2016年3月22日

3月22日 福島第一原発のいま2

昨日に引き続き、福島第一原子力発電所の「いま」、お伝えします。

3月15日に実施された、在京ラジオ局を対象とした福島第一原発の視察・見学会。取材陣は、マイクロバスに乗りこみ、350万平方メートルと言う広大な敷地で、各施設を視察しました。そのルートには、福島第一原発の2号機、3号機建屋から、距離にして数十メートルまで接近するポイントもありました。

◆2号機、3号機に接近
みなさん右手のほうをご覧ください。線量がいま徐々に高くなってきています。いま約200μsv/hございます。みなさんの右手に銀色の太い配管が走っていますが、これが凍土遮水壁を作るための冷媒を流す配管となっています。マイナス30度まで冷却した塩化カルシウム水溶液をこの太い配管に循環させることで水分を含んだ土を凍らせて壁を作って、地下水の流れを遮断する工事を進めました。すでに設備の設置工事は終了しており、関係各社と運用方法を協議している状況。了解が得られ次第凍土の施工を始めたいと思っています。




この時の放射線量は、毎時216マイクロシーベルト。私たちが普段、自然界から受けている放射線量と比較すると およそ2800倍。1時間いた場合、胸のレントゲン検査4−5回分の被ばく線量でした。そして今回の見学会では、今の凍土壁はじめ「汚染水の処理施設」の説明が重点的に行われました。地下水を取り除く井戸などはすでに稼働しており、原子炉建屋に流れ込む地下水は、昨年夏の300トンから半減したと言います。ただ、処理済み汚染水を貯めた「タンク」は、いまも日々増え続けています。

昨年夏にも見学をしたスタッフによれば、
「線量が劇的に下がるなど大きく変わった点もあるが、依然として課題は多い」と言います。案内を担当した東電広報室・岡村祐一さんの話です。

◆事故現場から「事業所」へ
きょうは見学という具体的な作業がありますのでマスクをして頂きましたが、構内の移動目的であればマスクもいらなくなっています。そういう作業環境の変化は一番大きいと思います。あともう一点は温かい食事、今日もお昼お召し上がりになったと思いますが、ああいったものがコンビニも隣にあっていつでも食べられると。そういうことが我々も作業員さんも一番思ってらっしゃることだと思います。(変わらないことは)具体的には溶けた燃料デブリの情報については、人類の前人未到の色んな技術を投入しなければいけないと思っています。まずは燃料デブリがどこにあってどんな色をしているのか、どんな形なのかをしっかり見極めたいと。そこまでに5年かかっています。(原発は色作業員の方が偏見の目や声を受けることはあるか)初期の頃、「お父ちゃんは原発で働いている」と言うとご家族がいわれのない非難を受けたということは聞いたことがある。ただ最近は比較的落ち着いたと理解しているが今後も少なくともオープンな現場であって、色んな情報発信を通じながら1F(※イチエフ・福島第一原発)で働く不利益、後ろ向きな状況を変えていきたい。コンビニもできた、線量も下がって普通の服で歩ける。はつらつとみんなが廃炉へ向けて作業を前向きに考えていける、そういう「事業所」。昔は「事故現場」だったがそれが廃炉事業を進める「事業所」の形態にいよいよ変わりつつあるというところで、偏見や色んなものを払しょくしてまいりたいと考えています。(いま汚染されたものが出続けているという現状はあるのか)一時、3号機の建物のがれきなどを片付ける際、1号機のカバーをした理由はダストが出ていた可能性があるという事案があった。それを防ぐ為に放射線モニターを増やし、ダストが舞わないような工事の見直しを丁寧にやっておりました。その結果周辺に対するダスト、放射性物質の飛散は防止が測られたと考えております。


福島第一原発で働く作業員の数はおよそ7000人。40年かかるという廃炉作業には、今後も多くの「働き手」が必要ですが、その人材確保も大きな課題となっています。その一方、事故から5年が経過した現在、新規制基準に基づく原発再稼働がジワジワと進もうとしています。これについて質問をぶつけました。

◆再稼働の必要性
原発再稼働について。原発のエネルギーは私自身はこの国には必要だと考えている。ただもう1点は福島の事故が原発の停止を余儀なくされた状況を作り出してしまったということにつきましては、非常に大いなる反省と残念な気持ちを非常に持っております。しっかりと廃炉を進める中で、我々が決めることではございませんが原発の安全性をしっかりと審査して頂いた後は、原子力によるエネルギーを再度利用するという風になればありがたいなと思っております。
 
       

実際取材したスタッフは「東電広報室は、どんな質問にもしっかり答えようという姿勢は感じた。ただ、包み隠さず話しているか、どこか疑ってしまう気持ちも強い。放射性デブリの除去は、人類が一度も経験したことのないものなので、今後も大変な技術革新が必要だということを何度も聞かされ、気が遠くなる想いがした。」とのこと。実は、Jヴィレッジそばに原子炉建屋の一部を原寸大で再現した模型が作られています。今後はここで、廃炉のための様々なシミュレーションが行われるという。つまり、まだそういう段階ということです。

2016年3月21日

3月21日 福島第一原発のいま1

今朝は、福島第一原発の「いま」をお伝えします。


30年、40年かかるという廃炉作業の渦中にある福島第一原発。この場所では現在、メディアはじめ様々な団体を対象に、見学会が実施されています。今回番組は在京ラジオ局むけの見学会に参加。3月15日、番組スタッフが原発敷地内へ入りました。

