2017年11月30日

11月30日 「うみラボ」小松理虔さん(4)

今週は、福島県いわき市で活動する「うみラボ」の代表、小松理虔さんのインタビューです。

「うみラボ」は、福島県沖で獲れる魚の放射線量を民間の手で測定し公表するプロジェクト。いわき市の水族館「アクアマリンふくしま」と共同で、福島県沖で獲れる魚を来場者の目の前でさばいて放射線量を測定する「調(た)べラボ」というイベンも開催しています。

「調べラボ」に参加した女性の感想、そして、「風化と風評被害」に関する、小松理虔さんのインタビューです。

◆参加者の声
「わたしたちはいわきに住んでいますが、当初は不安で福島産以外のものを食べていましたが、放射能検査をしてからじゃないと出回らなくなったので、逆に福島県産のほうが安全かなと食べてました。今回大丈夫だと確信したので、これからまた子どもたちにも食べさせたいなと思います。おいしかったです、身も柔らかいし。子どもたちにも喜んでいたのでよかったです。」

◆風評被害の現状
僕自身、放射能汚染が問題になった原発事故が起きた福島県の漁業や水産業に関わる機会があるが、いま実際僕たちがはそういった生活のなかで暮らしているので、僕たち自身は「風化」したり、震災や原発事故を忘れたりすることはない。が福島から離れたり、例えばこのあいだ韓国に行く機会があって、若い方たちの前で「うみラボ」のデータを公表する機会があったが、冒頭「福島で暮らしていることをどう思うか?」と挙手をお願いしたら、9割の方が「危ないと思う。福島の魚は食べたくない。と手を挙げた。でも、僕たちがこうして自分たちの手で(福島県沖で獲れた魚の放射線量を)測ろうとして、自分たちの暮らしを取り戻そうとしたことにはすごく共感してくれて。1時間くらい話した後には「ぜひ福島に行ってみたい」という方もいて。この間10人くらい来てくれて、福島の食べ物も食べてくれたし、そうやって粘り強く伝えていくことで、風評被害は結果的に緩和されていくものだと思います。

確かにまだまだ全国的なアンケートなどをとると「漠然とした不安がある」とか「病気になったり健康被害を受けるのではないか」と考えている人が県外の人に意外にも多いというデータが出たりすると、風評被害があるんだけれど、それに立ち向かっていくときに、風評被害という言葉を使いたくないというのが僕の本音。風評被害というと、自分たちが原因じゃなくて、わたしたちの情報を受け取ってくれない人たちが悪いんじゃない、という考え方にどうしてもなってしまう。僕たちは頑張っているけど、理解してくれない人が悪い、というふうになってしまうと、相手に期待することになる。それより、自分たちにも変えられることがあるんじゃないか。自分たちを変えるほうが、断然早いと思うので。
まだまだ福島県内を見回すと、これこうしたほうがいいのになとか、こうしたら伝わるのになあともやもやすることが多くて。そういうところを鍛えていくなかで、福島の観光資源に磨きがかけられて、たくさんの方が訪れるなかで、福島の風評被害もなんとなくなくなりましたというのが一番ヘルシーだなと思う。「風評被害をなくすために頑張らなくちゃいけない」という時期は、そろそろ卒業して、僕たちが良い地域をつくったり、いい物産をプロデュースする中で、もっと魅力をつくっていくということを、まさに「うみラボ」の活動をする中で考えさせられます。

小松さん自身、子育て中のお父さんでもあります。子どもたちに福島の魚を食べさせていいのか、そんな素朴な疑問から始まった福島の海や魚とのつながりが、
いま「福島の漁業」や「故郷の未来」を考えるところまで、広がってきたと言います。大切なのは、目を背けず、知ろうとすること。そして考えること。

「うみラボ」ではいまも、福島第一原発の沖合の魚の放射線量を測る活動を継続中です。また「アクアマリンふくしま」で行われている「調べラボ」は、毎月第3日曜日の開催です。興味のある方は「うみラボ」のオフィシャルサイトをチェックしてください。

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福島、原発沖の海の現状と、小松さんの取り組み、あなたはどう感じましたか?
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2017年11月29日

11月29日 「うみラボ」小松理虔さん(3)

今週は、福島県いわき市で活動する「うみラボ」の代表、小松理虔さんのインタビューをお届けしています。

「うみラボ」は、福島県沖で獲れる魚の放射線量を民間の手で測定し、公表するプロジェクトです。福島県沖ではいまも漁業の試験操業が続いています。出荷制限がかかる魚種は10種にまで減りましたが、漁師が漁にでるのは、週2日から3日。そこには、原発事故の賠償や福島の魚の流通など、複雑な要素が絡み合っています。小松さんに、福島の漁業のこれからの課題について伺いました。

◆福島の漁業を再生することが、日本の漁業を再生すること
これからの課題。福島の魚が安全になってきたことはデータ上わかってきたが、福島の魚はまだ店頭にならんでいない。それがいちばんの問題になってきています。僕らも自治体も国も、福島の魚をどんどん食べてもらいたいが、原発事故に対する倍賞の問題と漁師の漁の回数の問題はとてもセンシティブな問題。僕らが福島の魚を出しても、こんな風に受け入れられるよというエールを送ることが、漁師の人たちのモチベーションに繋がるんじゃないかと思う。漁師の人たちが、「これなら漁の回数を増やしても値段もちゃんととれるし、前のような漁ができるんじゃないか」と思わないと、やっぱり漁師の方たちも不安になってしまうと思う。うみラボのメンバーとよく話をするのは、面白い商品を開発するとか、もっと食べられるイベントを開催するとか、率直にいうとビジネスの後押しができるようなものをやっていくとか。より地域づくりに積極的に参加することが求められると感じています。

実は震災前、福島の漁業というのは好調ではなく、魚価が下がる中で量をとらないと売り上げが回復できないので量を取ろうとすると、魚は有限なので獲れば獲るほど魚が小さくなって、また魚価が下がる。そうすると魚の卸しや加工をしていた人が商売をやめてしまう。そうすると水揚げ量も減ってしまう。船主が福島に水揚げするメリットを感じなくなって、気仙沼や銚子や千葉や宮城に水揚げしてしまうことになると、いざ僕らが復活したいな、もっとやりたいなと思っても、船主にとって福島という土地の魅力的でなくなってしまう。そうなると、漁師の人も「安全だから本操業に戻せばいい」というふうにならない。戻っても衰退が目に見えているから。
いま日本の漁業も各地で魚を獲り過ぎたり、気候変動でかつての水揚げ量を確保できないところが増えている中で、実は全国で一番漁業資源が回復しているのが、福島の海。福島の漁業を再生することが、日本の漁業を再生することと直結する問題。なので、持続性のある漁業の形をみんなで考えていく、そこがあって、福島の漁師が「よし、倍賞なんてもらわずに、昔みたいに魚を獲ってもみんなが買い支えてくれて、子どもや孫に漁が継がせることができるんだ。」と思えて、始めて僕は福島の漁業の復興だと思っているんです。


このような問題を抱える中、福島の漁師が海に戻る大きな後押しになるのではないかと、小松さんはサンプル検査を続け、安全が確認されたおいしい福島の魚をいかに流通に乗せ食卓に運ぶかを考えています。

『LOVE&HOPE』、明日も小松理虔さんのインタビュー、お届けします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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