2020年1月28日

宮城県雄勝町の 「御留石」2

引き続き、宮城県石巻市雄勝町(おがつちょう)からのレポートです。

書道用具の硯の材料となる、質の高い石が採れることで「硯の生産地」として数百年の歴史を持つ、雄勝町。

ただ、東日本大震災をきっかけに廃業してしまった職人さんも多く、時代の流れもあり、この土地の硯文化は、担い手不足の問題を抱えています。雄勝で硯の製造・販売を営む、やなせ留山堂の簗瀬隆夫さんのお話です。

◆書道文化の衰退
もう最盛期には300人から400人、500人ぐらいいましたかね。ここの硯石に携わっている人たちは。今いるのは40代、50代が数名ですね。あとは、今年若くて学校出たての人たちが2人入ってきました。今、書道を教えていただく先生がいらっしゃる学校は書道の授業もやってはいるんですけど、書道を教える先生がいなくなってしまったんですよ。いちど書道というものを学校教育で廃止になりましたので、今は、書道の塾の先生が学校に教えていたり、そういう文化を継承していかなきゃいけないという学校は授業の中に組み入れてやっていますけど、書道文化が衰退していってしまっているというのが現状ですね。



これは伝統産業全般にかかわる問題ですが、雄勝の場合、昨年の春に若いすずり職人が2人入ってきた。これは明るい話題の一つです。

ただ、一方で、雄勝は別の問題があります。特に質の高い石が採れる「御留山」をめぐる問題です。

◆復興事業の犠牲に・・・?
この(石を)取っているこの上が道路になるんですよ。できるというより「作りたい」と。それで、大体道路の高さが20メートルの高さで、作っていくと言うから、そうすると向こうの平らな所もほとんど、のり面のあれで埋められて道路になっちゃう。埋蔵量も近い400メートルまであるが、ここに石が見えてるのはほんの一部なんですね。そういう貴重な所が道路になって、一切硯石が取れなくなる。


雄勝では、復興事業の一環で、御留山に国道が通る計画が進んでおり、石が採れなくなってしまう可能性が高いそうです。この状況を受け柳瀬さんは、反対の立場をとりつつ、御留山から硯用の石を確保するため、少しずつ採石を続けているんですが、これについては明日以降、より詳しくお伝えします。

2020年1月27日

宮城県雄勝町の 「御留石」1

今朝は、宮城県石巻市雄勝町からのレポートです。

雄勝町。宮城の北東部。太平洋に突き出たリアスの半島にある町です。実はこのあたりは、数百年前から「硯(すずり)」の産地として知られています。


とくに今回取材した「御留山(おとめやま)」という場所は、大変貴重な硯の材料が取れる場所。下の写真はその場所で硯用の石を、昔ながらの手作業で山から切り出す様子です。


雄勝で硯の製造・販売を営む、やなせ留山堂の簗瀬隆夫さんのお話です。

◆伊達政宗公「お墨付き」の硯
雄勝は硯の生産量が、昔から全国の90%を生産していまして、その中でも御留石というのがこの地域でも一番硯に向いた良い石だということで硯産業を支えてきたんですね。室町時代からこの山の歴史が始まるんですが、江戸時代、伊達藩がこの山から良い硯が取れるということで一般の人たちが採石することを止めた(禁止した)んですね。そのことで御留山という名前がついて、ここの石は伊達藩で使用するもの、それからよその藩への贈答用として送ったんですね。ここにわざわざ番所もおいたんですよ。それぐらい厳しく取り締まって山を保護してきた歴史があるんですね。やっぱり石の品質が良いから、墨の「降り」が良い、墨が細かく降りる、私もいろいろな産地の墨をすってみて、墨色がきれいに出ますので、書の書き方、ただ墨が黒くなれば良いと言うのではなく、にじみを出して文字を書くとか、良い墨の降り方をすれば、いろいろな書の書き方、方法がある。だから多分この石は貴重な石だと昔から言われていたんですね。


雄勝は全国の硯の9割を生産・・・つまり、みなさんが小学生の頃、習字の時間に使ったあの四角い硯、実は、雄勝産のものなんです。 この事実はあまり知られていないかもしれません。

そして、硯で墨をすることを「墨が降りる」と言うのですが、雄勝の硯は、「良い墨が降りる」ことで有名。特にこの「御留石」は、伊達政宗の“お墨付き”の硯石だったほど。ただ、その御留石をはじめ、雄勝の硯文化はいま、危機にひんしています。これについては明日以降お伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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