2016年3月8日

3月8日 岩手県大槌町 菅野柚樹くん2

引き続き、岩手県沿岸部の港町・大槌町から未来の漁業を担う高校生の声をお伝えします。菅野柚樹くん(17)。漁師である叔父さんが、震災後の大槌で漁業の再開に取り組む姿を見て見習い漁師に。以来、ずっと毎朝4時に起きて港の仕事を手伝い、学校に通う生活を続けています。

そんな柚樹くんもこの春、高校3年生。卒業後は船舶免許を取り、大槌の漁業の担い手として、いよいよ大きな一歩を踏み出すことになります。



◆迷いもあるし、不安もある。
三者面談で、母親もやらせたくないと思っていた。つらい仕事だと知っているのでその気持ちが強いらしい。でも俺はここまできたんなら、手伝って学んでいるうちに、漁師になろうと。今もその想いはあんまし変わらない感じではあります。叔父も、「やんのか」「やんねえほうがいいぞ」ってあやふやな言葉をかけてくるので迷う。「やるならやってもいいし、お前の選択だよ」と言っていた。楽しみ半分、不安半分もあるんじゃないですかね。この先どんなふうになっていくかっていう。楽しみもあれば、本当にやっていけるかという不安も出てくるんじゃないでしょうかっていう。決めたっていっても迷うじゃないですか。こっからこうなっていくのか、こっちにいくのかどうすんのかっていう不安も奥底にはありますかね。やっぱり考えが甘かったんじゃないですかね。考え方が変わったっていうか。本当に続けていけるかっていう不安とか、この先おじが年も年で、仕事もできなくなってきたら自分に本当にできるのかって言う感じで、そういう不安もよぎったりしますね。


「不安」。 1年前、話を聞いた時には口にしなかった言葉です。これ、柚樹くんが叔父さんの仕事ぶりを見ているうちに感じた素直な気持ちです。 自分は本当に、叔父さんのような立派な漁師になれるのか。 将来を真剣に考えた時に、そんな考えがよぎったのだと言います。

では、その叔父さん、佐々木まさしさんはどう思っているのでしょう。実は、「跡を継ぐ」と言ってくれた大切な見習い漁師が成長していく姿を、本当に嬉しく感じているんです。

◆この子が三代目です!
魚が好きだったんです、魚釣りとか。船に乗って魚釣りもしていたんですけど、見ているうちに「やりたい」という本人がなってきた。この子ならもしかして、でも興味本位かなと思っていたんですよ。でも本人が「やる」って決意が固くて。ホタテもやりたい、わかめの時期になればわかめもやりたい、牡蠣もやると。うちは朝が早いんです。わかめの時は夜中の12時から。そのわかめの作業も来るんです。自分から起きてきて。学校に行くまでの間わかめを手伝ってから登校するんです。やる気があるから、よーしじゃあこの子をちょっと育ててみるかなと。一応は高校終わるまで様子を見て、本当に出来るのであれば柚樹にバトンタッチしてもいいかなと思っています。今は仕事も覚えたので、ああだこうだと言われる前に作業もちゃんとするし。漁師っていうのは頭で覚えるのも大事だが体で覚えろと日頃言っている。あとは毎日同じ仕事をするなと。今日はこのくらいの水揚げだったら、じゃあ次の日は変えてみてもうちょっと揚げてみようと、常に漁師も勉強なんだよと。養殖やっている人は稼げば稼いだ分だけ自分に帰ってくるんです。海から物をあげないとお金にならない。海は銀行。稼いでなんぼだと。というのを本人もわかってきて。頑張ればこの子はずば抜けて行けると思う。とにかく仕事を早く覚えて。俺みたいになりたいと言ってくれているんですけど、その気持だけで涙がでるくらい嬉しいっすよ。どう育つかわからないけど、もう「好き」「俺は浜で生きていく」というエネルギッシュを感じる。周りもわかっている。この子は漁師の三代目だと。右腕って言っちゃアレですけど、そのくらいになってもらいたいと思いますね。


来年の春には、柚樹くんはいよいよ船に乗り、大槌の海へ。まだまだこれからも、叔父さんの背中を追いかけることになりそうです。

『かなわないって感じですね。そういう苦労をしてきて形につながっているので、それに比べればまだ何も出来ない。全然下の方なので頑張ろうって感じですね。』                          

*****
まもなく震災からまる5年。LOVE&HOPEはこうした被災地の今を改めてお伝えする特別番組『LOVE&HOPEスペシャル』を3月11日に放送します。まる5年という時間の経過は貴方にとってどんな意味を持つものだったのでしょう。そして被災地で生きる人々にとっては・・・。「節目」のこの日に、改めてあの震災を振り返り、5年が経過した「いま」を被災地と共有する特別番組です。
LOVE&HOPEスペシャル特設サイトはこちら

LOVE&HOPE。明日は福島県浪江町の伝統の「踊り」を受け継ぐ高校生の「いま」をお伝えします。

2016年3月7日

3月7日 岩手県大槌町 菅野柚樹くん1

今朝は、岩手県沿岸部の港町・大槌町から、未来の漁業を担う高校生の「その後」です。
この4月に高校3年生になる菅野柚樹くん。この番組では今からちょうど1年前の春に彼を取材しました。

◆漁師見習い・菅野柚樹くん
菅野:本場のこういうの食ったら、スーパーで売っているのは一切食えないです。
高橋まりえ:そうだね〜。インタビューしながらもカッカカッカ進めて。もうあっと言う間に終わりそうだね。
菅野:まだホタテの数は少ない方なんです。多い日だと朝の7時から昼くらいまでかかる。
高橋:学校がある日はどうしているの?
菅野:水揚げのあさ4時からで6時くらいまで作業して、家に帰ってまた学校に行きます。
高橋:すごい。学校行く前に港に来ているんだ
菅野:ですね。だいたい日課なので。眠くないですね。結構自分ではタフって思っているんで(笑)。


ちょうどこの時、柚樹くんは、漁師である叔父さんの手伝いで、ホタテの貝剥き作業の真っ最中でした。震災の後、叔父の佐々木まさしさんが、漁業を再開するためひとり瓦礫の撤去に取り組む姿を見て、見習い漁師として仕事を手伝い始めた柚樹くん。その時は「仕事が楽しくてしかたない!」と、本当に夢中になって漁師見習いの仕事をしている印象でした。

あれから1年。柚樹くんは変わらず、毎朝、港で仕事を手伝っています。ただ、ちょっと雰囲気に変化があったんです。

◆高校3年生。将来を考えて・・・
最初は手伝いって感じだったがそのうち、将来の進路を考えると自分は本当に何をやったらいいのかと思った。母親には「人当たりがいいからホテルマンでもやったら」と言われて迷ったんですけど、元から海や魚関係好きで、小さい時から沖にも連れて行ってもらって仕事も見ていた。手伝っているうちにやってみたいなという感じになって、いまこうやってやっています。
平日は大体、学校があるけど水揚げがあって4時起きで海に来て、ホタテの周りについたゴミを取っ払ってタンクにいれる。トラックに上げる。きて5時半に終わって家戻って一回寝て、7時に起きて飯食って2度寝して、8時30分ギリギリに学校へ行きます。結構最初は、マジ、4時?って感じだったけど、そういう辛い思いをおじがしているんだなって思えば、朝起きてだるいなという感じじゃなくて、手伝おうという気にはなりますね。


前に話を聞いたときはもっと天真爛漫で、「漁師は楽しい!」って感じだったのですが、柚樹くんもこの春には高校3年生。真剣に自分の「将来」を考え、生きる道を選ぼうとしています。

◆今も漁師への想いは変わらないです。
三者面談で、母親もやらせたくないと思っていた。つらい仕事だと知っているのでその気持ちが強いらしい。でも俺はここまできたんなら、手伝って学んでいるうちに、漁師になろうと。今もその想いはあんまし変わらない感じではあります。


そんな柚樹くんが漁師を志す理由はもう1つあります。津波で失った、おじいさんの存在です。海で仕事をするおじいさんは、「とてもカッコよかった」そう。でも、おじいさんの仕事を手伝うことも、津波から助けることも出来なかった柚樹くんは、だからこそ自分も海の仕事で生きていく…そう考えたと話します。

*****
まもなく震災からまる5年。LOVE&HOPEはこうした被災地の今を改めてお伝えする特別番組『LOVE&HOPEスペシャル』を3月11日に放送します。まる5年という時間の経過は貴方にとってどんな意味を持つものだったのでしょう。そして被災地で生きる人々にとっては・・・。「節目」のこの日に、改めてあの震災を振り返り、5年が経過した「いま」を被災地と共有する特別番組です。
LOVE&HOPEスペシャル特設サイトはこちら
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 504 | 505 | 506 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN