2016年6月9日
6月9日 防災アドバイザー山村武彦さん(4)
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今週は、防災システム研究所所長で防災アドバイザーの山村武彦さんのインタビューです。
今回の熊本地震では、最新の耐震基準を満たした建物にも被害が及びました。南海トラフや東海地震など、巨大地震への備えはいまや全国共通の課題です。「安全な場所」「安全な住まい」を手にいれるために、わたしたちにできることとは?
◆「安全な場所にする」「安全な場所に住む」
地震の後応急危険度判定といって、建物の危険度の判定をやっているが、もう片方で宅地危険度判定というのもやっている。これは宅地の地盤が崩れるのではないか、擁壁が崩れて建物に影響を与えるのではないかなどを判定するもの。熊本地震の一番の特徴は地震による土石流、土砂災害というもの。あるいは地割れや活断層が地表に露出してそのずれが明らかになるなど。わたしが言った益城町の神人という場所は、畑の真ん中、麦畑やキャベツ畑を活断層が通っている。地域に大きな被害をもたらした。地元の方に伺うと、「この辺は活断層があると聞いていました、でも本当にあそこにあるとは思いませんでした」とおっしゃる方が多い。では本当に同じ場所に家を建て直すかというときに、日本人の場合、例えば活断層は全国でおよそ2000か所と言われている。カリフォルニアでは一部活断層法というのがあって、活断層からは一定の距離を置かないと住宅を建ててはいけない、という法律がある。でも日本でそれをつくろうかという話があったが、わたしはそれに猛反対した。もちろんできたらそれに越したことはない。活断層の上には住まないほうがいいに決まっている。でもそれを全部規制してしまったら、いまわかっているだけで2000か所あり、わかっていない活断層が3倍以上あるだろうと言われているのであれば、いまわかっている活断層から離れたところが安全とは限らない。そうしたら、日本中住むところがなくなってしまう。それすれば、活断層の上でも壊れない家をつくるとか、例えば普通の木造住宅であれば一定の杭を打つとか。それでも活断層があれば危険ではあるが、できるかぎり安全な家を建てることをまず考える。いままでは、防災とは「逃げる、守る防災」だったが、「安全な場所にする」「安全な場所に住む」ということも考えていかなきゃいけない。今回明らかになったように、大地震によっておこる土砂災害は大雨がくれば起こる場所でもある。豪雨や自然災害に備えて安全な場所はどこなのか。地域によっては氾濫低地と呼ばれて地盤の悪いところがある。そういったところは地盤改良したり、杭を打ったりして、いろいろなやり方で耐震化を図ることは可能。絶対安全な場所を見つけることは、日本では困難だが、安全な場所にするということは、ある程度できること。そいういうことを工務店等と相談して進めてほしい。そして、住居ではできれば2階を寝室にしてほしい。普通2階建ての家をつくると1階が広い部屋、2階が狭い部屋ということが多い。これは逆のほうが安全。下が狭い部屋が多いほうが、建物は崩れにくい。もう一つ、今回多くの建物の1階が崩れて犠牲者が出た。2階の寝室のほうが安全。2階はつぶれても隙間ができやすい。そいういった生活方法含めて、「安全な場所にする」「安全な場所に住む」ということが大事。
山村さんは「とにかく命を守ることが第一」と強調していました。
そのためには、「家全体を頑丈にする」というよりも、家の構造を一部強化したり「地震シェルター」を準備するなどして家のどこかに「命を守る安全ゾーンを設ける」というのが合理的だと。
そして、言われ尽くされていることですが、家具の固定化などできることをまず実践すること。「自分だけは大丈夫」という考え方は捨てて、まず自宅のチェックから初めてください。
山村さんが語る防災の知恵は、著書「スマート防災〜災害から命を守る準備と行動〜」で詳しく読むことができます。