2017年2月8日

2月8日 自主避難者たちのいま3

引き続き、福島第一原発事故によって、自主避難という道を選ばざるを得なかった人たちの「いま」をお伝えします。

避難指示は出ていないものの、放射線の影響を考え福島県内/県外へ避難したいわゆる自主避難者。その中で、福島県からの借り上げ住宅で生活している方はおよそ2万6600人に上ると言います。しかし、その借り上げ住宅の無償提供は、今年の今年3月いっぱいで打ち切りに。去年11月時点で、4月以降の住まいが決まっていない方は、2万6600人の7割・およそ1万8000人というアンケート結果が出ています。自主避難者の多くは、夫を地元に残し、母親と子どもで避難する「母子避難」なのですが、この7割という数字は、子どもの将来を考える母親の、ごく普通の意識の現れだと言います。母子避難を取材してきたライター吉田千亜さんに伺いました。

◆避難者を理解してほしい
特にお子さんですよね。例えば子どもが20才まではこっちにいようかな、と決めてらっしゃるお母さんもいる。一律で2017年3月でみなさん引っ越せというのは乱暴だと思う。一人ひとりの違いがある中で、子どものタイミングを見計らって生活を計画していきたいという方が本当に多い。そういう意味では何年スパンで猶予があるならわかりますが、全員一律でここですよとなった場合本当に困る。来年小学校はどこに入れればいいのか分からない。特にお子さんは、周りのお友達から「●●ちゃんは一緒の小学校行くの?」って聞かれても答えられないという話も聞きました。避難直後なんてお子さんにも精神的な負担がかかっている。3回くらい引っ越してようやく今の借り上げ住宅にたどり着いたという方も、お子さんがチックや夜尿症、夜驚症という夜叫んで頭を打ち付けるようなことや爪噛みが始まったり、子ども自身も大変なときをやっと乗り越えて生活しています。

それからもう一つ、この問題は承認の問題だと思う。自分が認められるか認められないかの問題。そこにいていいんだよ、避難してもいいんだよ、ここにいることを周りの人が受け入れる、歓迎するくらいの、支えるようなこと。原発事故ってそういうものだと思う。理解してくれることが重要だと思うんですね。


一方、母子避難というケースでは、収入を得るため地元に残って働く夫・父親も、大変な苦労を続けています。

◆子どもの成長を見られない父親
金曜日の夜に仕事が終わって、そのまま毎週通っているお父さんもいますね。クルマで高速を飛ばして郡山から埼玉県へ。片道2時間半から3時間かかる。それをお仕事で疲れた後に本当に毎週必ず、欠かさず土日は子どもと一緒に寝て。何より往復が肉体に負担だと思うし、でもお父さん自体は、「子どもたちのことを考えるともう少し避難を継続したい、母子避難しているお母さんをサポートする」ということなので、離れ離れは本当に辛いと思う。お父さんが子どもの成長を見られなかったのがかわいそう、と泣かれるお母さんもいる。そういうのを聞かせて頂く度に取り返しのつかない事故だったというのは改めて思うし、本当に二度と会ってはいけないと感じます。そういう方たちの中には自分たちと同じ思いを二度としてほしくないと話す人もいて、ちゃんと考え続けなきゃいけないなと思ったりしますね。


母子避難・・・パパが福島で仕事を続け、ママと子どもは避難先という生活は先ほどのようなケースばかりではないそう。中には、離れ離れの生活が続く中で、夫婦関係・家族関係に亀裂が入ってしまうケースもたくさん聞いていると、吉田さんはおっしゃっていました。

明日も自主避難者の今についてお伝えします。


2017年2月7日

2月7日 自主避難者たちのいま2

引き続き、福島第一原発事故によって、自主避難という道を選ばざるを得なかった人たちの「いま」をお伝えします。

避難指示は出ていないものの、放射線の影響を考え福島県内/県外へ避難したいわゆる自主避難者は、把握できているだけで2万6600人に上ります。特に多いのが、父親は仕事のため地元に残り、母親と子どもだけで避難する「母子避難」です。