見学はおよそ2時間半。ルートの多くはバス車中からの見学でしたが、一か所だけ、バスを降りて屋外に出るポイントがありました。お聴き頂くのは、原子炉建屋から数百メートル離れた、別の建物の屋上からの様子です。海沿いで、吹きさらしということで大変風が強く、全員が防じんマスクをつけた状態で、東電社員の説明を受けました。



◆1〜4号機を屋外から俯瞰
(東電社員による解説)それではここからですね、1〜4号機の全体をご覧いただきたいと思います。ちょうどこの前方の一番奥に排気筒がありますが、その手前に白と水色のまだらの建物がございます。これが2号機の原子炉建屋です。それから1号機はここからですとよく見えないんですけどその奥に建屋カバーに覆われた1号機がございます。1号機の建屋カバーは昨年の7月から解体工事に着手していていま上部が取り外された状況です。これから1年程度かけて建屋カバーの撤去を勧めますが、外部に放射性物質を飛散させないようにということで、散水設備ですね、要するにウェット状態にして放射性物質を飛び散らさないように散水設備の設置工事を今並行して進めています。2号機の方は外観上は健全な状態でご確認いただけます。ただ中は非常に放射線量が高く簡単に人が近づけないということで、燃料の取り出し方法については建屋の上部を解体して外側からアクセスして移送するということで、今そのためのヤードの整備、建屋の周囲の邪魔なものを撤去したりと言う整備を進めている状況です。さらにその手前にグレーの構台がちょっと覗けると思いますが、あれが3号機の原子炉建屋が設置されている場所になります。あそこは原子炉の周りをグレーの作業用構台を作って取り囲んであります。3号機の上部に散乱していた瓦礫類は、住居を乗せて撤去作業をしました。非常に放射線量が高いので人が近づいて作業することはできません。ですから離れた場所でテレビカメラを設置してモニター画面を確認しながら遠隔操作で作業を進め、すでにがれきは撤去された状況になっています。まもなく燃料の取り出し装置を今後設置して燃料の輸送作業を進めることになりますが、その作業もすべて遠隔操作でやることにしております。それからさらにその手前にある白いタワーのような屋根に覆われた一角の下、この下に4号機の原子炉建屋があります。当時は定期検査中でしたので燃料の溶融事故に至っていません。ですから1−3号機に比べると放射線量が低く人が近づいて作業が可能でした。いま4号機についてはリスクが取り除かれた状況になっています。



この時の参加者の格好なんですが、意外なことに服装の制限は無しでした。それぞれ自前の長そで長ズボンのまま敷地内へ。ただ、服の上には配られたベストを羽織り、頭にビニールの帽子とヘルメット、手には軍手、厚手の靴下の二重履き。そして長靴。さらに長靴の上からビニールをかぶせて靴底に物質が付着しないようにしていました。また、メガネをした方が良いということで、全員がメガネの着用を勧められました。

案内を担当した東電社員によれば、敷地内の除染が進み作業環境は大幅に改善されたと言います。敷地内はすべて、あのものものしい防護服の印象がありますが、実際には、普通の作業服にマスク程度の装備で作業できる場所が増えているそうです。

電気関係の作業に携わっている作業員お2人に、作業環境について伺いました。

◆現場作業員の声
(37歳作業歴5年、26歳作業歴7年、ともに電気関係の現場監督)
Q:作業効率、改善点と問題点
・作業効率は、着替えたりする時間の短縮とかだいぶ変わって来たと思います。あとは特にこういうのって言うのは建屋の中で作業をやってますと暗いところとか段差とか危険な箇所がありますので、それを改善して頂ければと思います。
・装備が楽になりましたので熱中症や体調不良がだいぶ減ったのかなと思います。今後もまだ高線量が続くので除染等を行って頂いて線量を低減して、作業しやすい環境を整えてほしいと思います。

(メルトダウンした燃料の取り出し作業が大変だがその辺の不安について)
・放射線管理の方もしっかり時間管理や装備の管理をやってくれているので特に心配はしていない。
・自分もちゃんと脱着関係をすれば体内に取り込まないし、線量も放射線管理課の方が行っているので安心して働いています。

(高線量の場所に行くとき、その恐怖は慣れてしまったか)
・慣れたというか、アラームを鳴らさないようにしている。時間とか事前に調査して線量の高いところを知ったうえでやっている。アラームがなることは無い。なることもあるかもしれないが基本的にはならないような管理でしているのであまり心配していない。

敷地内の線量が下がったのは、敷地内の雑草などをすべて刈り取り、コンクリートなどを地面に吹き付ける「フェーシング」が、大半の箇所で完了したためで、土から放射性物質が舞い上がるの防いだので線量が下がったと言います。見学した取材陣の被ばく量は積算でおおよそ10マイクロシーベルト。ただ。今回の見学では2号機・3号機の原子炉建屋にかなり近づいたのですが、そこでの線量は毎時200マイクロシーベルト以上。原子炉建屋に近づくほど、高線量であることは変わっていません。

環境が改善されたとはいえ、大変な環境にあることは変わりなく、それが、我々の身近にあります。
明日も、このレポートの続きをお伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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