2015年11月11日
11月11日 津波防災シンポジウム2015 ?
引き続き、11月5日・津波防災の日に行われたシンポジウムの模様です。
TOKYOFMホールで行われた「津波防災シンポジウム2015」。
このイベントでは、宮城県岩沼市の「千年 希望の丘」など、森を活用した津波防災について、様々な分野の専門家が講演を行いました。
その一人が、森林分子生態学という、植物をDNAレベルで研究する研究者、東北大学大学院 准教授の陶山佳久(すやま・よしひさ)さんです。津波から命を守る「森作り」や「植樹」について、植物の専門家・陶山さんは、どう考えているのでしょうか。
◆未来への責任
植樹というのは未来に対しての責任が生じる行為といえる。なぜなら未来の環境に影響を及ぼすから。コンクリートで作られた防潮堤とはわけが違うんですね。なぜなら木は生きているから。生きて成長して将来の環境を作るから。それだけじゃなく、僕の専門だが「花を咲かせる」花を咲かせれば花粉を飛ばし、種を作る。周りの自然環境にも影響を及ぼす。未来の環境に影響を及ぼす。したがって植樹というのはより良い未来の環境を導くということがいえる。2番目が今日の僕の本題。生物には地域性がある。地域によって違う。これは一般的にそう。なぜなら各地域には各地域それぞれの歴史・環境が異なる。その歴史の上でその場所にいるのが基本。したがって地域性を無視した植樹は自然破壊にもなり得る。もちろん、するなと言っているわけではない。より良いためにどうしたら良いかを言いたくてわざわざショッキングな言葉を使ったのだが、これは本当です。無視した植樹は破壊になり得る。例として、森の防潮堤に使われている代表種・タブノキ。これは非常に大きく成長する木で、東北地方の海岸の代表的な広葉樹、日本の代表的な常緑の広葉樹。東北地方の北限、太平洋側は岩手県から、南側は台湾や中国本土にもある。これがタブノキという木の分布域。もちろんこのように広い範囲に分布するので、地域地域にそれぞれ違ったタブの木が存在する。全国から集めて337個体のDNAを比べたところ、全体として3つのグループに分かれていることがわかった。西、関東、東北ときっぱり別れる。もちろん多少のノイズはあるが、一体この3つのグループがどういった経緯で、どれくらいの年代で分かれてきたのかは解析することができる。過去、これが分かれたのは少なくとも数万年前。氷河時代の寒かった頃は東北地方にはなかった。房総半島とか紀伊半島の先、鹿児島にしか存在し無い。寒かったから。みなさんは森ってずーっとその場にあるような気になっているかも知れませんが、そんなことは決してなくて、気候は変わっている。少なくとも1万年以上かけて今の分布域まで広がっている。動いているのであれば今も動かしてもいいじゃない、と思われるかもしれ無いが、そんなことはない。(分布域が)動くのに数百世代以上がかかっている。毎世代毎世代、たくさんの種を作ってその中で環境に適したものが生き残って、それを繰り返し、トライアンドエラーが繰り返されて現在に至っている。東北の話をしているが、それぞれの地に生き残っている生物は、基本的に同じような歴史を持っていて、それが各地に根付いている。そう考えると郷土愛も生まれ無いですか。それぞれの地にそれぞれの宝があると言ってもいいと思います。
明日もこのシンポジウムの模様をお伝えします。
TOKYOFMホールで行われた「津波防災シンポジウム2015」。
このイベントでは、宮城県岩沼市の「千年 希望の丘」など、森を活用した津波防災について、様々な分野の専門家が講演を行いました。
その一人が、森林分子生態学という、植物をDNAレベルで研究する研究者、東北大学大学院 准教授の陶山佳久(すやま・よしひさ)さんです。津波から命を守る「森作り」や「植樹」について、植物の専門家・陶山さんは、どう考えているのでしょうか。
◆未来への責任
植樹というのは未来に対しての責任が生じる行為といえる。なぜなら未来の環境に影響を及ぼすから。コンクリートで作られた防潮堤とはわけが違うんですね。なぜなら木は生きているから。生きて成長して将来の環境を作るから。それだけじゃなく、僕の専門だが「花を咲かせる」花を咲かせれば花粉を飛ばし、種を作る。周りの自然環境にも影響を及ぼす。未来の環境に影響を及ぼす。したがって植樹というのはより良い未来の環境を導くということがいえる。2番目が今日の僕の本題。生物には地域性がある。地域によって違う。これは一般的にそう。なぜなら各地域には各地域それぞれの歴史・環境が異なる。その歴史の上でその場所にいるのが基本。したがって地域性を無視した植樹は自然破壊にもなり得る。もちろん、するなと言っているわけではない。より良いためにどうしたら良いかを言いたくてわざわざショッキングな言葉を使ったのだが、これは本当です。無視した植樹は破壊になり得る。例として、森の防潮堤に使われている代表種・タブノキ。これは非常に大きく成長する木で、東北地方の海岸の代表的な広葉樹、日本の代表的な常緑の広葉樹。東北地方の北限、太平洋側は岩手県から、南側は台湾や中国本土にもある。これがタブノキという木の分布域。もちろんこのように広い範囲に分布するので、地域地域にそれぞれ違ったタブの木が存在する。全国から集めて337個体のDNAを比べたところ、全体として3つのグループに分かれていることがわかった。西、関東、東北ときっぱり別れる。もちろん多少のノイズはあるが、一体この3つのグループがどういった経緯で、どれくらいの年代で分かれてきたのかは解析することができる。過去、これが分かれたのは少なくとも数万年前。氷河時代の寒かった頃は東北地方にはなかった。房総半島とか紀伊半島の先、鹿児島にしか存在し無い。寒かったから。みなさんは森ってずーっとその場にあるような気になっているかも知れませんが、そんなことは決してなくて、気候は変わっている。少なくとも1万年以上かけて今の分布域まで広がっている。動いているのであれば今も動かしてもいいじゃない、と思われるかもしれ無いが、そんなことはない。(分布域が)動くのに数百世代以上がかかっている。毎世代毎世代、たくさんの種を作ってその中で環境に適したものが生き残って、それを繰り返し、トライアンドエラーが繰り返されて現在に至っている。東北の話をしているが、それぞれの地に生き残っている生物は、基本的に同じような歴史を持っていて、それが各地に根付いている。そう考えると郷土愛も生まれ無いですか。それぞれの地にそれぞれの宝があると言ってもいいと思います。
明日もこのシンポジウムの模様をお伝えします。