こうした方々は、これまで福島県の借り上げ住宅で暮らしていましたが、今年3月いっぱいで、無償提供が打ち切られます。つまり4月以降も避難を続けるなら、「実費」。そうでなければ転居という選択を迫られているわけです。


これが何を意味するのか。母子避難を取材してきたライター吉田千亜さんに伺いました。

◆「また一からはじめないといけない」
こちらで避難してきた方っていうのは、避難の暮らしを6年間積み上げてきている。子どもも同じ。いじめの問題もあったが最初そういうことがあったのを乗り越えてやっとここまで来た、先生がやっと理解してくれたという、精神的負担から始まって立ち直って、やっと慣れてきてここで生活するにはどうしたらいいんだろうと、ようやく考え始めた方もすごく多い。それなのに、また一からはじめるのかという。また再選択を迫られてしまった。これからだと思っていたという方が結構多いんですよね。母子避難の方は特にそうですけど、私がお会いした方は、極端な話8割くらいが不眠や鬱になってしまった、難聴になった、円形脱毛症になった、持病が悪化してしまったと、精神的に追いつめられた方が多い。それは自主避難が周りに理解されにくいから。政府による避難指示がなくて放射能汚染の問題なので共通の認識が得られない。いろんなことを説明しないと相手にわかってもらえないという経験もたくさんしてきている。例えば「なんで避難してきているの」「帰らないの」と聞かれる。それは投げかけた人が悪気がなくても、彼女たちは常にそれを問われ続ける。なぜここに自分がいるのかを常に正当性を問われ続ける。それは辛い。何気ない言葉ならまだよいが攻撃的な言葉を受けることもある。特に避難直後は、避難指示があった方たちは突然家を追い出されたので喪失感を抱えて「帰りたい」と思ってらした。それは当然ですが、区域外避難・自主避難の人たちは放射能汚染を避けたいと避難した「帰りたくない」人たち。帰りたい人と帰りたくない人が一緒の場で話をするとやっぱり上手く合わない。特に避難直後のこの先が見えない状態で、帰りたいのに帰れないという年配の男性から、子どもを守りたいという想いで避難したお母さんが「帰る場所があるやつは帰れ!」と言われてしまったとか。それは1人2人ではなく何人かに聞いてきました。最近はお互いの状況がわかってきているので、そういう軋轢はほとんどない状態かと思う。


強制避難と立場が違うため、自主避難者はなかなか周囲への説明が難しいことが多く、避難先の町でも、精神的な苦痛を感じてきたといいます。例えば、気分転換にカーテンの色を変えただけで、近隣の住民から「賠償金がもらえていいわね」などと言われるケースもあるそうです。

◆自主避難者は「お洒落をしちゃいけない」?
よく言われるのが、「お洒落をしちゃいけないんじゃないかと思う」という話を聞く。避難しているのに贅沢な格好をしているって、本来なら自分らしくいられるのが一番いいのに、避難していることで周りから自分がどう見られているか常に気にしている。着飾ったりしたら「お金をもらっている」と言われちゃうんじゃないか、とか。実際 定期的な賠償をもらっていないことを理解されていないことで、カーテンをひとつ変えただけで「お金があっていいわね」と言われたり、引きこもりになって仕事ができず生活困窮に陥っている方に対して「仕事しなくていいなんて、いいわね」という声がかけられたというケースもあります。


「自主避難」という立場は周囲の理解が進まない、というお話でした。「だったら引っ越してしまえばいいのでは」という風にも考えがちですが、実はそれも難しい状況が続いていました。まず、借り上げ住宅は一度出てしまうと、避難終了とみなされ家賃が発生してしまうこと。また、住民票を福島から移してしまうと、福島の行政サービスが受けられなくなります。そもそも自主避難者も、避難したくてしたわけではないわけです。結果、人に気づかれないようひっそり暮らし、ストレス蓄積する方が多いそう。しかも、この3月でその借り上げ住宅も、なかば強制的に取り上げられてしまうことになります。

明日も、福島からの自主避難者の現状、お伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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