2019年12月26日

「巨大台風の教訓を活かすために」片田敏孝さん-4-

今週は「巨大台風の教訓を活かすために」。
2019年の、台風15号と台風19号という2つの大災害から防災・減災のヒントを探っています。お話は、東京大学特任教授、片田敏孝先生です。
今日は「命を守ることに対する主体性」について考えます。

◆自分の命は自分で守る、という主体性
いま本当に求められているのは「命を守ることに対する主体性」だと思うます。海外の事例を一つ紹介したいのですが、2017年アメリカヒューストン周辺をハリケーン・ハービーが襲いました。1300ミリの雨が降って全米始まって以来の水没をしました。その後ハリケーン・イルマがもうワンランク大きなサイズでフロリダ半島を直撃したんです。そしてソント知事は380万人に避難命令を出したんですが、逃げたのはなんと650万人でした。一週間前にヒューストンが水没したのを見ているから、フロリダ半島の人たちはキャンピングカーに家財道具を乗せて、1000キロ離れたアトランタに懸命に避難したんです。この避難を見る時に、アメリカの社会を紐解いてみると、アメリカの郊外などに行くと広大な小麦畑の間にぽつんぽつんと家があって、もしそこに強盗が来たら警察が来ても間に合わない。“自分の命は自分で守る”という徹底した意識がアメリカの国民にはあります。ハリケーンの話に戻ると、政府が言うことなんて関係ない。一週間前にあんな大きなハリケーンが来て、今度はもうワンランク大きいぞ。それなら僕は逃げるよ、という主体性なんです。
ひるがえって日本を見ると、日本の社会は命を守ることの主体性をなくしてしまっているんじゃないか。「なぜ逃げなかったの?」「だって避難勧告が出されなかったもん」と、もうこういう状態は脱しないといけない。自分の命を守ることに対する最善な行動をとることが、日本の国民一人一人に求められているのではないでしょうか。


アメリカの例、「自分の命は自分で守る」と、避難命令のおよそ2倍の住民が避難したというお話…あなただったらどう行動しますか?
「避難勧告が出たから逃げる、これは受け身の行動」「危険を感じたら、一人一人が自分の命を守る行動をとってほしい」それが片田さんのメッセージです

片田敏孝さん、明日は災害や洪水のハザードマップに関するお話です。

2019年12月26日

「巨大台風の教訓を活かすために」片田敏孝さん-3-

今週は「巨大台風の教訓を活かすために」。2019年の、台風15号と台風19号という2つの大災害から防災・減災のヒントを探ろうというシリーズです。お話は、東京大学特任教授、片田敏孝先生。
今日は「高齢者など、配慮を必要とする方たちの避難」について考えます。

◆要配慮者の避難
今回も台風の犠牲になったのは多くが高齢者、いわゆる「要配慮者」の方々で占められました。当然お年を召すと避難が困難になることは言わずもがなです。そういう状況の中でいまの日本の要配慮者対策はどうなっているかというと、まず要配慮者の名簿を作る。そしてそれを行政では対応しきれないので、「地域の問題です」ということで地域にお願いしている。要配慮者名簿は一般的には民生委員の方たちに渡って、いざとなると民生委員の方たちが走りまわって、要配慮者の避難に対応することになる。そうして今回の台風でもそうだったのですが、民生委員の方々にも亡くなる方がありました。あまりにも多くの方々を地域や民生委員にゆだねるという構造になっているわけで、わたしはこれはもう無理だと思うのです。寝たきりの方や生命維持装置を付けている重篤な方。そういった方もすべて地域にお願いというのは、あまりに無責任だと思うので、ここは行政が担当するべきだと思うのです。具体的には、地域にお願いするにはあまりにも大変な方々については、例えばケアマネージャーさんが要介護認定をするように、「避難行動に必ず対処しなければいけない方々」という限定的な名簿をつくり、行政がしっかり管理し、その方々の避難計画は行政が責任を持つ。一方で健康加齢したお年寄りは地域の問題として、地域の中でお互いに声をかけあって一緒に逃げていただく。この2つは明確に線引きすべきだと思います。


お年寄りの避難が地域、民生委員にゆだねられていたというを皆さんご存じでしたでしょうか。台風19号の犠牲者の7割は60歳以上の方々でした。自分には関係ないという人も、故郷に住む親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんのことと考えると身近な問題。もちろん、近い将来、自分の問題になります。

片田敏孝さん、明日は「命を守る主体性」のお話です。
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パーソナリティ 鈴村健一

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