2017年6月30日

6月30日 開沼博(5) −311後の風景−

今週は、福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューをお届けしています。

開沼さんは福島県いわき市出身。震災前から福島の地域研究に取り組み、いまも福島の被災した地域に度々足を運んでいます。
震災から6年。福島の現状は日々変化を続けているといいます。

◆311後の風景移り変わり
例えば一番おすすめなのは楢葉町。木戸川という川があるが、そこでは鮭が上がってくるのが有名。福島第一原発の周辺には細い川がいくつかあって、多くの川で鮭が遡上してくることが名物でそれが観光資源でした。いま再び稚魚の放流がされ始めていて、そういう文化も再開し始めています。一方、陸の側をみると、除染をしてでた廃棄物があったりする。もう一度海のほうを見てみると、洋上風力発電の風車が回っていたりする。例えば楢葉町ではこのように311後の風景や変化が見えるし、そこに通うたびに状況が変化していっている。悪くなっているところもあるし、一方でいろんなことが進んでいるとみることができるかもしれない。


そして福島は、日本サッカーにとって重要な拠点、「Jヴィレッジ」がある場所でもあります。

◆Jヴィレッジを地域のコミュニティの場に
元からあった地域の力というのが再度活性化されようとしている例として、その一つがJヴィレッジです。アジア最大のサッカートレーニングセンター。ここが311によって原発事故の最先端基地として一旦閉鎖されて、天然芝のグランドが10個以上あったがそこも閉じられてしまいました。ここを再度オープンしていくぞという具体的な日程が決まり、それに向かって動いています。サッカー日本代表が震災前も合宿をしていたが、これからオリンピックに向けて合宿をする場所として再利用されていくのはもちろんだが、それだけでは経営は難しい。いまなにができるのか。サッカーだけでなくラグビーの試合もできるようにしたり、地域の子供たちが集まれるコミュニティにしようという取り組みをJヴィレッジの職員の方たちが頑張ってやっています。
たぶん相当とっぴなことをしないと、原発の被災が非常に大きかった地域は注目がされない、ポテンシャルが発揮しきれない部分もあると思う。非常にネガティブな意味で世界的に注目されてしまった地域を、ネガティブな注目をポジティブに変えていく取り組みがこれから重要になってくると思います。



今週このコーナーでは、あなたからのご意見、ご感想も募集しています。メッセージを送ってくださった方の中から抽選で5名様に、3000円分の図書カードをお送りします。

2017年6月29日

6月29日 開沼博(4) −ふるさとへの帰還−

今週は福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューをお届けしています。

福島県ではこの春、浪江町など4つの町村で帰還困難区域を除き、町民村民への避難指示が解除になりました。今回避難指示解除の対象となったのは、3万2000人。避難区域は、2013年に再編された時の3分の1に縮小しました。

◆多くが日常に戻る中で、孤立化してしまう人がいる現状
福島では徐々に避難指示が解除されていまに至っています。よくニュースで聴くのが、福島で一度人が避難した地域で、「帰ってきていいよということになったんだけど、結局まだ1割も帰ってきていないんです」、という言い方が全国ニュースなどでされるんです。直近で言うと、この春に避難指示解除になった富岡町とか浪江町などですけど、しかし1割も人が帰っていないという言い方がされる一方で、実は最初のころに避難指示が解除されて人が帰るようになった広野町では8割の人が町に戻ってきている。それだけでなく福島第一原発では毎日6000人の人が働いていたり、地域にはいろいろな産業も生まれはじめている。そういうところで働く人が、元居た住民と同じかそれ以上の戻ってきているような自治体もあるんです。なのでそういったところも含めていくと、ジブリのナウシカみたいな一度汚染されたところには人が住めなくて永遠にだめなんだ、という理解の仕方をしようとすれば、わたしたちは単純に楽なのかもしれないけど、現実はもうちょっと複雑。被害がないというつもりはもちろんないが、再生していく方向に向かって行く状況も生まれています。
時間の経過とともに多くの場所は当初非日常だった場所が日常になり、特殊な場所が一般的な普通の他の場所と変わらないよねという場所になっていくんです。重要なのが、その中で孤立してしまう人というのがいて、時間の経過の中で非日常が残るということはそれだけ傷が深かったんだなということだし、むしろ孤立する結果、孤立感にさいなまれてより傷が深くなっていくという部分もあると思う。それは多くの場所が立ち入り出来るようになったんだけど、しかし放射線の量が高い場所が未だに人が入れない状態にされている。そういう場所も全体から見ればごくごく一部であるけれど、だからこそ孤立化、固定化されてしまった被害というのを丁寧に見ていく必要があると思います。


広野町といえば、Jリーガーも通っていたサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」のある町。震災後は原発事故の対応の拠点となっていた場所ですがその広野町には今、8割の人が戻ってきているということです。その一方で「まだ1割しか戻ってきていない」町があるのも事実。6年が経ち、細部まで解像度を高めてアップデートされた情報を伝えていく必要があると改めて感じさせられました。

★今週はこのコーナーで、あなたからの感想、ご意見、メッセージも募集しています。メッセージを送ってくださった方の中から抽選で5名様に、3000円分の図書カードをお送りします。メッセージフォームからお寄せください。(当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。)
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パーソナリティ 鈴村健一

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