2016年12月20日

12月20日 阿蘇神社レポート2

引き続き、熊本県阿蘇市の、地域の象徴、心のよりどころでもある阿蘇神社のレポートです。

国の重要文化財である楼門、そして文化財指定を受けていない建造物のいくつかが倒壊してしまった阿蘇神社。
楼門は解体へ向けた作業がはじまり、時間はかかりますが、復旧へと向かいます。
ただ、復旧したらそれで終わりではない。阿蘇神社の権禰宜で文化財を担当されている池浦秀隆さんは、こう話します。


◆災害をどう受け止め、どう生きるか
いままでそれなりの災害はありましたが、平穏に生活してきている部分がありそれが当たり前の感覚だった。神社の人間としてもそう思っていました。もちろんそれが一番良いのですが、感謝する、見つめなおすきっかけにはなったのではないかと思います。平穏な日々を祈るべき神社の役割がなんであるかを、新しい年には考えながら復旧に取り組んでいきたいと思っております。(中西:実際震災のあとにも手を合わせに来られる方はいらっしゃったんですか)多いですね。惨状とは言わないんですが、地震が起こるとこういうことになるというのを、あまり神社の人間としては見せたくないんですけどね。そういうのを感じて受け取っている部分はあると思うんですね。それで終わりじゃなくて災害をこれからどういう風に受け止めて日本人として生きていくのかを考えてもらう機会を与えられたらいいと思っているところはあります。 (中西:来年2017年、どういう年になっていきますか)まずは復旧を着実に進めていくこと。あとは神社としての役割というのがいろんな部分であると思う。心のよりどころの対象であるというのが本筋であって、文化的な意味での位置づけ、周りで生活をしている方にとっての神社の役割、観光的な部分、色んな役割がある。それも着実に担っていくことを怠らないようにしていきたい。(中西:熊本だけじゃなくて日本全体を見た時に改めて感じることは)災害の認識を当事者になって考えるべきだと思いました。南海トラフ巨大地震の話だとか色々出てきているが、防災意識、どれだけ備えるか。私は自宅で地震を受けた時も車中泊をしている時期もあり、その中で神社に通っていたが、それが大都市で起こったらどうなるか。日常の防災意識は、それまで私個人の意識は低かったと思うんです。熊本でそんなに大きな地震はしばらく受けていなかった。台風被害や大雨ばかり気にしていたが、そういうところがおろそかになっていた。それがずいぶん大きな苦労を生んでいる気がする。日本全国、地震に限らず火山活動など自然災害が話題になっているので、それを通じて防災意識を醸成する取り組みが出てくると良いと思っています。


阿蘇神社では現在、再建のための寄付の呼びかけも続けています。詳しくは阿蘇神社サイトをご覧ください。

2016年12月19日

12月19日 阿蘇神社レポート1

今朝は中西哲生の、熊本県阿蘇市からのレポートです。

熊本地震から、8か月が経過。熊本は、震災後初めての年越しを迎えますが、中西哲生は阿蘇市の住民の方々の心のよりどころ、阿蘇神社を先だって取材しました。


※地震で倒れた楼門。拝殿も倒壊した。(※10月取材時の様子)

ニュースでも報じられた阿蘇神社の楼門は国の重要文化財。高さ18mあり、江戸末期に作られた阿蘇の象徴でしたが、完全に倒壊していました。周辺よりも、神社の被害が大きかったため、地元住民の中には、楼門や拝殿は、身代わりになって壊れたんじゃないか、と考える人もいるそう。

この取材から数か月経った12月現在、楼門は解体へ向けた作業が進んでおり、解体するための「屋根」で、もうすぐ覆われる予定。阿蘇神社の権禰宜で、文化財を担当されている池浦秀隆さんに、伺いました。

◆災害が神社の役割を考えるきっかけに
まず撤去を先行しています。お正月には倒壊してるものが無い状態にして、そこに参拝所を設けて正月にお迎えしようかと思っています。ただし再建につきましては拝殿は未指定の文化財なので、国の指定の楼門と、全部で6棟の国の指定の建造物があるんですけど、それは国庫補助事業の対象として先行して始まっているが、文化財の指定を受けてないモノはめどがたっていない。それは神社の自費事業として行うことになるが、経済的な部分、事業の内容については計画を作っている最中です。
(中西:この辺に暮らしている方にとって阿蘇山はご神体、守り神と感じてらっしゃるんですかね)
神社の中の人間としての感覚から言うと、火山活動が無い限りは火口のことは意識して生活していないと思います。じゃあどういう神様ですかという質問を受けることもありますが、開拓の神として農耕に恵みをもたらし、自然神として水の恵みをもたらし農作物を促進させるという意味だとか、そういう趣旨で年間を通して農耕の祭が行われる。そういう性格を認識している人が多いと思う。ですから火山の活動が無い限り、阿蘇の神が火口の火山神であるうという認識をする人はほとんどないと思う。それが何十年に一度の噴火や灰が降ったことで、阿蘇の神は火山神だというイメージを持つ、そんな感じじゃないでしょうかね。
(中西:阿蘇山に暮らしてらっしゃる方は、自然の恵みは阿蘇山から来ているという認識は持っている?)
特に「水」に関してはあるんじゃないか。阿蘇の伏流水というものがいろんな部分に恵みをもたらしている認識はあるし、それを通じた農業や自然の景観という部分はある。そういう意味では今回の地震という自然災害を受けて、自然災害とどう向き合っていくかをそれぞれ個人が考えられていると思う。自然災害は地震だけじゃなく台風も大雨も、もちろん火山活動もあるが、神社の神は恵みをもたらす存在だけではなく時々厳しい一面もある。そういうものに対してどう私たちの祖先が付き合ってきたのか、そこに神社の役割があり、それがどういう形でお祭になったのかというところを考えるきっかけに花って言っているんじゃないかと思っています。


今年のお正月、阿蘇神社はすでに仮の拝殿が作られ、参拝の準備が着々と行われています。先日は、新しいしめ縄縄もつけられ、甘酒の仕込みも始まっているそう。

ただ、全壊した「拝殿」は、昭和23年に改築されたため重要文化財に指定されておらず、自費再建を余儀なくされます。そして再建には、10年かかるとも言われています。現在、再建のための寄付の呼びかけも続いています。詳しくは阿蘇神社サイトをご覧ください。

明日も、阿蘇神社からのレポートです。
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パーソナリティ 鈴村健一

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