2018年1月16日

1月16日 やさしい日本語(2)

引き続き、災害が起きた時の外国人の方とのコミュニケーション方法としての「やさしい日本語」についてお伝えします。

日本在住およそ250万人の外国人。そしてまもなく年間3000万人を超えるといわれる訪日外国人。災害が起きた時、こうした方々と意思の疎通を図れることが、重要な時代になりました。そこで考案されたのが「やさしい日本語」です。例えば・・・避難してください、ではなくて、「あっちに逃げよう」 と言い換えるなど、やさしい日本語でコミュニケーションを取ろうという動きが、全国的に広まっています。

とはいえ、本当にやさしい日本語が外国人の方に通用するのか。カタコトでも、英語で語り掛けた方が可能性はあるのではないかと思う方がいるかもしれません。「やさしい日本語」の普及に取り組むNPO「多文化共生リソースセンター東海」の
土井佳彦さんに伺いました。


◆英語が母国語とは限らない
(※聞き手:高橋万里恵)
ーーーー自分の知っている英語を絞り出して、でもうまく伝わらないこともたくさんあると思うんですが、そもそも日本語って伝わるものですか。

例えば日本に暮らしている外国人の方であれば、むしろ英語よりも日本語の方が自分はどちらかというとわかるという人も大勢いらっしゃると聞いています。国立国語研究所が出した調査結果によると日本に暮らしている外国人で英語ができる人は44%くらい。日本語ができる人は62〜63%という結果もあって、結構日本語ができる人が多いと言われています。直近の数字だと日本在住の外国人の数は247万人で、出身の国・地域の数では大体194カ国なのですが、そのうち英語がネイティブの人は1%くらいです。母国語が英語ですという人はそのぐらいなんですね。そうするとやっぱり誰もが、英語が完璧にわかるわけではなく、“そこそこわかる”程度。極端な話、カタコトの英語なら伝わる。ならば同じようにカタコトの日本語も伝わる。ということでやさしい日本語だったり、やさしい英語がとても大きなコミニケーションツールになると思います。

ーーーー私たちが日本語で伝える時、これなら伝わるだろうと勘違いしている言葉もたくさんありそうですね。

何気なく使っている日本語が相手にとってわかりにくいという事はよくあります。例えば、あるブラジル人のお母さんが教えてくれたんですが、子どもが学校に通っていて、お腹が痛くて学校休みたいというので、学校の先生に電話をしたそうなんです。担任の先生に「子どもがお腹が痛いから休みます」と伝えたら先生は、「腹痛で欠席ですね」と言ったんです。「腹痛じゃないんです、お腹が痛いんです。欠席じゃなくて休みます」。お母さんはそう言ったそうです。意味は同じですよね。こちらはお腹が痛いと言っているのに先生は「腹痛」と返してくる。普段の仕事や生活で使っている言葉が違うので、こっちは普通に喋っているつもりなんだけど相手にとっては難しいなんて事はいろんな場面であるんだろうなと思います。

ーーーー先ほどやさしい日本語の言い換え例の表を見てなるほどと思ったのは、私たちはクルマのエンジンを「切る」と言いますが、切る、では伝わらないんですよね。エンジンを止めてくださいと言わないと伝わらないんだというのが、なるほどなと思いました。

そうですね。「切る」という言葉には、ハサミでものを切る、縁を切るなどの意味で使います。できればあまりそういうたくさんの意味を持たない言葉を使うほうがよいですね。

一方、これが、漢字圏の国、中国や台湾の方の場合はまた違います。筆談など文字で伝える場合は、漢字で書いてあげる方が伝わりやすいそうです。「高台に避難」も漢字圏の人なら理解できることが多いと言います。逆にひらがなだと、中国・台湾の方は、なかなか理解するのは難しい。確かに言われてみればそうですね。つまり、相手によって、伝わる方法を色々と、言葉を変えて何度も語り掛けてあげるのが「やさしさ」ということなんですね。あしたも「やさしい日本語」についてお伝えします。

★多文化共生リソースセンター東海のサイト

2018年1月15日

1月15日 やさしい日本語(1)

今週は、コミュニケーションによる、「防災・減災」に関する情報です。

例えば、地震や大規模な火災など、大きな災害が発生したとします。あなたは避難所へ行こうと考えました。すると、最近、ご近所でよく見かける外国人の方が、路上でどうしていいかわからず困っていました。国籍は分かりません。さて、あなたは何語で語り掛けますか?

