2018年5月18日

5月18日 方言消滅の危機(2)

引き続き、消滅の危機にあるという日本各地の『方言』の問題です。

沖縄や奄美の古くからの言葉、北海道のアイヌ語、さらに東京都・八丈島の八丈語。日本でずっと使われきた、これらの言葉が、いま「消滅の危機にある」と指摘されています。言葉が失われるということは、その言葉で語られていた“文化”も消えること。調査が行われていないだけで、他にも消滅リスクのある方言はかなりあると考えられています。

そして近年、新たに指摘されているのが東日本大震災の影響を受けた地域の方言です。

日本で消滅の危機にある「方言」の調査研究を実施している文化庁国語課 国語調査官の鈴木仁也さんに伺いました。

◆震災が方言におよぼした影響
東北の場合は、もともと全般的に方言自体、最近耳にしなかったと言う声はかなり聞いていたんですが、やはり東日本大震災が非常に大きな影響与えていると考えています。東日本大震災では高齢の方がかなり亡くなっており、話者が減少しています。それから震災でその地域から離れる方がいらっしゃいましたが、若い世代が離れていき、年配の方は元の土地に戻る傾向がある。つまり「担い手」「受け手」が減っていく状況。震災が仮になかったとしてもある程度、方言が失われつつある中で震災が起きたことで話者が減り、それを受け継ぐ若い世代が土地から離れ継承者がいなくなる状況があったと思います。

やはり津波の被害が非常に大きかった岩手の三陸の沿岸部はかなりその影響があります。私自身がいくつか行ったところでは岩手県大槌町。若い世代が戻ってくるまで時間がかかるので、伝える場がなかなか無い。あのあたりは南部弁が話されている。昔の南部藩の言葉。仙台に伊達藩があり、北側・太平洋側が南部藩。青森県はですとその南部藩に対して日本海よりが津軽藩です。だから青森県は津軽藩と南部藩が一緒になっていて、(青森県)八戸あたりから(岩手県)釜石あたりまでが南部藩と呼ばれる地域です。実際に釜石と八戸の「語り」をやっている方の交流が震災のあとに出来まして、相互にそれぞれの話を語り合うと、かなり「わかる」ようなんです。釜石の人の話を八戸の人が聞いても分かる部分がかなりある。それはやっぱり根がおんなじという部分があると思います。それともう一つはやはり福島の原発の影響の大きい時期ですね。楢葉町などのあたりは徐々に帰還する方がいらっしゃいますけれども、多くの場合は年配の方で、方言はだいぶ危険な状況にあると考えられます。


来週も、この「日本の方言」をめぐる問題と、その対策についてお伝えしていきます。

2018年5月17日

5月17日 方言消滅の危機(1)

きょうは「ことば」をめぐり、東北だけでなく日本の各地で起きている問題を考えます。
いま、私達が使っている「日本語」に関する大きな問題、方言消滅危機です。

日本には、たくさんの「方言」がありますが、いま、その話者がいなくなる危機があるのをご存知ですか。

日本で、消滅の危機にある「方言」の調査研究を実施している文化庁国語課 国語調査官の鈴木仁也さんに伺いました。

◆消滅の危機にある8つの言語
ユネスコが2001年に「言語の体力測定」という尺度を示しました。いま言語がどのぐらい広く使われているか、それがどう継承されているか。それに基づいて、次につながっていかない状況にあるものが「消滅の危機にある危機的な言語」。ユネスコは、世界6,000言語の半分近くが消滅の危機にあると、2009年当時に発表しています。消滅の危機に陥る原因として一番大きいのは植民地支配などで現地の言葉を使わせない、自分達の支配下に置きたいから教育や何かを通して言語を学ばせちゃうわけです。日本も大陸に進出した時に日本語を教えていた歴史があります。国内で言えば日本語は多くの方が使っているんですが、「方言と共通語」の問題があり、方言の話者の減少ということになるわけです。そこに気づき出したことで「消滅の危機にある言語」が問題だ、となってきたわけです。それぞれの言語、方言もそうですけれど、その地域だからこそ捉えている、“モノの捉え方”がある。その言葉がなくなればその“捉え方”自体も、表現の仕方が無くなり文化が失われていく。伝統行事の言葉は大体その地域の言葉ですから、伝えられてきた文言の意味がどんどんわからなくなってくると、形だけやっているけど本来の趣旨がよくわからないということが起きてしまうことがあり得る。

ユネスコが2009年に発表したデータでは、日本の国内では8つ、消滅の危機にあると結果が出ています。1つは日本語とは全く違う言語ですけれども北海道を中心としたアイヌ語、これが非常に危機的な状況にある。危機の深刻度では最も高い。それ以外は八丈島の八丈語、奄美大島の奄美語、沖縄本島北部、与論、沖永良部を中心とした国頭語、沖縄の那覇、南部を中心とした沖縄語。それから宮古島を中心とした宮古語、石垣島の八重山語、そして与那国の与那国語の8つ。まだ同じ尺度で例えば鹿児島の甑島を調べてみると与那国と同じ危険度だというデータも出ました。さらには東日本大震災の被災地である岩手県の三陸地方も方言も、危機の状況であるという結果が出ているんですね。ですからそこ以外でも、もし同じ基準で調べてみれば、まだ消滅の危機にあるという結果がでるところは、可能性としてあると考えています。


明日以降も、この「日本の方言」をめぐる問題、対策をお伝えしていきます。
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パーソナリティ 鈴村健一

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