2018年2月15日

2月15日 我妻和樹監督「願いと揺らぎ」2

引き続き、東京・東中野の映画館などでまもなく公開がはじまる、映画『願いと揺らぎ』の我妻和樹監督のインタビューです。

宮城県南三陸町、戸倉(とくら)半島の北側にある小さな漁村「波伝谷(はでんや)」で行われる獅子舞。地域の人々の心をつなげてきたこの伝統文化に関心を持ち、我妻監督は震災前から、波伝谷の人々にカメラを向けてきました。そして、東日本大震災から1年後の2012年を中心に、被災後の集落の人々の姿を切りとった映画が「願いと揺らぎ」です。このタイトルには、こんな想いが込められています。

◆「願いと揺らぎ」
タイトル「願いと揺らぎ」、被災して震災前の暮らしと何もかも状況が変わってしまった中で、震災から1年後というのはある程度落ち着きを取り戻してきた時期というか全然先行きは見えないんですけれども、震災前の自分たちの本来の生活に思いを馳せるようになっていた時期だと思うんですね。その中で地域の、全戸全世帯が関わる象徴的な1番大切にされてきた獅子舞を復活させようということで、本来の自分たちの姿を取り戻そうと。震災で人間関係もいろんな歪みがあって、住んでいるところもバラバラになっちゃって、実際には思うように進まない中での心の揺れ動きやすれ違いを描いているんですね。じゃあ誰がそれを引っ張っていくのが、高台にまとまって家を建てて、元々あった自治組織も震災の後に立ち行かなくなっちゃっているわけですよね。だからみんな考えていることは同じはずなのに、1つの結果に向かっていかないというか。あの当時、被災地のいろんなところで地域で大切にしてきた伝統行事が復活したと言うニュースが流れたと思うんですけれども、それって復興を加速させる素晴らしいニュースとして取り上げられたと思うんですけれども、その裏には地元の人たちのいろいろな苦悩や葛藤があったと思うんです。大切なものだけにみんなそれぞれいろんな思いを持っているわけじゃないですか。思いがあるからこそ一筋縄ではいかない。最終的には(獅子舞は)復活するんですけれども。「願いと揺らぎ」はラストが現代なんです。高台に家が立って自分たちが歩んできた道を振り返る形なんですけれども、当時は納得いかなかったことや押し込めてしまった思いが現在になって整理できてくるというか、要はそれがよかったのかよくなかったのかという事は、その時点では誰も決められないことで、長い時間が経ってようやくあの時のことを振り返ることができて、その時に初めて意味がつけられると思うんですね。願いと揺らぎはそういう映画です。



この映画では、震災でバラバラになった地域を一つにするため「獅子舞」を復活させようとするのですが、周りからの支援を受けず、自分たちの力でやり遂げたいという若者がいたり、様々な思惑で、人々がうまくまとまらない様子が出てきます。我妻監督が言うように、震災後の東北では、同じような混乱・戸惑い・・・「揺らぎ」があったのかもしれない。そう気づかされる映画となっています。

映画「願いと揺らぎ」は、東京・東中野「ポレポレ東中野」で2月24日(土)から公開。全国でも順次公開が始まるということです。
詳しくは「願いと揺らぎ」公式サイトをご覧ください。

あしたも、我妻監督のインタビュー、お届けします。

2018年2月14日

2月14日 我妻和樹監督「願いと揺らぎ」1

今朝は、まもなく、東京・東中野の映画館などで公開がはじまる、一本の映画についてお伝えします。映画のタイトルは、『願いと揺らぎ』。
宮城県南三陸町戸倉半島の北側にある小さな集落「波伝谷(はでんや)」を舞台にしたドキュメンタリーです。

この映画を撮影したのは、我妻和樹監督(32)。漁業や、古くからの伝統・文化とともに生きる、波伝谷の人々に関心を持ち、震災前からカメラを向けてきた方です。我妻監督ご自身は、宮城県でも内陸部にある、白石市出身。距離も離れた、沿岸部の波伝谷と関わることになったきっかけを伺いました。

◆小さな漁村の「営み」を知りたかった
波伝谷との出会い自体はたまたま、学生の時に大学のフィールドワークで地域の暮らしをまとめて本にするというプロジェクトに参加したのが2005年の3月12日の事なんですね。震災の6年前です。そこで今回の「願いと揺らぎ」という映画のモチーフにもなっているお獅子さま、南三陸町の無形民俗文化財に文化財に登録されている春祈祷という行事なんですけれども、獅子舞が地域の全戸を回って悪魔払い、いわゆる厄を払う行事なんですが、初めて波伝谷に行った時にその行事を目の当たりにしてすごく衝撃を受けまして、それから先、学生として3年間フィールドワークで入り続けて、大学を卒業してからまた3年間、今度は個人でドキュメンタリー映画の撮影を始めて、震災を経て、震災後も撮影を続けてずっと関わり続けて今に至るという流れです。


ということで、大学時代に民俗学を学んでいた我妻監督は、波伝谷の「お獅子さま(おすすさま)」・・・いわゆる獅子舞の文化と、その背景にある集落の営みを撮影。東日本大震災の「前の波伝谷」を記録した映画を2015年に発表しています。

そして今度は、震災後も波伝谷に通い撮り続けた映像を中心に、被災地に生きる人々の姿を伝えようとしています。それが映画 「願いと揺らぎ」です。

◆震災前を記録したからこそ伝わること
今回の作品に関しては、メインで使っているのは2012年時点の映像なんですね。僕が波伝谷との出会いになった獅子舞の行事を復活させようということで、動き出すんですけれども、全然足並みが揃わない。いろんな課題に直面してみんな価値観や考えがバラバラで、願いは同じなんですけれどもうまくいかない、すれ違いを描いているんです。そこに震災前の2005年から撮影してきた映像を織り込みつつ、ラストは2016年の12月なんですけれども、ラストで当時の自分たちの混乱や葛藤を高台に家を建ててようやく改めて振り返ることができるようになったタイミングで、振り返ると言う形になっています。12年という時間をそこに凝縮させているという感じになります。震災前からずっと1つの地域の営みを追いかけているわけで、震災に関するドキュメンタリーは「震災後」に作られたものがほとんどです。震災前から撮影していた僕の映画の1つの大きな特徴だと思うのは、もともとそこに生きている人たちの営みに目を向けているというところから、始まっていること。
だからこそ震災が1つの土地の歴史の中でどんな意味を持っていたのかという意味でとらえることができると思うんですね。


映画「願いと揺らぎ」は、東京・東中野「ポレポレ東中野」で2月24日(土)から公開。全国でも順次公開が始まるということです。
詳しくは「願いと揺らぎ」公式サイトをご覧ください。

中西 (※一言)
あしたも、我妻監督のインタビュー、お届けします。以上、LOVE&HOPEでした。


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パーソナリティ 鈴村健一

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