊づつ配った。何件からは非常にありがたいという言葉ももらい、研修で使いたいので残りがあればもうちょっともらえないか、とか、地元版のもうちょっと詳しいものを作り直して欲しいという依頼があったり、そういう声をいただいた。なんとかしなければと思っている。我々はよく方言は県単位で理解したくなるが、だいたい日本の方言は江戸時代の藩で分かれている。一つの県の中に方言が3つ、4つあるのが普通。それに合わせたものを作らないといけないということだと思う。


竹田さんによれば、この「東北方言オノマトペ用例集」をきっかけに、少しずつ、研究者もこうした活動に参加するようになってきているそう。そして、この用例集は国立国語研究所のウェブサイトアップルのiPad用のアプリで読むことができます。

国立国語研究所のウェブサイトでは、この用例集のpdfをダウンロードできます。
また現在は、アップルのiPad用のアプリも配信されています。
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パーソナリティ 鈴村健一

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