2016年6月27日

6月27日 阿蘇・高森田楽保存会(1)

今週は、被災地・熊本からのレポート。震災の影響で、阿蘇周辺の町では旅行者の客足が激減してしまいましたが、地震の被害が少なかった地域では、これから夏の行楽シーズンへ向けて観光客の賑わいを取り戻そうと皆さん懸命に頑張っていらっしゃいます。今朝はその中の一つ、阿蘇郡高森町にある「高森田楽保存会」をご紹介します。

「高森田楽保存会」は雄大な阿蘇五岳をのぞむ森の中にある田楽料理のお店です。囲炉裏の炭火で、串に刺したヤマメやコンニャク、豆腐、名産の“つるの子いも”という里芋のような芋を代々受け継がれているという「田楽味噌」を塗って、じっくりゆっくり焼いてから頂きます。これに「とうきびご飯」と、九州名物の「だんご汁」、香の物が付いたオーソドックスな「高森田楽コース」は、1600円!。

甘みとコクのある味噌が食材になじんで、味はもちろんなんですが、素晴らしいのはこのお店の風情!1万坪の敷地に、明治の風情が残る築140年の古民家をそのままつかって、落ち着いた空間の中で囲炉裏を囲みます。そして窓の外には森の緑と、阿蘇の山々が観られます。

◆田楽保存会は800年の歴史
「高森田楽保存会」と言うのは、戦後田楽の素材が無くなりまして、無くなったというのは農家が作らなくなったんです。作らなくなった理由が、まず売れない。手間ひまかかる割には、素材として見てくれが悪いということで売れなくなりました。というのはお出ししますメインの「つるの子芋」というお芋があるんですけど、この芋は一つとして同じ形のものがないんです。しかしこれがとっても美味しい芋なんです。火山灰の土壌のこの土地でしか取れない芋で、田楽の素材としてお出しするのは800年の歴史があります。芋もですけど、コンニャクとか豆腐、そして囲炉裏とか火鉢とか無くなるのと同時に、炭を焼く習慣も無くなりました。そんな中、うちの父が皆に声をかけまして、「保存会」というのを結成します。芋を作る農家、豆腐を作る職人、ヤマメを育てるかた、竹串を作るかた、炭を焼くかた、そういういろんな集まりで、「保存会」を立ち上げました。そのまま「保存会、保存会、」と言われてまして、いつの間にかそれがこの店の名前になりました。
現在はそれが2代目、3代目と時代が変わりました。お豆腐屋さんはお店を出せるくらいになりましたし、つるの子芋も保存会会員外の方が生産されるようになりましたし、ヤマメは養魚場を持つほどに成長しました。「田楽保存会」を作りまして60年を過ぎてます。この60年の間に、当初の目的は果たしているんじゃないかと思いますね。


本田さんのお父さんが、地元に何百年も前から伝わりながらも、戦後一度はすたれてしまった伝統食である「田楽」を60年前に復活さました。今では高森町には「田楽」を出すお店がほかにも数軒あり町の名物になっています。中でも「高森田楽保存会」は、全国からここを訪ねて旅行者がやってきたり、著名人や、秋篠宮殿下も足を運ばれたり、人気を集めていましたが4月に起きた熊本地震で、客足はぱったりと止まってしまったそうです。

◆客足は激減
年間でいちばん忙しくなるのが、4月の中旬から5月にかけて。もうその時がまったくお客さまございませんし、5月の連休時も、いらっしゃるお客様は5人とか、6人とか。“10分の1ですか?”って聞かれますけど、そんなもんじゃないですね。4〜50分の1ですかね。しばらくは難しいのかなと思ってますね。


余震も少なくなってきて、少しずつ熊本県内にも観光客が戻り始めているそうです。南阿蘇や高森町には被害が少なく、早い段階から商売を再開しているお店や宿泊施設も多いです。夏旅で熊本を訪ねるだけでも支援になります。


高森田楽保存会

2016年6月24日

6月24日 千人仏プロジェクト

今日は、現在東京上野の「東京都美術館」で展示が行われている「千人仏プロジェクト」の話題です。

京都の三十三間堂などで知られる「千人仏」は、飢饉や災害で亡くなった方の霊をなぐさめるため、千体の仏を描いたり彫ったりする日本古来の供養の方法です。東日本大震災の被災地、岩手県大船渡市で「千人仏プロジェクト」がスタートしたのは震災翌年の2012年のこと。震災で被災し、仮設住宅で暮らす方たちのために「アートを通して元気を取り戻してほしい」とアート関係者やサポート企業が立ち上がりました。

参加者が描くのは、仏様の顔。お話はプロジェクトの中心となって被災地で絵の指導を行ってきた画家の三杉レンジさんです。

◆震災後1年で仏像を書くというには「重すぎないだろうか」とか、いろいろあったが、それでも一か所やってもいいよという許可がでてワークショップをやってみた。そのときはパワーポイントでいろいろな資料を見せながら、美大生はこういうふうにやっているよなど説明をして、最初15人ぐらい参加してくださって。その中には家も家族も流されたという方もいて、それでもみんな本当に集中してやってくれて、楽しかったという感想をいただけた。それで、いけるなという感じでそこから始まっていった。

経験のない人がゼロから絵を描くのは大変。そこでワークショップでは、仏様の顔の輪郭をかたどった紙に炭をのせたものを用意します。参加者は、指で炭に陰影をつけることで仏様に表情をつけていきます。これまで、およそ50か所でワークショップが行われ、描かれた木炭画は936枚に達しました。その936枚が現在、東京上野の「東京都美術館」で展示されています。

◆やっぱり最初からどんどん書いていく人もれば、なかなか書き進められないという方もいたが、書いているうちに震災で亡くなったご主人の顔を思い浮かべて書いていて、気づいたらご主人に似てきた、人の顔を書くときでも笑っている人の顔を書くと自分も穏やかな気持ちになっていくときがあると思うので、そういった気持ちになってもらえたらなあと。このあいだ僕がすごくうれしかったのは、参加してくれた被災地のおばあちゃんが「千人仏を書いていて、神様に守られているような気持ちになった」と言ってくれた。それはすごくうれしかった。写仏は心の交通整理と言われたりするが、まだまだ混乱してごちゃごちゃしている中で、心がすうっとしてくれたらまあ一番うれしいなと思っていた。同じ弥勒菩薩でも書く人によって本当に一つ一つ表情が違うので、それを一つ一つ味わっていただければと思う。

来場者コメント
〇すごい一つ一つ顔が違って個性があって、穏やかな顔のもあればかわいらしいものもあったりとか。東京にいるとほとんど報道がなくなってきているので、やはり引き込まれる〇一枚一枚の絵にも味わいがあるが、並べてみたときに書いた人の個性や年代やいろんなものが反映されていて興味深い。いつなんどき自分が被災者になるかわからないと思うと、いろいろ考えることがある。

★「千人仏プロジェクト」、東京都美術館「表装・内装作品展」での展示は6/27(月)までです。9月には1000枚に到達する見通し。来年は岩手県大船渡での展示も予定されています。
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パーソナリティ 鈴村健一

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