2018年11月2日

トリチウム水の海洋放出を懸念する浪江町の漁師の声

今朝は福島県浪江町で試験操業を続ける、ある漁師の声。   
   
廃炉工程にある福島第一原発では、原子炉建屋に流入、汚染された地下水を汲み上げ、ALPS(アルプス)という浄化システムで処理、構内のタンクで保管しています。その量は現在90万トンを越え、いまなお増え続けています。

この処理されたあとの水、“浄化された”とはいえ、ALPSでも除去できない“半減期12年”の放射性物質「トリチウム」が溶け込んだ廃液です。

この溜まる一方の“トリチウム水”について、政府の汚染水処理対策委員会は今年春、「海洋放出が最も短期間に低コストで処分できる」とする試算を明らかにして、8月には経産省が初めての公聴会を開きました。

トリチウムを含んだ水は、国内外の通常の原発の運転過程でも発生、これまでも各地で“海に放出されてきた”という事実がじつはあって、“科学的に問題はない”とされていますが、これまで風評被害に耐えながら、こつこつと試験操業を続けてきた福島の漁師にとって、もちろんこれは簡単に受け入れられるものではありません。しかも8月には、河北新報によって、この「トリチウム水」には基準を超える「ヨウ素129」などの放射性核種が含まれていることが報じられてもいます。

去年、避難指示解除を機に、船を移していた南相馬市から、6年ぶりに母港の浪江町請戸漁港に帰還した漁師の一人、小松諒平さんのお話しです。


◆「またマイナスに戻ってしまう」

「3月11日の震災があって原発事故があって、うちら漁師としてはマイナスからのスタートだったんですよね。獲っても最初は売れないっていう懸念がいっぱいあって、先行きが見えない不安というのもありましたし、その中で少しずつ一歩ずつ前に向いて歩んできて、マイナスからのスタートがやっとゼロに。東京の市場からも、“福島県のものはいま検査ちゃんとしてるから安心ですよ”って言ってもらってるのに、そういうものを流したら、またマイナスからのスタートになってしまうじゃないですか。せっかく我々漁業者頑張ってきたのが何なんだろうとつくづく思いますね。一度“フクシマ”ってレッテルが貼られている以上、流してしまったら、また俺たち魚獲れなくなったり、魚だけじゃなく福島のものがまた「買い控え」っていうことも出てくるし、そういうことはしてもらいたくない。流さない方法をちゃんと模索してもらいたいというのが本音ですね。」



厳しい検査を重ねながら、信頼を取り戻そうと慎重に行われてきた試験操業。対象魚種も増えて値も震災前に戻りつつある中で、また振り出しに戻るかもしれないという懸念。それは福島の漁師たちの共通した思いであるはずです。

“トリチウム水の海洋放出が最も低コスト”という試算を報告した政府の汚染水処理対策委員会は、処分方法を絞り込むための小委員会を設置、技術的な観点だけでなく風評被害も含めて検討を重ね、適切な処分方法をまとめる、としています。

決してそれが「海洋放出」への社会的同意を狙ったものでないことを祈らずにはおれません。

2018年11月1日

葛尾村・佐久間牧場(4)

福島第一原発事故の影響で多くの牛を失い、7年越しでようやく、酪農再開への道筋をつけた佐久間農場。

8頭の牛と、生まれたばかりの かわいい子牛たちとともに、いよいよ牛乳の再出荷へ向かおうとしています。ただ、やはり気になるのは「風評」。佐久間さんはこの問題、どう捉えているのでしょうか。

◆風評被害はないと思って
風評被害、買う側の人がそう思うだけで、僕らはちゃんとした、みんなが納得するような、行政が考えているよりも厳しいやり方をして、絶対に線量が出ないものをやるつもりで、そこには念には念を入れてやろうと思っていたので、どこに出しても遜色ないものを自分のところで作っていると思っているので、風評被害はないと思って始まっているんです。今は試験的に8頭ですが、出荷等を考えると、もともと持っていた牛乳を入れるタンクというのが3500リットルなので、ちょっとの牛乳ではクーラーが壊れちゃうんです。最低限の乳量にしないと凍ってしまう。うちの3500リットルのタンクだと最低限出荷のときには1000リットル入らないとダメ。だから1回に500リットル。これをコンスタントにやるには20頭の牛がいないとできない。なので今月20頭、来月20頭の40と今回の8頭で48頭で、それなりの量になるんではないかと思ってはいるんです。出荷の目標としているのは来年の1月の第2週から第3週くらいに、クーラーが壊れない位の乳量になるんじゃないかと。  


風評を吹き飛ばすようなものを作る、そういう仕事をする。それが佐久間さんの結論。ただ、葛尾村はもう一つ課題があります。40代前半の佐久間さんのような人やもっと若い世代、これから村をになう若い世代がどうやったら村に戻るか。葛尾村は戦後に入ってきた農家・酪農家も多く、先祖代々の土地という意識が薄いそうで、一度、村を出ていった人が、帰ってくるというのはそれなりに魅力を感じないと難しいようです。そこをどうするか。行政や国の力も必要ではと佐々木さんは話していました。
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パーソナリティ 鈴村健一

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