2016年10月13日
10月13日 開沼博さんの「はじめての福島学」
今日と明日は、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューです。
開沼さんは福島県いわき市出身。2006年から福島第一原発周辺地域の社会学的調査に携わり、東日本大震災の後は福島の現状や復興に関する調査・研究を続けてきました。そんな開沼さんが昨年出版したのが「はじめての福島学」という本です。「震災直後のまま、福島のイメージや情報が固定化される中で誤解やデマを払拭し、福島のいまの姿を伝えたい。」開沼さんはそう語ります。
◆福島のイメージや情報が5年前から固定化されている
「時間の経過とともにだいぶ状況は変わってきている。にもかかわらず、変わってきている状況が伝わってこない。さらに福島のことというと、原発推進派なのか反対派なのかなど、よく「宗教と野球と政治の話は表でするな」というように、福島の話は表ではできないよね、みたいな不謹慎感があるのかもしれない。多くの人が「風化はいけない、忘れないようにしよう」といいながら、風化させてしまう、忘れようとしてしまう状況があるのかなと思う。
どうすればいいのか。一つは過剰な科学問題化している部分をわかりやすく紐解いていくということ。科学問題化とは例えば、セシウムのこと、ストロンチウムのこと、プルトニウムのこともわからないなんてダメだ!云々など。でもそんなことわからなくても、現状は理解できる。
もう一つは過剰な政治問題化。例えば福島に修学旅行に行くかどうかで親御さんたちがもめている。どういうことなの?と聞くと、福島に行くということは子供たちを安全PRに使うことであり、それはすなわち、福島の問題を通して現政権をサポートしているということだ、というようなことをいう人がいる。そういった議論をするのはかまわないが、福島を語るためにあえて「踏み絵」を踏まなくちゃだめだという状況自体が、健全ではないと思うやはり福島に生きている人たちがどういう思いで生きているのか。地域にどういう課題があるのかというのを見ていく。そのための視点をどういうふうに得ていくのかというのが、いま福島を語り、福島を理解するうえで大切。「はじめての福島学」という本を2011年2月に出したが、外の人がタブー化してしまっている福島を、もう一度語り直す、もう一度触れ直すきっかけができないかと、いま「はじめての福島学」を持ちながら、活動している。」
福島に関する大きな誤解。例えば、東日本大震災後の県外への人口流出を例に、開沼さんが続けます。
◆現実とイメージに10倍のギャップがある
「福島から震災前に住んでいた人のうち、どのくらいの割合の人が現在県外に避難しているでしょう?と質問すると、だいたい2〜3割と答える方が多い。関西だと4割とか6割とか答える。答えは2%。震災前福島には200万人の人が暮らしていて、いま県外にいる人は4万人。ここで言いたいのは、だから県外にいるひとが4万人と少ないから、避難の問題は大した問題ではないというわけでは、もちろんない。そこに98%の人がいまでも暮らしている、その人たちがどういう問題を抱えているのか、なにに困っているのか、ということ。
あとは避難している方たちは孤立化していくわけだから、そういう方たちのケアをどうしていくのか。なにより現実とイメージに10倍のギャップがあるということ自体が、福島問題の一番の問題なのじゃないか。現実とイメージに相当の差がでてしまっているということを、わたしたちはどう考えていくのか。この「人口」という問題を通して言えるのではないかと思う。」
今日は立命館大学准教授で、社会学者の、開沼博さんのインタビューでした。
「はじめての福島学」では、「人口」のほかにも「食の安全」や「観光」「産業」などの項目ごとに「福島のいま」をわかりやすくデータで読み解いています。
また、開沼さんが中心となって進めるのが「福島第一原発、廃炉・独立調査研究プロジェクト」。日々変わりゆく福島第一原発の様子を記録し、発信しようというものです。現在クラウドファンディングも展開しています。