2017年5月25日

5月25日 物理学者・早野龍五さんが考える「福島と放射線のいま」?

今朝はきのうにつづき、福島と放射線の「いま」です。

お話を伺ったのは、東京大学名誉教授 早野龍五さん。2011年の福島第一原発の事故直後から、ツイッターで放射線に関する情報を発信、現在も福島の放射線に関するデータを分析し、科学的根拠に基づく情報を伝えている方です。

早野さんはこれまで、行政に直接かけあって、福島の学校給食の線量計測を実現したり、「ベイビースキャン」という子どものためのホールボディカウンターを製作するなど 継続的に活動をしています。そして、活動の中で感じたのが、「福島の若い世代」が正しい知識をいかに持つか、ということでした。

◆福島の若者の将来を見据えて
福島の高校生、主には県立福島高校の高校生とのお付き合いで、2013年の終わりくらいからずっと継続しています。今までやったことで一番大きかったのは、「世界の高校生の外部被ばく比較プロジェクト」というのをやったことです。これは福島県内の6つの高校、県外6つの高校、海外ではフランス、ポーランド、ベラルーシの高校生200人以上の高校生に外部被ばく線量計を持ってもらって、かつ自分が毎日、何時にどこにいたかの記録をつけてもらった。それを回収して高校生たちがデータ分析をして、私の指導のもとに論文を書く。最後はイギリスの放射線防護の専門雑誌に採択されて論文として世に出たのが2015年の12月くらいですかね。結果は福島の高校生たちの外部被ばく線量というのは世界と比べても特に高くないと。もちろん福島は事故由来のガンマ線も浴びていますが元々の自然放射線というのも浴びている。他のところは事故由来の放射線は無くて自然放射線を浴びている。比べたところ福島は事故による上乗せがあるにも関わらず、トータルとして浴びている外部被ばくの線量というのは世界各地と比べて高くない。いちばん高かったのはフランスのコルシカ島の高校生。これは現地に花崗岩がむき出しになっていて自然放射線が高いからということが分かっています。どういう狙いでやっているかというと、いちばんはやはり不幸にして起きてしまった福島の事故で自分の周りに放射線があるという環境で暮らす中で、その環境を自分で測って自分でよく理解し、自分たちがここで暮らしていって大丈夫なのか、あるいはここで育ったことによって将来結婚するようなときに自分の子どもに放射線の影響があるのかどうか心配する必要があるのかないのか、自分で調べて自分で納得していくということがとても大事だと思ってやっています。


早野さんは、これまでのデータ分析や知見から、
「居住が許されているところに住む限り、世界の自然放射線に比べて、福島が放射線が特に高いことは無いことが分かっている」「遺伝的な影響が及ぶことがないことも多くの論文で知られている」としたうえで、それでも、不安を感じている人は多いという事実、福島の若い世代が他の地域で差別や偏見をうけることは絶対にあってはならないという思いから、学生たちが知識を身につけるためのプロジェクトを実施したということです。

あしたも早野さんによる、福島と放射線の「いま」をお伝えします。

2017年5月24日

5月24日 物理学者・早野龍五さんが考える「福島と放射線のいま」?

きょうから3日間は、福島における放射線問題の「いま」を取り上げます。

お話を伺ったのは、東京大学名誉教授 早野龍五さん。

2011年の福島第一原発の事故直後から、ツイッターで放射線に関する情報を発信、現在も福島の放射線に関するデータを分析し、科学的根拠に基づく情報を伝えている方です。物理学者で、放射線の知識も備えた早野さんのツイートは、事故直後、人々が最も知りたい裏付けのある情報だったことで、フォロワー数は震災前の3000人から、一時は15万人以上にまで広がりました。

早野さんのこれまでの取り組み、そして福島の「いま」を伺いました。

◆「水道水を飲んでも大丈夫か」は未だ変わらない
本職は東大で物理を教えて、原子核や素粒子、原子物理の研究の実験グループ、国際チームを率いるということを20年間やってきました。放射線を測り可視化することについては知識も技術もあったので最初はそういうところから取り組んでいきました。主にはツイッターで様々な情報を提供する。それをグラフにしたり可視化をしてみなさんにシェアをする、最初はそういう取り組みでした。徐々に「内部被ばくが心配だ」とツイッターでお母さんたちが言っているのが見えてきて、2011年の夏くらいですね。それなら給食を測ればどれくらい汚染された食品を食べているかが分かるのではないかということで給食を測りましょうと最初は文部科学省に提案しました。文科省はそれをとりあげなかったので、副大臣のトコロへ行ってやりませんかと説得して、国の事業として始めるということを2011年の夏くらいからスタートしました。そうこうしているうちに福島の医療現場、お医者さんたちから「助けてください、一緒にやりましょう」というメールが来るようになって、2011年秋くらいから一緒に福島の現場で内部被ばく、そして徐々に外部被ばくのことにも手を伸ばすようになって活動は現在まで続いています。2013年にベイビースキャンという内部被ばくを測る子供専用の装置を作りました。それを福島県内に3台(南相馬、いわき、平田村)に設置しました。ちょうど福島第一原発を取り囲むように3台あります。それを作った意味というのは、図ることの重要さ以上に、心配しておられるお母さんお父さんがお子さんを連れて来た時に、お話をする場所として作りました。来て頂いた方には結果の説明の時にもいろいろな質問を受けるようにしています。その中でいまだに一番多い質問は「水道の水を飲んでも大丈夫ですか」「子どもを外で遊ばせても大丈夫ですか」。これは2014年からベイビースキャンが稼働していますが、ほとんど変わらずその二つに尽きる。それは2011年に子育て世代の方々がなさっていた質問と変わらないんですよね。だから2011年から今までの間に人々のリテラシが変化した部分はあるんだけれども、根強く不安がそのまま残っている部分もあるんだなということを思います。



早野さんは、科学者としての社会的責任から、自分の持つ知識を還元しようと原発事故直後に、ツイートによる情報発信を始めたといいます。そして今も福島と向き合う中で感じるのが「福島の人たちの根強い不安はまだ残っている」という事実。みなさんはどう考えますか。

明日、明後日も早野さんによる、福島と放射線の「いま」をお伝えします。

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パーソナリティ 鈴村健一

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