2018年7月2日

南相馬市小高区「フルハウス」

今月から時間を変更してお送りする『LOVE & HOPE〜ヒューマンケア・プロジェクト』。引き続き、防災減災と地域活性の「いま」、そして被災地の「声」をお届していきます。

今週は、福島県南相馬市小高区に「フルハウス」という本屋さんを開いた、芥川賞作家、柳美里さんのインタビューです。
小高区は福島第一原発から20キロ圏内の町。おととし7月に避難指示が解除されましたが、住民の帰還は20%弱にとどまっています。じつは柳さん、原発事故の直後、帰還困難区域として町が閉ざされる前に、富岡町や浪江町を訪れたんだそう。そのあとも縁が繋がって、南相馬市などに足を運び続けた柳さんは、いつからか、“暮らしの中にある苦しみ、悲しみは、暮らしてみないと分からない”と思うようになり、移住を決意、本屋さんを開くことになりました。

前回6月18日の放送で、福島県南会津とのかかわりを話してくれた柳さんですが、じつはもう一つ、柳さんが福島に導かれた理由があるといいます。

◆故郷を失った母と繋がる
母が福島県の只見町というところで、ダム開発の時期に青春時代を送ったということもあるんですけど、その後家族が南相馬に転居したんです。母たち家族が。それで原町区でパチンコ屋を営んでいた・・・というのは、じつはちょっと私、母と仲があまり良くなくて、そのことを母から聞いたわけではなくて、地元でいろんな人と話をしてるうちに、祖父を知ってるっていう人が何人かいらっしゃったんですね。というので縁があったという話をすると、地元の人がみんな、“柳さん呼ばれたんだよ。土地に呼ばれたんだよ”というふうな言い方をするんですけど、まあそういうことも有るのかもしれないと思いますし、あともう一つは、私は在日韓国人なんです。母、祖父母は、朝鮮戦争の時に住んでいた町が、左右の対立というか南北の対立に巻き込まれて家族が殺害されるということがあって、本当に小さな漁船に乗って逃れてきたわけですね。そうすると、原発事故と戦争ということは違うけれども、ある日、着の身着のままで住み慣れた場所を離れざるをえなかったというところはおなじな訳ですよね。そういう意味で私の中ではずっと故郷って何だろう?母たちは故郷を失った。私はその子供なわけですけど、故郷って何なんだろうっていうのがすごくずっとあったので、そういう意味で私の中では繋がっているんですね。


『LOVE&HOPE』、今朝は福島県南相馬市小高区に、「フルハウス」という本屋さんを開いた芥川賞作家、柳美里さんのお話し。明日は南相馬へ移住を決意した経緯についてのお話しです。

2018年6月29日

6月29日 やさしい日本語

今週は大阪北部地震を受けて、改めて防災減災の情報、お伝えしています。今日は、これから先、我々も考えていかないといけない、日本在住の外国人の方とのコミュニケーションについて考えます。

例えば、災害に見舞われ避難しなければいけない時。ご近所の外国人の方に 声がけをするケースが、これから、当然になっていきます。

そんなときに有効な言葉はなにか。最近は、「やさしい日本語で話しかけよう」という取り組みが全国的に広まりつつあります。「やさしい日本語」の普及に取り組むNPO「多文化共生リソースセンター東海」の土井佳彦さんに伺いました。

◆「やさしさ」を持って話しかける
災害の時に初めて聞く言葉があります。例えば「避難」とか「炊き出しをする」とかって外国人の方は、なんだろう?と思うわけですよね。やさしい日本語のコンセプトとして、やさしさと言うのは相手によって変わるというのがあります。例えば「避難してください」と言って分りましたと逃げる外国人もいます。でも、言ってもわからない場合は、「逃げてください」とか別の言い方をしてみる。というふうに、やさしい日本語だったり、やさしい英語がとても大きなコミニケーションツールになると思います。

それから私が実際に被災した外国人の方から聞いたのは、自分の町が被災してできるだけ遠くに行こうと思って駅に行ったら、ラジオで「電車は“ふつう”です」と言っていた。普通だったら大丈夫だと思って駅に行ったら、電車が動いていない。普通じゃなかったの? と思ったと。彼らにとって「ふつう」というのはノーマル、普通という意味で理解していますが、ここで言う”ふつう“は「不通」、つまり動いていないという意味ですよね。同じ言い方なんだけれども意味が違うということで戸惑ったという話は阪神淡路大震災の時にもあったそうですし、同じように熊本地震の時にも地元の新聞に掲載されていました。

それから単純に言葉の言い換えだけじゃなくて、文化的な背景の違いもあります。例えば地震が起きたときに「早く学校に避難してください」という言い方をします。日本人は学校の中に体育館があってそこが避難所になっていて、避難所に逃げると誰でも食べ物がもらえて寝泊まりできて、しかも無料だということは分かっている。だから学校に避難しろというのは「安全な場所に逃げようね」ということなんですが、そんな国はなかなかないんですね。学校=避難所で安全です、と結びつかないと、地震が起きてもそもそも学校に避難しようということがないんですね。そこは日本ならではの身の守り方なので、言葉と同時に文化的な背景も含めて共有していくのが大事かなと思いますね。


同じように「高台に避難してください」とか「頭上からの落下物にそなえて頭部を守ってください」も外国人の方にはわからないことが多いそうです。「あっちに逃げて」でいいし、「あたまをまもって」と言えばよいわけです。
もう一つのポイントとして、あまり丁寧な敬語はやめた方が良いともいいます。「させて頂きます」「あちらのほうになります」といった言葉は複雑な言葉で分かりにくいそうです。

そして、この「やさしい日本語」。外国人の方を助けるだけではなく、もう一つ、大きなメリットがあります。

◆やさしさが、共助につながる
やさしい日本語で情報が理解できれば、次の行動を自分たちで選択できるようになるというのがあります。東日本大震災では、やさしい日本語でコミュニケーションをとれた外国人の方々が、被災者というだけではなくて避難所の運営の中に関わる支援者にもなっていったんです。例えば避難所でボランティアが皆で炊き出しをしたり掃除をしたりしますよね。その時に「炊き出し」と言ってもわからない。でも「みんなでご飯作るよ」と言えば「僕も参加する」ということになる。「朝の一斉清掃の時間です」と言われても何だかわからない。「掃除するんだよ」とひとこと言えば「ああ手伝いますね」と外国人の方も一緒に活動することができます。救援物資の仕分けをする時も、「水とトイレットペーパー分けようね」と言い換えて、みんなで集まってやることができたそうです。外国人を支援するツールというだけじゃなくて、外国人の方々と一緒に何かをするためのツールとして、彼らをエンパワーメントしていくツールとしてもやさしい日本語は前よりももっと注目されているんじゃないかと思いますね。


※LOVE&HOPEは、来週から時間を移動します。一部の局を除いて、6:25からの放送となります。今後もぜひ、お聴きください。

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パーソナリティ 鈴村健一

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