2019年12月31日

「巨大台風の教訓を活かすために」片田敏孝さん-6-

「巨大台風の教訓を活かすために」。2019年の台風15号・台風19号という2つの大災害から、防災・減災のヒントを探るシリーズです。お話は東京大学特任教授、片田敏孝先生です。

災害時の避難先として挙げられるのが、学校の体育館などの「避難所」ですが、今日はこの「避難所」について考えます。

◆避難所運営は自治体から切り離す
相変わらず避難所は多くの人で埋め尽くされて雑魚寝状態。最近段ボールベッドなども入るようになって多少改善も図られていますが、基本は昭和の初期も平成も令和も、体育館雑魚寝状態というのが変わらないです。多くの人の中で毛布にくるまって…というのは、避難そのものを躊躇することにつながるので避難率にも直結するという問題があります。またそういった避難所の環境の中で関連死が増えている。命に直結する問題がこの避難所の問題だと思います。
避難のすべては基礎自治体、つまり市町村が対応しています。緊急対応をしなければいけない、災害の対応をしなければいけない、住民の命を守らなければいけない、避難所を開設しなければいけない、この全てが混乱の最中、市町村にゆだねられていることに問題があると思います。
例えば、イタリアの避難所はどうなっているか。一家族6人ぐらいが入れるようなテントがずらっと設営されて、仮設ベッド、仮設トイレが設置される。NGOと連動してキッチンカーがやってきて、仮設のレストランを開いて、調理人がちゃんとした食事を提供する。ちゃんと生活ができる。ちゃんと行く気になれる避難所を環境整備しましょうということ。ですから、避難所運営や避難所は基礎自治体から切り離すべきだと思います。県だとか関東中部など広域的な対応をしていかなければいけないと思う。これもずっと言われ続けていることですが、2019号の台風を踏まえた会議では言っていきたいなと思っています。


片田先生は「命からがら逃げる避難」と「一時的に生活を送る避難」を分けて考えるべき、と話してくださいました。長引く避難生活によってせっかく助かった命が避難所生活で失われることのないように。対策が急がれます。

片田敏孝さん、明日は「避難行動3原則」のお話です。

2019年12月31日

「巨大台風の教訓を活かすために」片田敏孝さん-5-

今週のテーマは「巨大台風の教訓を活かすために」。防災・減災のスペシャリスト、東京大学特任教授 片田敏孝先生のインタビューをお届けしています。

各自治体には「災害ハザードマップ」というものがあります。「洪水」「土砂災害」「津波」といった項目別に、浸水区域や災害の危険を記したものです。ところが2019年10月の台風19号ではハザードマップで「警戒区域」に指定されていない地域が土砂災害の被害にあいました。これはどうしてなんでしょうか。

◆土砂災害をハザードマップに示すのは難しい
今回の19号台風を見てみると、雨の降り方がこれまでと違うものだから、とにかく現象が複雑になったという特徴があります。けれども、洪水についてはハザードマップは比較的当たりやすいんです。水というのは低いところに行くから、地域の高低差を見ていれば、おおむね地域のどのあたりが浸かりそうかというのは比較的当たりやすい。しかし土砂災害というのは非常に難しい現象です。急斜面であれば崩れやすいということは誰でもわかります。だから土砂災害のハザードマップというのは傾斜の角度や斜面の高さ、長さに基づいて「警戒区域」「特別警戒区域」というような形でハザードマップに示されます。ところが今回千葉県でも群馬県でも「警戒区域」に指定されていないところで土砂災害が起こるという事態になってしまいました。あまりにも膨大に雨が降ると、水が流れ去る前に山や土に浸みこむという現象が起こる。すると、斜面が緩やかだからこそ浸みこむ量が多くなる。それで、急斜面でなく緩斜面で土砂災害が起こるという事態が頻発してしまいました。そうすると、ハザードマップにも示されないところで今回で言えば千葉や群馬で災害が起こってしまったということです。
そういう面では、ハザードマップは一定の災害の目安にはなりますが、その通りに災害が起こるわけではないということ、基本高いところにあるのは低いところにいずれ落ちてくる。万が一を考えて、「ここならば大丈夫」というところに退避するという災害に対して積極的に向かい合う行動というのが必要なのではないかと思います。


片田先生によると、「洪水」のハザードマップは比較的当たりやすい。一方「津波」と「土砂災害」は現象があまりにも複雑なために当たりにくいとのこと。ハザードマップを確認することは重要ですが、自然災害はそれを上回ってくることもあるということです。
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パーソナリティ 鈴村健一

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