2017年5月2日

5月2日 南阿蘇村 地獄温泉の今(2)

今週は 熊本地震により大きな被害を受けた南阿蘇村から、200年の歴史ある温泉宿の「再起にかける想い」をお伝えしています。

阿蘇五岳の一つ、鳥帽子岳に湧く地獄温泉。古くから湯治場として栄えてきた【清風荘】では、湯船の底から源泉が湧き出す露店風呂をはじめ3つの源泉を楽しむことができる人気の宿でした。しかし、昨年4月の地震で周囲の山が崩れ、道が閉ざされ帰宅困難なエリアに。また6月の豪雨で旅館に土石流が押し寄せ、今もほとんど手つかずのままです。

阿蘇山麓で200年を超す歴史をつなぐ「清風荘」。
2重の災害に、旅館の代表 河津誠さんは何を想うのでしょうか。

◆130年の本館と1つだけ残った温泉を復興のシンボルに
6月20日から21日未明の雨で旅館の東側を流れている川が溢れて土石流がきて、岩も木も全部混ざった状態だから家の半分、敷地の半分埋まってる状態ですね。でも不思議なものでものすごく気持ちが折れるようなことは、地震で全然営業できていないのでそこでゼロと思ってたので、僕らこの旅館兄弟3人でやってるんですけど3人で「ゼロに何掛けてもゼロだから」というとこで気持ちおさめました。2重にやられて気持ちが萎えるのが一番まずいので。まずは整理しようと、守るべきものと捨てていいものと。でこの130年の明治中期の建物と唯一残った温泉、これをシンボルに立ち直ろうと。地獄温泉には3つの泉源が離れた場所にあるんですね、一番西側の泉源は山の崩落で半分埋まった状態に。もう1か所、ちょっと離れたところにある泉源も埋まってます。もう1つだけある泉源が湯船もお湯もちゃんと沸いた状態で入れると。足元から沸く温泉なので、地面掘っただけに入る感じなので、それとこの130年の歴史が壊されなかったので、やり直そうという気持ちになったんです。
今日も雨ですけどこれが6月にものすごい雨が降るんですね。山の状況は去年の地震の時のままなので何の対策もされてないのでまた起こる可能性があるわけです、土石流が。僕は経営者なので悪い方へ考えてますけど、起きると考えると今あるこの大量の土砂をよそに移すお金をかけられない、置いとかないといけない、打つ手がなくなる。ピタっと時が止まったようになってますけど・・・。


◆唯一残った「すずめの湯」
いわゆる源泉に直接入るという。これが身体まで入って「ボコ」って音を聞きながら入ったらもう、めっちゃ気持ちいいです! この音と湯が沸く対流を感じながら入るお風呂です。

南阿蘇の山並みを見るとたくさんの土砂崩れの跡が見られ、これは熊本地震で地盤が緩み、そこに6月の豪雨で土砂が崩れ二次災害を引き起こしているのです。こうした土砂災害の危険性は、もう間もなくやってくる梅雨でまた高まるということ。
明日も、地獄温泉 再起にかける想いをお伝えします。

2017年5月1日

5月1日 南阿蘇村 地獄温泉の今(1)

今週は熊本地震により大きな被害を受けた南阿蘇村から、200年の歴史ある温泉宿の「再起にかける想い」をお伝えします。

阿蘇山の南山麓に位置する、鳥帽子岳に湧く「地獄温泉」。古くから湯治場として栄え、旅館【清風荘】は二百年も前から人々に愛されてきました。しかし、昨年の4月の熊本地震で宿に通じる道が閉ざされ、6月の豪雨で土石流が押し寄せ旅館を直撃しました。震災から1年経った今も、宿の再建のめどは立っていません。

あの日、何が起こったのか。地獄温泉「清風荘」の代表、河津誠さんに伺いました。

◆自衛隊のヘリから見た我が宿に「帰ってくるぞ!」
揺れた瞬間は動けなかった。この辺で6強だったと思います。部屋から出ようとしてもドアが開かない状態で、なんとか蹴破って出たらもうお客様が玄関の前におられて、ある車全て(駐車場に)おろしてみんなで夜を過ごしたという感じです。その間もひっきりなしに余震がきますので、その度に山が崩れるわけです、ガーーー!と音を立てながら。その度にお客さんはパニックですよね。すぐそばの垂玉温泉のそばも完全に山が崩れていましたのでそれを見た瞬間に、これは動き回っちゃいけないと思いまいした。「家に帰ることはまずあきらめてください。車で動き回るのもあきらめてください。とにかく避難所に行きましょう、これを1つの目標にしましょう。それ以外は考えないでください」と言って一晩明かしたんですね。ものすごく興奮状態の人をどうやっておさめようかと皆で話し合って、僕も料理人なんです実は、社長なんですけど。弟も料理人で、これは食べさせるしかないぞと、まだ冷凍庫にはカチカチの食材がたくさんありましたのでそれを引っ張り出してきて、炊き出しレベルではないのを食べてもらえれば落ち着くだろうと、旅館レベルのものを駐車場で作って食べてもらったら落ち着いてもらえました。食料はあったんですが、水が地震で濁ってしまって飲み水がなくて、備蓄していた水で夕方がギリギリだったんで水無しで大丈夫かなーと思ってたら、まず陸上自衛隊の方が無茶苦茶な道を下から歩いてこられて、地上隊として準備されて。そこにヘリが4機来て変わりばんこに乗って皆さん避難できました。僕が最後に乗ったのは16日の午後4時半ぐらい。自分の家を俯瞰して見たことがないので俯瞰してみると、ここの被害だけじゃないのが見えちゃったんですよね。阿蘇大橋の方が見えて、あぁ本当だったんだって。飛びながら不思議なんですけど思わず「帰ってくるぞー!」って叫んでました。なぜかわからないんですけど、泣けましたね、あの時は…。帰れないって感じたんでしょうね…。



地獄温泉「清風荘」への道は今なお閉鎖され、帰宅困難な地域となっています。建物は大きな被害を受けましたが、3つある源泉のうち「1つ」が今もコンコンと沸き旅行客の帰りを待っているそうです。復旧にかけた想い、明日も引き続きお伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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