2016年2月8日

2月8日 MADE IN 女川のギター作り1

今週は宮城県女川町から、ギターの話題です。

◆グライドガレージ
ここがギターの生産を行うグライドガレージという建物。ここでギターの生産を行いつつ、ギターの制作を見たい人見学したい人も見学できるように、また簡単なギターの制作体験、簡単な削り出しなどもできる場所にしていきたい。


昨年12月、女川町の駅前に誕生した商業施設「シーパルピア女川」。その中に、ギターの製造と販売を行うギター工房「GLIDE」を構えたのが、いま聴いていただいた声の主、梶谷陽介さんです。

鹿児島県種子島出身で、もともと東北とは縁もゆかりもなかった梶屋さん。2011年3月、東日本大震災が起こったときは、東京の大手楽器店で販売の仕事をしていました。

◆彼らが残れるよう地元に産業を
震災が起こったとき自分は東京の楽器を扱う小売店で働いていて、楽器店としてできることはないかなと考えた。現地に行ってまわる中で、ウクレレがあれば幼稚園や小学校の歌の時間に使うことができると言う声があり、東京でウクレレを集めて東北に持ってきた。それが東北とかかわった最初の出来事。支援活動を続けていく中で、バンドやダンスを頑張っている中高生が一流の場で演奏したり一流のものに触れる機会が少ないなと感じ、東京の大会に彼らが出場できる仕組みをつくることができたが、彼らがそこ(東北)で育っても、後々は都会に行ってしまうんだなと思ったときに、彼らが残れる産業が地元にないといけないと感じた。産業と音楽、そして地域の発展を考えたときになにがあるかなと考えたときに、東北で「ギターの製造と販売」というふうに思い至った。
どこでやろうかと考えていたときに紹介されて来たのが女川。それまで来たことがなかった。女川特異の官民連携の仕組みにより、いろんな事業がスピーディに行われていると聞いていて、自分が始めるのは全く新しい事業なので受け入れてもらえるかどうか心配だったが、町長がぜひやろうと言ってくれた。人口が7千人ぐらい。人口に比して音楽に対する熱量がすごく高い。そういう土壌もすごく大事。音楽に関心が高い人が多いところのほうがギターを作るうえで上がると感じた。
実際ここでやると決めてから建物を建てるまで1年以上あったので、月に1〜1回、仙台の事務所からギターを持ってやってきて「ギターナイト」と称して飲み会を開いた。そこに町長も来てギターを弾きまくるという。町長は大のメタル好きでメタラー。速弾きなんかもやって、非常に楽しい会を開いていた。


東京の楽器店で働いているときから、メーカーの工場を訪ねたり、作り手の思いを聴いたりと、「ただ売るだけ」でなくギターづくりに積極的に関わっていたそう。だからこそ「オリジナルのギターをつくる!」という発想が生まれたんですね。

「グライド女川工場」は12月のプロムナード開業に合わせてプレオープン、2月中旬から下旬をめどに、本格的に稼働を始め、3月にお披露目会とグランドオープンを目指しています。(まだ訪ねていっても、ギターの展示や販売は行われていません)
グライドで製造するのは「エレキギター」と「エレキベース」。国産の木材へのこだわり、また宮大工の技術を生かしたギターづくりのお話など、今週さらに詳しく伺っていきます。

2016年2月5日

2月5日 映画「大地を受け継ぐ」

今朝はまもなく公開となるドキュメンタリー映画、「大地を受け継ぐ」に注目します。

さまざまなドキュメンタリー作品を手掛けてきた井上淳一監督による、「大地を受け継ぐ」。映し出すのは、福島第一原発から65キロ離れた福島県須賀川市。去年の5月に、16歳から23歳までの学生たちがこの地を訪れ、一軒の農家の母子に、震災から4年の間に起きたことを聴くという内容です。

◆『正直なところ、この汚染されたところで採れたやつ、食いたくねえもん。そりゃ測って放射能でないとしたって、それは人間そうでしょ?それ風評じゃねえんだよ現実なんだよ、それが。あの福島原発がああいう状態である限り、いま言う風評被害ってやつはずっと続くから。』

映画の中のひと場面、農家・樽川和也さんの声です。
樽川さんは大学卒業後、父が手がけていた農業のあとを継ぐため、須賀川に戻ってきました。その一年後に震災が起き、福島第一原発の爆発事故の影響で、育てた作物は出荷停止。その知らせが届いた翌日、父は自ら命を絶ちました。

語られる厳しい現実と、それに耳を傾ける学生たち・・・映画を手掛けた、井上淳一監督に、その狙いを伺いました。

◆『可能性を秘めた子たちに伝えたい』
樽川さんのお話しを伺いにいって、僕はひどく心を揺さぶられたので、この話をどう伝えられるかという、それがきっかけでした。それがたまたま樽川さんが須賀川だったということです。誰に聞かせたいかと思った時に、やはり心が柔らかい若い子達に聞かせて、放射能に汚されちゃった大地を、なぜ樽川さん、福島の方々だけが受け継がなきゃいけないんだろう、それは、この国に住む我々全員が受け継がなきゃいけないんだろう。特に若い子たち。大地にずっと染みついた歴史だったり記憶だったりが、樽川さんが農地に種を撒いてそれを芽吹かせる様に、樽川さんの話が、若い子たちに種となって、それが芽吹くかどうかはわかりませんけど、そういう可能性を秘めた子たちに伝えたいと思いました。


◆最後の晩に・・・
ほうれん草とか柿菜っていう摘んで食べる野菜が出荷停止になり始めたんですよ。で、だんだん出荷停止の品目が多くなってきて、結球野菜の出荷停止のファックスが来たんで、キャベツとブロッコリーで8000個が全滅しました。で、晩御飯を食べ終わったときに親父にそのファックスを見せたんですけど、したら私に、「おめえのこと間違った道に進めた」って言われたの。農業を継がせて失敗したと思ったんですね。


この会話をした翌朝、樽川さんの父は命を絶ちました。
元の値で売れることが無くとも、父が愛した、代々受け継いできた土地を捨てるわけにはいかない・・・樽川さんはいまも、須賀川で苦悩と戦いながら農業を続けています。これも、私たちが知っておくべき、福島の現実の一部です。

このドキュメンタリー映画、「大地を受け継ぐ」を、監督の井上淳一さん、そして映画の中の樽川和也さんの声と共にご紹介しました。

映画「大地を受け継ぐ」は、2月20日から〔ポレポレ東中野〕、27日から〔名古屋シネマスコーレ〕ほか、各地で公開。
◇また明日6日から、「フォーラム福島」で限定1週間、先行上映されます。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 514 | 515 | 516 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN