2017年5月12日

5月12日 相馬・大槌の子供たちで結成 オーケストラ

今朝は、福島県相馬市、そして岩手県大槌町の子どもたちで結成されたオーケストラが行なったコンサートの話題です。

4月29日、東京・渋谷の「大和田さくらホール」で行われた「“エル・システマジャパン”オーケストラフェスティバル2017」での「相馬子どもオーケストラ」「大槌子どもオーケストラ」などによる演奏、モーツァルトの「ディヴェルティメント」。「エル・システマジャパン」は、約40年前にベネズエラで始まった教育プログラム、貧しい家庭の子供たちにも等しく音楽教育を・・・という「エル・システマ」の理念に基づいて、東日本大震災後の2012年に設立され音楽を通じて被災地の子どもたちの成長を支えていこうというプロジェクトです。これまでもその成果は国内外で披露されてきましたが、今年もお聴きの通り、堂々の演奏が奏でられました。

代表理事の菊川穣さんに、この5年の手ごたえについて伺いました。

◆最初の頃はですね、震災から1年でとくに福島は原発事故の影響が強くて、人によっては「ここに居ていいのか」ですとか、ひじょうに重い雰囲気がありましたね。そして子どももその頃に外遊びをするなと言われていて、でも小っちゃい子なんかは遊びたいじゃないですか。だから覚えてますが一人の子なんかは(お母さんから聞いたんですが)、帰ってくるときにふつうに帰ってくるんだけど、ようは外で遊んでた服を家から少し離れたところに捨ててくると。着替えて帰ってくる、汚れてたら怒られるから着替えを持って行って・・・だからなんか服が減ってると思ったら捨ててある、みたいな。そんなことがあった中で言われたのは、音楽の活動はインドアだからいいと。でインドアでみんなで出来るし、みんなでやるというのはそれだけで楽しい、とくに合奏して合わせるなんていうのはそれだけで誰でも経験があると思いますが楽しいんですよね。しかも地域のつながりが薄くなってる中で、こういうオーケストラ、合唱の場で集まって、新しい友達も出来るみたいな、そういう子どもたちが塞ぎこむ要因が多い中で希望になるような場だったんじゃないかなというのは感じますね。

そして今年4月のフェスティバルでは、相馬と大槌の子どもたち、さらにこれまでプロジェクトを支えてきたボランティアたちによって結成された「フェローオーケストラ」なども加わって演奏が披露されました。今年の大一番の舞台、どうだったんでしょうか?

◆そうですねやはりなかなか不安が・・・。とうぜんですけどそれはそれなりに準備は出来ている、ただ子供たちは多様ですので、相馬にしても大槌にしてもいわゆるオーケストラとかバイオリンをやっているという世間一般のイメージとは程遠いワイルドな子もいます。で、いかんせんそこがみんな心配な部分だったんですね。ただエルシステマの理念というは誰もが同じステージに立って音楽を共有できるということなので、今回、相馬大槌から子供たちが一緒に参加して曲を演奏するという、それはやっぱり子供もそうですし保護者の方が喜んでおられたのが印象深かったと思います。それ以外にもすごくみんな一生懸命頑張ったと思います。集中力途切れずですね、一体感がすべて音に出てたんじゃないかなと思いますね。

M パッヘルベル : カノン ニ長調                                        

お届けしたのは、浅岡洋平・指揮、「大槌子どもオーケストラ」、「相馬子どもオーケストラ」、そして「フェローオーケストラ」と「Hands On オーケストラ」による、パッヘルベルの「カノン」でした。

じつはこの“エル・システマジャパン”、去年は相馬の子どもオーケストラがドイツに渡ってあの“ベルリンフィル”との共演を果たしているんです。次回、来週月曜日の『LOVE & HOPE』では、その時の秘蔵音源をお届けします。お聴き逃しなく!

2017年5月11日

5月11日 3.11後の霊体験を聞く(4)

ノンフィクション作家、奥野修司さんの著書「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」。この本は、奥野さんが東北の被災地で聴きとった、いわゆる「霊体験」をまとめた一冊です。

今回この本に綴られているのは16のエピソード。でも、同じような霊体験を経験しながら、人に語ることができずにいる人がまだまだたくさんいると奥野さんは話します。

◆霊体験を語ることが心の復興のきっかけになれば
いま復興というと、街が復興するとか道路が復興するということに重ねてしまうが、心の復興というのもある。心の復興というときに、家族や親しい方を失くしていない方は心の復興が比較的時間とともにできると思う。でも大切な人を失くした方は永遠に戻ってこないわけだから、永遠に復興できない。でもどこかで折り合いをつけられるはず。折り合いをつけられるような場所もきっかけもないまま、ましてや自分が霊体験をしたということを誰にも聞いてもらえないまま、悲しみと一緒に抱え込んで生きているという状態。せめて、家族を失った方たちが集まって話ができる場を設定するとかができればいいと思います。いま陸前高田で「拝み様」「霊媒師」的な方で、震災をきっかけに霊感が強くなったという女性が何人かいて、そういう方たちはいままでの「拝み様」とは違い、亡くなった方の魂を降ろしてくるのではなく、子どもたちを津波で亡くした方への集団カウンセリングを行っています。本当はそういう場所があちこちにあればすごくいいと思うのですが、それがないまま、霊体験をしながらそれを誰にも語れず悲しみだけが積もっていくという方がすごくたくさんいると思うんです。
実は僕が取材をお願いして、霊体験の聞き取りを予約したままになっている方が4人ぐらいいるんです。その方たちはまだ語ってくれていない。結局本の出版の締め切りに間に合わなかった。なぜ間に合わなかったかといえば、今回この本で紹介した方たちは、二人お子さんがいたら一人は助かっているとか、家族の誰かは助かっているとか、生き残った家族が生きる支えになっている方たち。だけど、僕が約束して結局語ってくれなかった方というのは、家族を全部失くしてしまっている。ご主人も子どもも全部。生きる支えがないものだから、どこかで喋ると全部それが崩れていしまうという恐怖感があるんだと思う。霊体験を体験した人が喋れないというのは、東北でもすごく多いんじゃないかと思う。それを認める社会になれば、と感じています。


奥野さんの著書「魂でもいいから、そばにて 3.11後(さんてんいちいちご)の霊体験を聞く」は新潮社から発売中です。こちらは、2012年から昨年まで4年をかけて、およそ30人の方に「霊体験」の聞き取りを行いその一部が収められています。

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パーソナリティ 鈴村健一

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