2017年7月28日

7月28日 医師・越智小枝さんが語る相馬市3

今週は福島県で復興に向き合う人々の声をお伝えしています。
引き続き医学博士で、日本医療研究開発機構の越智小枝さんのインタビューです。
東日本大震災をきっかけに、2013年から相馬市の相馬中央病院に勤務。現在は東京から相馬に通いながら、放射能への不安を解消する活動を続けています。


そんな越智さんが、いま力を注いでいるのが「くるまざカフェ」。除染や福島再生に取り組む様々な方々が情報を交換し、経験を共有するイベントです。

◆ネガティブな面を見てもらうツアー
もともとは「ポジティブカフェ」という名前で、福島についてポジティブなことをやっている人たちを集めて発信しようと始まった企画です。最初はそういう人たちが壇上で講演するという話だったんですが、来て下さった方と交流する形のものが良いのではないかという話になり、車座になって話すという言葉と、「くる」「混ざる」を合わせたネーミングで、くるまざカフェという形になり、その中で復興の現場についてのツアーなど年に何回かやらせていただいています。私が参加しているツアーは福島市から飯舘村を通って、南相馬市のほうにぬけて、南相馬市でソーラーパネルや除染のための菜の花栽培をやっているところを見た後に、浪江を抜けて川内村でバーベキューをして一泊する。翌日に三春の林業、今は林業がとても大変なんですが、その林業を見学して、薪を作っている方のところに行ってお話を聞く。そして福島に帰ってくるという一泊二日のツアーです。木材はとても難しくて、線量は下がるんですが年齢の一部に放射能がくっついている部分がある。それにプラスして根っこに残留しているところがあるんですね。それがどこに残留しているかというのがはっきり分からないので一つ一つ測らないといけない。木材の場合は薪にして灰になったときのベクレル数がいくつ以下というのが決まっていて、基準が厳しくなってしまうんです。つまり灰になって濃縮してしまうのでどれぐらいの線量まで下げていいかがわからない。非常に曖昧な中でやっています。なので、自粛では無いですが風評被害を払拭しようにも払拭するだけのデータが足りないというのが今の林業の悩みだと思います。そういう林業の方の悩みも聞きながら回っていく。福島の復興と言うと災害を忘れたかのような観光地のツアーが多くなっていますが、あえてそういう汚染した木をどう扱うかとか農地をどう再生させるかとかネガティブな部分からどれだけ新しいことが生まれているかということを見せる、そこで参加した人に未来志向でどうやればいいかと言う話をしていただくというのがコンセプトです。1番大事なことが「考えなきゃいけない」「安全にするにはどうしたらいいかな」というのを通り一遍ではなくて、自分たちで必死で頭を使わないといけないことなんだと言うことをもって帰ってくださっていることかなと思っています。


くるまざカフェで、越智さんがガイドを務めるツアー。参加される方の多くは福島の別の地域の方がだそうです。参加者は現場を見ることで、真剣に解決方法を考え様々なアイデアを口にするといいます。そしてそれが、地域を活性化する新しいビジネスなど、未来の可能性に繋がることも
越智さんは期待しているということです。

今週は福島県で復興に向き合う人々の声をお伝えしてきました。ぜひ今週の放送を聴いて何を感じられたか、率直なお考えをお寄せください。メッセージは、『LOVE & HOPE』ブログのメッセージフォームから。抽選で5名様に3000円分の図書カードをプレゼントします。

2017年7月27日

7月27日 医師・越智小枝さんが語る相馬市2

今週は、福島県の「いま」ということで、当事者や福島に関わる人々の声をお伝えしています。

引き続き、医学博士で、日本医療研究開発機構の越智小枝さんのインタビューです。

東日本大震災後の2013年から、相馬市の相馬中央病院に勤務。住民の放射能への不安を解消する活動を続け、現在は東京から相馬に通いながら活動を続けています。そんな越智さんは、いまも避難生活を続ける人々が抱える「健康リスク」を、こう説明します。

◆放射線量だけでは測れない「健康被害」
私が今、あちこちの話していることのもう一つと言うのが、原発事故によって起きた健康被害というのが、放射能やガンの話だけしていることで大量の健康被害が見落とされとされているということ。例えば仮設住宅で起き得る健康被害、運動不足が起きるというのは気づくかもしれないが、仮設住宅の多くは山の向こうにあるので、歩いて買い物に行けていた人が車を使わなければいけなくなり運動不足になってしまうし、今まで浜辺に住んでいて魚をただで食べていた人たちがスーパーで高い野菜と魚を買わなければいけない。そうすると自然に保存食ばかり買って食生活も不健康になってくる。農業漁業をやっていた人たちはもともと日常生活で運動していたのに、いきなりそういうところに放り込まれると運動しようと言う気持ちになれない。さらに言えば高齢者の方だったら、健康になって将来何もないじゃないかということで鬱々としてしまう。間接的なものを幅広くとらないと解決するものでは無い。線量が低いから帰還しましょうと一言言って健康になるものでもない。その複雑さと言うのは多分しゃべりだしたら本当に終わらなくなってしまうんですけれどもその福田さんその複雑さをいろんな人が理解して欲しいなと思います。


一方、今年は春に、いくつかの地域で避難指示が解除されました。解除となった地域へ「帰還する人たち」は、いまどんな不安を抱えているのでしょうか。

◆避難指示解除はゴールではない
ほとんどが放射線量に対する不安ではない。私が外来で見ている方は高齢の方が多いというのはもちろんあるんですけれども、避難指示解除になって、タダになった医療費も有料になってしまう。解除になったから家を立て直さなければいけない。そこでまたお金がかかる。向こうの病院や診療所がまだ再開していないから遠い相馬に通わなければいけないとか、そういう生活の不安なんですね。これは去年 避難指示解除になった南相馬市・小高地区に住んでいた方が言っていて印象的なことだったんですが、「世の中の人は避難指示解除がゴールだと思っている。解除になって良かったねじゃなくて解除になって住めるようになったっていう事はそこがゼロ地点であって、そこが不幸のスタート地点なのにまるでそれがゴールであるかのように思われるのが、やっぱり間違っている」とおっしゃっていました。よく国に届かないと言いますが、行政の人も地元の人の言葉がなかなか理解できていない。地元の人も行政の言葉を聞いても理解できない。言葉が通じないし、そもそもそこが大きいんだと思います。ですから生活をゼロからスタートするという不安、それが一番大きいんではないかと思います。


ぜひ今週、あなたが聴いて感じたことを、「LOVE & HOPE」」ブログのメッセージフォームから送ってください。抽選で5名様に3000円分の図書カードをプレゼントします。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 339 | 340 | 341 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN