2017年11月24日

11月24日「福島の声を聞こう」木村紀夫さん(5)

今週は、作家の渡辺一枝さんが東京で続けているトークイベント『福島の声を聞こう』から、双葉郡大熊町出身、木村紀夫さんの声をお届けしています。

東日本大震災の津波で、家族3人を亡くした木村さん。特に原発事故の影響により、次女汐凪ちゃんが見つかるまで5年9カ月の歳月がかかりました。
先週このコーナーで紹介した笠井千晶監督のドキュメンタリー映画「Life 生きてゆく」にも、震災以降の木村さんの日々が描きだされています。この映画「Life」の上映会が、先月東京電力の本社で行われ、そこで木村さんは、東電の社長と対面しました。
  
◆企業としてではなく、個人としての意見を聞きたかった
実は10月5日に東京電力で「Life」を上映することになったと監督の笠井さんに話を聞いた瞬間に「上映会に呼んでくれ」とお願いしました。その時に笠井さんと相談して、何を聞きたいかと考えたときに、「企業としてではなく、人としてどう思うのか」ということを聞きたいと。ちょうど前日に原子力規制委員会が柏崎刈羽原発の再稼働がOKとなったばかりで。企業としてはそういう方向に進むのは、自分としては原発はあり得ないと思っているけれど、それにあからさまに反対するつもりはなくて、それを受け入れて生きているのは自分たちで、多くの人がそれに反対していないわけだから。とはいえ、福島がああいう状況の中で、汐凪ももしかしたら原発事故のせいで見殺しにした可能性もあるわけです、という話をしたうえで、刈羽原発を再稼働するというのは、人としてあるんですか?という話をさせてもらった。東電の社長とも社員の方たちともディスカッションする場面はなかったので、最後に社長が挨拶という形で話すにとどまったが、自分もそのとき興奮していてなにを話したのかよく覚えていないが、後日笠井さんとあのときどういう話をしていたかを聴いたら、「電気をつくるのも、命を守ることだ。」と言っていたという。なんかちょっと順番が違うのではと思った。生きている人の命を守るために、かたやうちの汐凪はもしかしたら見殺しにされてしまったのかもしれないし、野ざらしにされたのかもしれない。それで人の命を守る、ということが言えるのか。確かに言われている通り原発はある人達にとっては必要なのかもしれない。でもそれが全てではないと思う。生きるためだけを考えると、そこで電気は必要ないんじゃないの?というところが電気を使わなければ原発を動かすこともないんだから、というふうに感じました。


木村さんは現在長女とともに、長野県白馬村で暮らしていますが、長女も来年度高校を卒業し、家を離れる予定。今後、どのように暮らしていくか、改めて考えているとも話してくださいました。

お話にあったドキュメンタリー映画「Life 生きてゆく」では、昨年12月、ゆうなちゃんが見つかるシーンも記録されています。Lifeの上映情報は、公式Facebookページなどをご覧ください。上映会を開きたいというオファーも受け付けているということです。
★映画「LIFE 生きてゆく」Facebookページ

2017年11月23日

11月23日「福島の声を聞こう」木村紀夫さん(4)

今週は、福島県大熊町出身、木村紀夫さんのお話です。

東日本大震災の津波で、父と妻を亡くし、当時7歳だった次女の汐凪ちゃんは行方不明に。捜索を続けた結果、昨年12月。5年9カ月ぶりに汐凪ちゃんの遺骨の一部が見つかりました。現在は長女とともに、長野県白馬村に暮らしながら故郷の大熊と白馬を行き来する日々です。
そんな木村さんが、いま大熊町で取り組んでいることがあります。
  
◆大熊で採れた菜種油を今後は売りたい。大熊の現状を知ってもらいたい
去年の春から大熊で自分の田んぼと知り合いの田んぼを借りて、菜の花を咲かせてて、咲かせるだけじゃなくて、その菜種油をとってそれを燃料にしてそこに火をつけたら、なんか大熊に繋がるなと。始めて今住んでいる白馬と故郷の大熊が繋がるなと思ったんです。ただやっぱり、放射能の問題があるので、実際に放射線量を測ってみたいということで、今年知り合った専門家にお願いしたところ、放射能はほぼでなかった。食用になるのが国の基準で100ベクレル以下。大熊で原発から3キロの場所で、線量が毎時1〜2マイクロシーベルトぐらいあるところだが、そこでとれた菜種油からはセシウム137が0.016だった。国の基準からすると全然食べられる範囲なんです。最初は燃料にしようと思って測っていたが、それで自分の頭のなかでまたちょっとした欲望が出てきて、だったらこれを食用として売るような形にできないかなと思っていて。なにも隠さず、これは大熊町でとれた菜種油で、原発から3キロのところでとれたもので、線量はこのくらいと明記して、それでもいいよ、という方がいればそれで十分だし、大熊がいまどういう状況にあるのかというのを知ってもらうことにもなる。売れなくてもいい、知ってもらえれば。もちろん売れたほうがいいけど。いろんなところと繋がって、もしかしたら実現するかもしれない、という状況まで来ています。
環境省のほうでも、一回捜索したところは砂利をまかれてアスファルトにするのかどうか。あそこにまだ汐凪がいると思うと、自分としては勘弁してほしい。だったら、来年いっぱいで長女が高校を卒業して家を出るので、福島にいれる時間も長く作れるので、毎日雑草が生えないように畑を耕運しているので。なんとかそのまま、土のままにしておいてほしいと思っています。そっちの理由のほうがでかいですかね、菜の花をやりたいっていうのは。


環境省では、福島県内の除染廃棄物を大熊町と双葉町の中間貯蔵施設に輸送する計画を進めています。中間貯蔵施設建設のための「用地取得」もその一環です。また大熊町は原発事故の影響でいまも全町避難が続いていあます。そんな中、木村さんは「捜索」という名目で大熊町に通っていることから、大熊でのその他の活動や情報発信は、まだまだ限られているというのが現状です。

明日も木村紀夫さんの声をお届けします。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 299 | 300 | 301 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN