2016年11月6日

11月4日 開沼博「はじめての福島学」(5)

今週は、福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューです。

開沼さんは福島県いわき市出身。2006年から福島第一原発周辺地域の社会学的調査を手掛け、東日本大震災の後は、福島の復興に関する調査・研究を続けてきました。そんな開沼さんが昨年出版したのが「はじめての福島学」という本。福島の現状をデータで読み解く一冊です。

5日目のテーマは「福島の新しい産業」です。

◆南相馬市 ロボットテストフィールド
福島は震災後にネガティブな動きとともに、ポジティブな動きも生まれている。南相馬ではロボットテストフィールドといって、かなり大型なロボットも含めて、ロボットが遠隔操作で動くかとか、ドローンがどういうふうに動くかなど、広いフィールドで実験できる場ができる。もちろん福島第一原発の廃炉でロボットが必要だという発想から生まれているが、実際はそれだけではなく、介護用や農業用など、そういった技術を使いたいという企業がさまざま参加して動いている。これは非常に面白い話で、福島といったら原発はどうするのということが問題だと外からは見えると思うが、廃炉技術とは何なのかというと、原発の専門家やメーカーだけが頑張ればいいというわけでなはく、一番現場で働いているロボットやドローン、またスマートフォンが乗っかっているキャタピラー付きの原始的なロボットだったりする。スマートフォンということが重要で、位置情報とかわかりやすい画像などを非常に小さい携帯の中に集積されているということがポイント。そういったことに象徴されるように、廃炉技術だけを追求しても廃炉技術が出来るわけではない、いろんな技術を追求される多様性がある中で、イノベーションが起こり、結果として廃炉に関する技術も、開発・発明されるかもしれない。逆に廃炉技術を追求していく中で、廃炉とは全然違う技術が開発されていくかもしれない。そういう循環を作っていく、エコシステムを作っていくことが重要で、福島で起こっていることに非常にネガティブなイメージを持っている方や、福島ではなにも動かなくなっている、福島には人がいない風景があるなど、紋切型のイメージのまま止まってしまっている人もいるかもしれないが、確かにそういうそく面もあるが、その先に新しい産業が生まれ、新しい人の動きが生まれ、新しい知識が出てくるとうい「小さな芽」が、現場にはある。


少子高齢化、過疎、地域コミュニティの崩壊・・福島で起こっている課題は、いま全国各地の「限界集落」が抱えている問題でもあります。

◆「課題先進地」としての挑戦
一言で定義するのであれば、福島は先進国内の課題先進地。高齢化が進み、既存の産業がうまくいかない、町づくりコミュニティも崩壊している、医療福祉の体制が非常に脆弱である、そういった問題というのは、日本全体がこれから20年、30年かけて深く向き合っていかなければいけない問題。あるいはほかの先進国やインドや中国もたぶん半世紀単位で向き合っていくことになるはず。それを福島は偶然ながら、(震災後の)最初の2−3年で突きつけられた。一気に人がいなくなる地域が出てきたり、一気に高齢者が医療過疎のところに住まざるをえなくなった、コミュニティから見放された。そういう中で、どのように生きやすい社会をつくっていくのかということが求められている。そこではいろんな最先端の技術が活躍した瞬間に救われる命もあるかもしれない。あるいは技術的なことだけでなく、行政や社会のプロセスがもう一度デザインし直すことが人の幸せをうみだすかもしれない。そういった課題の先進地であるという風に福島を定義したときに、そこにはいろんな可能性が見えてくるのかなと思う。


2016年11月6日

11月3日 開沼博「はじめての福島学」(4)

今週は、福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューです。

開沼さんは福島県いわき市出身。2006年から福島第一原発周辺地域の社会学的調査を手掛け、東日本大震災の後は、福島の復興に関する調査・研究を続けてきました。そんな開沼さんが昨年出版したのが「はじめての福島学」という本。福島の現状をデータで読み解く一冊です。

今日のテーマは「中間貯蔵施設のいま」です。

◆中間貯蔵施設の地権者、いまの心境
福島第一原発の廃炉と並んで大事なのが、その周辺にできる中間貯蔵施設。これがなにかというと、除染で出たごみ「廃棄物」を持ってくる施設ということ。これを福島第一原発の周辺にドーナツ状にできるものだと考えてほしい。
ひとつ誤解されているのが、「全然進んでいない」「土地買収が数パーセントしか進んでいないんじゃいか」という意見。確かにで事実ではあるが、他の事実もある。多くの場所、8割以上では地権者が現場の調査をしていいよ、つまりこれから現場を中間貯蔵施設にしていくかどうか、まだ最終的な合意には至っていないけれど、そういう検討に入っていこうとしているということ。ここは非常に重要で、やっぱり契約はしないがとりあえず調査していいという状況に多くの人がとどまっているということが、いまの心境や現状を象徴的に表していると思う。「あんな土地どうでもいいわ」と思っていたらすぐに売ってしまうかもしれないし、「絶対に売らない」という思いがあるのであれば、そもそも調査も始まらない。でもその間にいる。復興のためには、未来をつくるためには、その土地を中間貯蔵施設にすることはみんなのためになるだろうという方もいるし、一方では、やっぱり自分自身の思いにふんぎりがつかない、まだ迷いたいという人もいる。そういう住民の戸惑いや懸念を、だれも協力していないんだというような言い方は、現場で迷っている被災者にとっては、非常につらいものいなっているのかと思う。その点の誤解を解きたいと思う。

では中間貯蔵施設の土地の買収が終わったら、それで全部済むのかというと、そうではない。そこに大量の、東京ドーム17杯分の廃棄物が入ってくる。輸送したり管理したりする中で、新たな課題がでてくるので、そういったことについて考えていくことが重要。一応国は、震災から30年以内に福島から廃棄物を外に持っていくと言っている。それを実現するためには、いまもう5年経ってしまっているわけだから、いまからどういう策をとりながら、言ったことを実現するかを議論していくべき。このまま5年経ったら、議論しないまま10年経っちゃいましたとか、そうしたら無理ですよねと話にどんどんなってしまう。いまから議論をすることが重要。


※環境省は今年4月、福島第一原発の除染廃棄物を、福島県双葉町と大熊町の建設予定地内に運び込む
本格輸送を始めました。平成28年度中に、およそ15万立法メートルを運び込む予定
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パーソナリティ 鈴村健一

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