2017年7月18日

7月18日 災害時のSNS・法政大学 藤代裕之准教授2

引き続き「災害時のSNSの役割」です。

SNSは災害時に、身近な人の安否確認や情報収集にとても有効であることはすでにお伝えしてきました。ただその一方、被災現場を混乱させる「デマ」が拡散し続けてしまう問題があります。法政大学准教授 藤代裕之さんに、実際にあった例と、拡散を防ぐ方法を伺いました。

◆正しい情報が「デマ化」する
災害時のデマ情報というと、熊本地震では「ライオンが動物園から逃げた」、東日本大震災では「石油会社の爆発で人体に影響のある雨が降る」というようなことを考えがちなんですけれども、実は災害の現場ですごく困るのは救助情報や支援情報が、適切では無い、正しくない状態で拡散され続けるというのがかなり被災地の負担を多くすることになります。「助けて、いま生き埋めです」というものが拡散される。助かったとしても、「助けて」の情報はずっとSNS上で拡散を続けることがあるんですね。そうするとどれを助けて良いかわからなくなる。正しい情報がデマ化して行くこともある。これも研究でわかっていまして、「助けてください」というツイートはすごく拡散するんです。しかし「助かりました、ありがとうございました」というツイートはほとんど拡散しない。熊本地震でも実際にマンションから「助けてください」とツイートをして、その後「助かりました」というツイートをした人がいらっしゃるんですが、「助けてください」はとてもたくさんツイートされて、「助かりました」はほとんどツイートされていないんですね。ですので「助かりました」が拡散すると、「助けてください」がSNS上から消えていくことが望ましいんですが、みんな心配しているので「助けてください」だけがSNS上に残り続けてずっと拡散し続けるということがあるわけなんですね。それで被災地の現場が混乱するということが実際に起きているということです。ですから拡散するときには、例えばTwitterだったら<リツイート>で拡散するというやり方があります。本文をコピーして、自分でツイートするのではなくて、流れてきた情報を<リツイート>すれば、元の情報が消えた時にそのツイートも消えるという仕組みにTwitterはなっているんですね。そうすると「もう助かりましたよ」「物資はもう来ましたよ」ということになって、元の発信者の方がツイートを消した場合、リツイートだったら自然と消えてデマにならない。良かれと思って情報をコピーして別のSNSに投稿するということもあるわけです。LINEの情報コピーしてTwitterに載せたり、Facebookの情報をTwitterにコピーするということも実はSNS上でデマが消えない要因になっているんですね。当事者以外の方が、別のSNSから投稿コピーしたり、心配だからとツイートのコピーをまたツイートするということは控えていただきたいなと思います。


さきほどのお話に補足すると・・・
SNS上の情報が、「古いか新しいか」は、書き込まれた時間が表示されるので分かるはずですが、例えば「たすけて」という書き込みを別の人が「コピーしてツイート」すると、いつのものか分からなくなることがあります。ですから、コピペではなく<リツイート>でなければいけない。

では、デマ情報や古い情報を拡散しないために、どうすればよいか。デマ情報・古い情報の見極め方も藤代さんに伺いました。
・まずリツイートする場合に「発信者のアカウント」その発信者の「過去のツイート」をチェックする。本当に被災した人なのか。被災地にいるのか。過去に怪しいツイートをしていないかをチェックするのが大切です。
・さらに、対象となるツイートを一度「検索してみる」のも有効。同じものがたくさんヒットする場合は、スパム的にたくさん書き込まれた可能性があり、「あれ、おかしいぞ」と立ち止まることができます。

緊急時は、なかなかウソか本当か、古いか新しいかを判断できない状態になりがち。せめて原則として「リツイート」を守る。他のSNSに広げないようにする。覚えておきましょう。

明日も、災害時のSNSの役割について考えます。

2017年7月17日

7月17日 災害時のSNS・法政大学 藤代裕之准教授1

先週に引き続き「災害時のSNSの役割」、考えていきます。
これまで、ユーザー数の多いSNS 3社にお話を伺ってきました。LINE、Facebookは身近な人の安否確認、支援する側・される側のマッチング、Twitterは災害現場に立ち入れない場合の、情報収集に力を発揮することが分かりました。
一方、SNSには拡散力が大変大きいため、様々な問題点もあります。これまでの災害を通じて分かって来た、今後SNSを活用するうえでの「課題」はどんなものがあるのか。

ソーシャルメディアに詳しい法政大学准教授 藤代裕之さんに伺いました。

◆SNSが招く混乱をどうすればよいか
SNSはたくさんの人が利用していて日常して日常的に使っているわけですが、災害時や緊急時に上手に利用するのは、かなりリテラシーが高い層に限定されてくると思います。簡単に発信できるんですが、一方でその現場の状況の把握・拡散と両方がセットにならないとトラブルが起きます。例えば東日本大震災の時だと、「助けてください」と物資を要求したのはいいんですが、それがずっと拡散し続けてどんどん(物資が)来てしまい捨てなければいけなくなったりとか。

一方、SNSを使う人が少ない集落ではそういうこともできず、ずっと物資が届かない。そうするとSNSでたくさん拡散した人の方が支援が来る、救助が来るという格差みたいなものに繋がるのじゃないかということがいま課題になっています。このSNSの発信力が格差を生むなら、2つ解決策があります。1つは「発信力を高めてもらう」。みんなが発信力を高めて自分たちの地域で困っていることをSNSで発信する。それによって物資が届きボランティアがやってくるというのは、ミスマッチがミスマッチを防ぐことができるし大変良いことだと思います。しかし、Twitterを非常によく使われていた熊本市長がおっしゃっていたんですが、「自治体の職員にも能力差がある。なのであまりTwitterでいろんなことをつぶやかれると職員がついていけないんです」。ということで使うのをセーブしたとおっしゃっていたんです。リテラシーの差があるものをある突出した人が使ってしまうと、支援者側のリテラシーが追いつかないというケースもあるわけなんですよね。そこで差がついてしまうと混乱が生じてしまうので、だとしたら自治体や支援団体のSNSの拡散力や発信力を高めるよりも、人々に自由に使ってもらいながら、様々な発信がまだらな状態を維持しつつ、どこかで専門家による情報のチェックをする。これを私は「情報トリアージ」と呼んでいるんですけれども、情報を選んで救助・出動の手前の部分で、情報トリアージチームが適切な情報を流すことで、「これは古い情報ですよ」「これも助けられました」と情報を選別する、ふるいにかける作業を入れることで被災現場の作業を減らしていこうという取り組みなんですね。ただ、情報トリアージが具体化しているかというとそうでは無い。研究は始まっていまして、国の方で最近流行の人工知能・AIを使って、情報が新しいか古いか、うそか本当かというものを確かめていきましょうというプロジェクトが始まったばっかりなんです。


明日は、いまの時点で私たちが、情報の拡散による「混乱」を防ぐためにどうしたらよいのか、藤代さんに伺います。
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パーソナリティ 鈴村健一

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