2018年5月24日

5月24日 方言消滅の危機(6)

消滅の危機にあるという日本各地の『方言』 の問題、お伝えしています。

沖縄の言葉やアイヌ語だけでなく、東日本大震災の影響で、岩手、三陸、福島の方言が消滅危機にあるということをお伝えしてきていますが、こうした状況を受けて、国や自治体、そして大学の研究者の間でさまざまな取組が行われています。先日は、東京都内で、岩手大学、琉球大学、立命館大学などの研究者による研究報告会も行われました。


震災が方言におよぼした影響を調査されている、岩手大学の大野眞男(まきお)教授に被災地で、方言が人々の「力」になったケースについて伺いました。

◆「がんばろう」よりも「がんばっぺし」
※聞き手:ケリー・アン
(ニュースの報道などで被災者インタビューをするときに、なるべく標準語を使おうという意識のなかで自分の経験を話してくださるんですけど、それは逆に被災者に負担になるというのはそうなんですか)
私が見る限りでは、自分の気持ちを共通語で説明できるだろうかということにもどかしさを感じている気がします。やっぱりストレートに気持ちを言おうとしたらお年寄りの場合は間違いなく方言を使うことになる。津波で被災した直後に「なじょにかすっぺし陸前高田」とか「がんばっぺし釜石」とか。地域の外の人がそういうメッセージを与えたんじゃないんですよね。震災の瓦礫の中で自然発生的にペンキで殴り書きされたような、自分たちの中で生まれた仲間内のメッセージだと思う。共通語で「がんばろう」でもいいんだけれども、それでは表せないような気持ちが、「がんばっぺし」「なじょにかすっぺし」という言葉で、自分たちの言葉を使うことで自分たち同士で共有できているんだということを感じます。


方言にはこういう「力」があります。だからこそ方言を見直そうという機運も、高まっています。

◆学校教育でも方言見直しの動き
最近、この春から学習指導要領という学校の方針がガラリと変わりました。方言についてもかなり大きく変わって、小学校では共通語を使うようにしようというのが今まであったが、その部分が消えて「方言と共通語の違いを知ろう」とか、あるいは中学校では「方言と共通語の役割を知ろう」ということが書いてある。しかも文科省の指導要領の解説書にはそういう方言の役割に対してかなり積極的な解説文をつけてくれている。方言の良さについての指導とか、あるいは東日本大震災の被災地を例に上げていただいていて、そういうところでは方言を使うことで自分たちの心が元気になっていくこともあるということを書いてくれている。とてもありがたいことだと感じています。

2018年5月23日

5月23日 方言消滅の危機(5)

消滅の危機にあるという日本各地の『方言』 の問題、お伝えしています。

東北では、東日本大震災の影響で、岩手、三陸、福島などで方言の話者、つまり話し手が本当にいなくなってしまう可能性があると言われています。
そして、それよりも以前から、消滅の危機が指摘されているのが、沖縄や奄美の古くからの言葉、そして「方言」ではなく別の言語、北海道のアイヌ語です。

文化庁国語課 国語調査官の鈴木仁也さんに伺いました。

◆アイヌをテーマにした漫画が人気
アイヌ語は極めて深刻な状況にあるということになります。明治時代に同化政策と呼ばれる、事実上、アイヌ語を使うなという政策があった。家庭でもアイヌ語を使わないようにという形で、家庭内でのアイヌ語の継承が途絶えたというのが非常に大きなところです。現在アイヌ語の話者は、かろうじて80代後半の方で何人かいらっしゃるというのは聞いたことがあります。でもおそらくひとけたなんじゃないかと言っている学者の方もいらっしゃいます。だけど今アイヌ語は非常に注目されて、マンガ大賞を取った作品の影響が大きいですね。「ゴールデンカムイ」という漫画ですね。漫画の監修した大学の先生の講演会は札幌では抽選で倍率10倍以上、東京でやった時に座席数60のところに200人ぐらい来ていましたから非常に人気があります。言葉にも関心を持ってもらえますしアイヌの料理、儀式、文化的なものを幅広く関心を持ってもらえていることがきっかけで、アイヌの施設に足を運んだ若い方が多いと最近聞きました。


ケリー・アンはこの「ゴールデンカムイ」もアニメ版を以前から観ています。さすがアニヲタ!ちなみにこのアニメ、アイヌ語の発音も アイヌ語研究者が監修、徹底的にこだわった作品になっているそうです。

最後に、我々が方言をもっと身近に、親しむための方法、教えていただきました。

◆方言に触れる旅をしよう!
日本の方言、アイヌ語を守っていくことを考えたときに、沖縄や奄美であれば島唄というのがあります。あの中に出てくること言葉と言うのは、当然その地域の言葉です。島唄なんかは特によく耳にする。それを聞きに行くと言うことも多くの方がされているので観光に非常に深く結びついているツールがあるわけですね。2020年に白老に国立アイヌ民族博物館を含む民族共生象徴空間というのができます。その中では積極的にアイヌ語を使おうということで今まで以上にアイヌ語が聞けるのではないかと。さらに、バスの車内放送でもアイヌ語使おうという動きがこの4月から始まっているんです。ですから探してみるといろいろなところで、消滅の危機にある言葉を聞くことができます。多分東北であれば民謡だとかいろんな伝統行事の中の言葉、そして物にも生きているはずですし、そうした地方の、生の、その地域の言葉が、いかに生き生きとした力強いものかと感じて、良いぞと思ってくださると言うのが多分これから方言と言うものを残していく上においては1番大切なんではないかと思います。


明日も、方言をめぐる問題、考えます。
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パーソナリティ 鈴村健一

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