いかがでしょう。
「とにかく手を引っ張って避難所へ連れていく」などの方法もありますが、答えの一つとしていま注目されているのが実は日本語なんです。正しくは「やさしい日本語」と呼ばれているもの。これ、すでに全国的に普及活動が進んでいます。どういうものなのか。「やさしい日本語」の普及に取り組むNPO「多文化共生リソースセンター東海」の土井佳彦(よしひこ)さんに伺いました。



◆阪神淡路大震災を教訓に生まれた「やさしい日本語」
(※聞き手:高橋万里恵)
ーーーやさしい日本語は、災害がきっかけで開発されたものと聞きましたが。

今から22年半前になりますが、阪神淡路大震災が起きたのを覚えていらっしゃると思うんですね。この当時、兵庫県内には10万人ぐらいの外国人の方が住んでらっしゃったんです。100カ国くらいのたくさんの方が住んでいたんですが、この時日本社会には災害が起きたときに外国人の人にいろんな国の言葉で情報提供するというのが考えとしてなかったんです。それで、ボランティアの人たちが中心となって、英語ができる人や中国語ができる人がサポートをしていたんですけど、どうやったって追いつかない。その中で、当時アメリカではプレーンイングリッシュ(平易な英語)を使って、アメリカ国内に大勢いる移民の方や中学生でもわかる簡単な英語でコミュニケーションをとろうという動きが既にあったんです。それを日本の研究者が見つけて、プレーンイングリッシュがあるのならプレーンジャパニーズ、つまりやさしい日本語というもの考えてみようという動きが始まりました。普段もそうなんですが、災害の時は特殊な言葉をよく使ったりしますよね。外国人だけじゃなくて子どもやや高齢者、いろんな人にわかりやすい日本語を使っていこうというのが、阪神淡路大震災をきっかけに生まれたと聞いています。

ーーー実際、阪神淡路大震災や東日本大震災などで外国の方がうまく情報を得ることができなかったケースが多かったんですか。

災害の時に初めて聞く言葉があります。例えば「避難」、「炊き出しをする」。外国人の方は、なんだろう?と思うわけですよね。私が実際に被災した外国人の方から聞いたのは、自分の町が被災してできるだけ遠くに行こうと思って駅に行ったら、ラジオで「電車は“ふつう”です」と言っていた。普通だったら大丈夫だと思って駅に行ったら、電車が動いていない。普通じゃなかったの? と思ったと。彼らにとって「ふつう」というのはノーマル、普通という意味で理解していますが、ここで言う”ふつう“は「不通」、つまり動いていないという意味ですよね。同じ言い方なんだけれども意味が違うということで戸惑ったという話は阪神淡路大震災の時にもあったそうですし、熊本地震の時にも同じことが地元の新聞に掲載されていました。

ーーー例えば「逃げてください」などを伝えたい時に、やさしい日本語は有効?

やさしい日本語のコンセプトとして、やさしさと言うのは相手によって変わるというのがあります。例えば「避難してください」と言って分りましたと逃げる外国人もいます。でも、言ってもわからない場合は、「逃げてください」とか別の言い方をしてみる。そうするとわかるかもしれない、というふうにいろいろ言い方を変えていこうと言う事なんですね。言葉で行ってわからなかったら手を引っ張ってでも逃げるという気持ちを持ってもらったほうが良いかと思います。


例えば「避難」ではなく「あっちに逃げよう」、「炊き出し」ではなく「ごはんがあるよ」。
私たち日本人の多くは英語は「かたこと」しか話せませんが、「やさしい日本語」は上手に話せます。それなら無理に得意でない英語を使うより、やさしい日本語のほうが良い場合が多いということなんですね。ちなみに、日本在住の外国人はおよそ250万人いますが、英語がネイティブの人の割合はどのくらいかというとたった「1%」です。つまり日本在住外国人との共通言語は、英語ではなく「やさしい日本語」の場合が多いことになります。

あしたも「やさしい日本語」についてお伝えします。

★多文化共生リソースセンター東海のサイト
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パーソナリティ 鈴村健一

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