2018年1月31日

1月31日 ふたば未来学園(3)

今週は、福島県立「ふたば未来学園」からのレポートです。

原発事故の影響で避難と休校を余儀なくされた双葉郡の5つの高校の受け皿として、2015年に開校。この春、一期生およそ150人が卒業します。学校が目指したのは、知識の詰め込みではなく「答えが出せない問題に自ら取り組む力」を育てること。
「ふたば未来学園」一期生の古市香菜子さんは、授業で福島の風評被害や風化について学びました。

◆どうイメージを払拭していくかということに切り替えて
ふたば未来学園高校3年、楢葉出身の古市香菜子と申します。学校で行われている「未来創造探求」という授業ではいくつかの班に分かれて、福島の現状や課題をどう解決していくかという授業。わたしはそこで、SNSなどでの福島のイメージを自分たちで模索して、悪いイメージをどう変えていくかなど、生徒自身で話し合ってツイッターのアカウントをつくって、自分たちの日常を配信していくということをしました。最初は根拠のない噂や誹謗中傷がありましたが、その現状はもうどうしようもないから、その現状からどうイメージを払拭していくかということに切り替えて、一年から二年にかけてその活動を行いました。最近のエゴサーチでは否定的な意見より肯定的な意見に変わったので、自分たちがやっていることは社会に対する影響が大きいんだなと感じました。


震災当初、古市さんは町役場で働く父親が、避難者への対応で板挟みになっていることに違和感を抱いていました。「同じ被災者なのに、なぜ父が責められなければならないの?」そして、古市さんはいろいろ考えたうえでいわき市内の進学校ではなく、ここ「ふたば未来学園」への進学を選びました。
「自分たちの手で、ふるさとの未来を切り拓きたい。」その想いが、古市さんの背中を押しました。

◆復興していることをしっかり認識してほしい
わたしは避難してわかったことだが、楢葉が住みやすい町だったということと、この学校の一期生ということで、自分たちで一から復興に携わる学校をつくっていけるということに魅力を感じて、この学校を選びました。勉強はもちろんですが、海外研修で学んだことが多い。NYにいって、福島の原発の話をしたときに「原発事故ってあったの?」と言われて、「あ、こんなにも知られていないんだ」と思って。福島の原発事故のことは世界中の人が知っているのが当たり前だと思っていたのが、ちゃんと一から知ってもらわなきゃいけないんだな、と感じました。伝えるということも、震災があったことを伝えるのは大切だけど、そこから福島がさまざまな復興活動など行っているので、復興しているんだよということをしっかり認識してほしい。原発事故とかがあって、「かわいそうだね」というイメージを持たれると思うが、原発事故にくっせず様々な活動を行っている人もいるので、そういうこともちゃんと知ってほしいと思います。


古市さんはタイやアメリカでの海外研修で語学を学んだり、現地の学生との交流を経験しました。
「福島のことを伝えるにはどうしたらいいと思う?」と質問すると、「経験したこと、ありのままの情報は相手にちゃんと伝わる。発信し続けていくしかない。」と答えてくれました。4月からは東京の大学に進学することが決まっています!

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今週お送りしている福島の現状、そして「ふたば未来学園」の取り組みについて、あなたからの感想もお待ちしています。住所・氏名・連絡先を明記の上メッセージフォームからお送りください。抽選で5名の方に、3000円分の図書カードをプレゼントします。

2018年1月30日

1月30日 ふたば未来学園(2)

今週は、福島県立「ふたば未来学園」からのレポートです。
福島県双葉郡広野町にある「ふたば未来学園」。原発事故の影響で避難と休校を余儀なくされた双葉郡5つの高校の受け皿として、2015年に開校しました。双葉郡出身の生徒たちは、それぞれ避難や仮設での生活を経験。学校近くの寮で高校生活を送る生徒も多くいます。そして一期生およそ150人が、この春卒業を迎えます。

開校から3年。副校長の南郷市兵さんは子どもたちが持つ可能性に、日々驚かされたと言います。

◆世界の課題を解決できる力が育っている
すごいなと思ったのは、授業でも演劇をやりましたけど、それにすごく可能性を感じたのか演劇部が途中で立ち会がって、自分たちの被災体験を親にも言えなかったことを語り合って、実話をもとにした舞台を作り、県でも優秀賞をとって東京にも公演をしにいきました。そのうちの一部のメンバーとその後うちの学校の研修でアメリカに行く機会があって、難民の問題を世界中の生徒たちと議論する機会があって。その中で英語力はそこまでなかったかもしれないけど、ある子は涙を流しながら、自分の避難体験とシリア難民のふるさとを追われているという状況を重ね合わせて、その方々のためにいま自分たちはなにをしなければならないかを話し合ったりして。僕たち学校をつくったときに、福島の課題だけでなく、世界の課題を解決できる力を育てたいと思い描いてはいましたが、実際に子どもたちがそれを切り開いていった姿に本当に驚きました。その視点が学校全体に共有されて、学校の思想というか、福島が世界に果たしていくべき役割の思想にもなっています。それは教員が作ったものではなく、子どもたちが地域や世界でプロジェクトをやる中で見出してきたもの。「ふたば未来学園」の伝統が確実に作られていると思います。


そんな生徒たちの取り組み、世界へ発信してきたことなどを報告するため2月10日(土)、東京・渋谷の「国連大学」で行われるイベント「アップデイトふくしま」に南郷先生も参加します。

◆この7年でアップデイトしていること
今度2月10日東京で「アップデイトふくしま」というイベントに登壇させていただく。いま福島から発信されている情報は、わたし個人的な受け止めとしては「風評払拭」とか「福島のいまを伝えたい」という話が非常に多いと思っています。でもふたば未来学園の生徒たちがいま考えていること、福島で(さまざまなことを)経験したからこそ、世界の難民問題にいまこう立ち向かいたい、であるとか、エネルギー問題にこう向き合いたいという、福島から新しい社会を作っていく「芽」というものが、日本や社会をアップデイトしていくという気持ちとか行動が、若者の中からでてきているんだということを、ぜひ伝えたい。たぶん彼らは7年前に思ったことを、忘れるのではなく、心の奥底に持ちながら、考えをアップデイトし続けていると思うので、そんな生徒たちの姿を東京で皆さんにお伝えできたらなと思っています。


2月10日(土)、東京・渋谷区の「国連大学」で行われる「アップデイトふくしま」は福島のいまと課題を知るためのパネルディスカッションで、高橋万里恵さんも司会を務めます。現在、ウェブサイトで参加者を募集しています。

「アップデイトふくしま」詳しくはコチラから
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パーソナリティ 鈴村健一

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