2017年10月3日

10月3日 芥川賞作家 沼田真佑さん?

今朝も、芥川賞作家・沼田真佑さんのインタビューです。


デビュー作の「影裏(えいり)」で、今年7月に芥川賞を受賞。この作品は
舞台が岩手県盛岡市であり、東日本大震災の前後を描いた作品としても話題となりました。

またこの作品は、冒頭から岩手県盛岡の、自然の描写が高い評価を受けました。現在、盛岡在住の沼田さんに、その描写の元になった東北の自然について伺いました。

◆岩手の自然と災害
自然の何が好きかというと、人間関係と違って、たとえば山とかを歩いていると突然鳥が飛んできたり、突然蛇に噛まれそうになったりとか、そういう悪いことだけじゃなくて、いきなりきれいに日が差してきて周りが別世界になったりとか、全部向こうが勝手にやってくれるんです。そういう好みが小説の自然描写の中に出たんだと思うんですね。岩手県内で僕が好きな場所は、八幡平というのがあるんですね。結構、月一くらいで行くんじゃないですか。車で自宅から運転して50分くらいで着きますし、結構行きます。秋はきのこ狩りですね。あとは海の方。海の方でも好きなところがあって、被災した場所でもあるんですが、大船渡とかも好きですね。好きな民宿がありまして、2度ほどお世話になりました。2010年以前に行ったんですが、それ以降は行けなくて。震災後は足を運んでいなくて。どうも僕の中で、行きたい思いがすごくあるんです。それはちょっと変な意味で、ジャーナリスティックな意味で、震災直後にも行きたかったんです。ですから、あれから6年ずっと行きたいんです。行きかけたことも何度もあるんですよ。車で。でも途中で引き返したりして。なぜ行ってないのかと言うと、僕って本当に興味本位な芽が出ちゃうと思うんですね。あちこち見ちゃう、聞いちゃう。宿にも泊まっちゃって。自分のあるんですよね。それは結構自粛しますね、いまだに。今に至るまでその震災のことを意識してしまいますね。


作家、小説家という仕事柄もあって、「興味本位になってしまう」。だから大船渡に行けないと語る沼田さん。「盛岡という、東京とも東北沿岸部とも違う距離感で、震災を書きたかった」と、作品について考えているそうですが、一方で、「三陸の方々が読むと嫌な思いをするのではないか。それが心配です」「ファッショナブルな記号として扱われてしまった、と思われそうで怖いです」とも受賞後のインタビューで語っています。
   
読んだ人の感想として「決してそんな風には想わない。被災地をないがしろにしている感じはない」という声もありますが、一方、芥川賞選考会では「この作品にはは、震災のことなど どこにも書かれていない」と批判する声もあったそうです。これをどう捉えるか。やっぱり興味ある方は読んでみるのがよいかも。

2017年10月2日

10月2日 芥川賞作家 沼田真佑さん?

芥川賞作家・沼田真佑さんのインタビューを数回に分けてお届けします。
デビュー作の「影裏」で、今年7月に芥川賞を受賞。この作品は舞台が岩手県盛岡市であり、東日本大震災の前後を描いた作品としても話題となりました。
実際、沼田さんご自身も、震災が無ければこの作品は無かったと話しています。まずは、その経緯から伺いました。


◆「書かないで済ませていいのか」
東日本大震災の前後は、博多で塾の講師をしていまして、当日はそこの同僚に「大変なことがあったらしいよ」と教えてもらって、両親が盛岡に住んでいたもので、電話をしたんですね。そしたらあまり盛岡自体は被害がないと言うことで安心しましたけれども。その後やっぱりまだ1年ぐらい福岡に僕は住み続けていたんですが、2012年の4月、震災からおよそ1年だって盛岡に移りました。それまでも自分はトレーニングとして、いろんな小説を書いていたんですね。結構無茶苦茶なウェスタンものとか(笑) SFとか書いて遊んでいたんです。自分の中の審判みたいなものが「お前それでいいのか」と。被災した盛岡に身を置いて、プロでもないのだが表現者として向きあおうと思ったんでしょうね。あれを書かないで済ませていいのかというのもありまして。今回こういう影裏という小説がかけたのは、その時代に生きていたから書けたのかなと言うのはあると思います。



あくまで、ご自身が「震災と向き合う」ために書いたという小説「影裏」。会社員の主人公と、「日浅(ひあさ)」という友人の日常から始まり、
震災をきっかけに友人「日浅」の“過去”が明らかになる、というストーリーなのですが、、、震災で沼田さんは、意識的に、伝えようとしたことがあると言います。

◆災害で露呈した人間性を、受け入れられるか
作品の中で、災害を本当に人間性が露呈する、今まで装っていた仮の自分が本当の自分になると言う事は確かに意識して書いたんです。結果その人間の悪い面が、震災を通じて現れたとしても、その悪い人間を受け入れるか受け入れないかという課題として残るわけです。その結果人は受け入れるんですね。それもまた進歩だと思っているんですね。寛容、不寛容とよく言いますが、そもそも人間は不寛容な生き物だと思うんですね。隣に人が座っただけでいらっときたエレベーターで人に乗り合わせただけでくそっと思ったり、かなりあるとかなりあると思うんです、それが結構今どんどん高じてきて、そういった不寛容が試されていると思うんです。ああいう自然災害に関しては。それで、僕の考えですけれども、ああいう自然災害のあとは必ず結束なり、人間は成長するんじゃないかと思っています。


沼田さんはこの物語の設定は「あくまでフィクション」としていますが、読んだスタッフの感想として
「おそらくこういうことも、実際に起きたのだろうなと思わせる内容。また、盛岡という微妙な距離にいたからこそのリアルさがあった」とのこと。

ニュースやドキュメンタリーではなく「純文学」の中の東日本震災。興味ある人は一度、読んでみて、何を感じるかご自身で確認してみては。
明日も沼田さんのインタビューです。
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パーソナリティ 鈴村健一

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