2019年1月4日

「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授/天野和彦さん1

今週は新しい年を迎えた東日本大震災の被災地の「声」をお届けしていますが、今朝は福島県です。

福島県は、福島第一原発事故による避難者向けの応急仮設住宅の無償提供を、全町で避難指示が出ている大熊町と双葉町を除いて、原則2020年3月に終了する方針を決めています。そのうち川内村、葛尾村、南相馬市、飯舘村、川俣町の“避難指示解除地域”に住んでいた人たちが暮らす仮設住宅については、今年3月での無償提供終了がすでに決まっています。

地域によっては商店や病院などもまだまだ少なくて不便・・・
住民の帰還も進まないから生業の再開も厳しい・・・
近くに除染していない山や森があることも不安・・・

問題はたくさんあるのですが、それでも打ち切りの動きは進んでいきます。

そんな福島の現状について、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授の天野和彦さんに伺いました。


◆「複雑化する福島の避難者たち」

「まもなく8年なるということで『復興集中期間』が終わって、『復興創生期間』も残りあとわずかという、そういう状況の中で、問題は、避難をされている方が5万人弱いるという状況がいまだに続いているということ。その皆さんの今の状況ですけれども、端的に申し上げると、課題が、“個別化、多様化、複雑化している”という状況が言えるのだろうと思います。故郷に帰れるのか帰れないのか、それから帰っても大丈夫なのか。たとえば福島大学の私の所属している『うつくしまふくしま未来支援センター』が、双葉郡の住民の方々の実態調査を行なっているんですが、その中で、“将来の皆さん方の仕事とかあるいは生活への希望がありますか?”という問いに対して、『大いに希望がある』あるいは『希望がある』というふうに答えた人は2割に満たない状況にあって、一方『あまり希望がない』、『まったく希望がない』とおっしゃってる方は約半数近くいらっしゃるんです。あるいはそれが生きがいの喪失にも結びついてるというようなことが指摘されるというふうに思います。福島県は災害関連死、震災関連死というのが、岩手宮城と単純に比較しても、直接死と関連死の総数のうちの割合が60%を超えてる状況にあるんですね。」



福島に関する報道が減るなか、いまだ避難している人が5万人いるというこの現実。うち原発事故で避難した人が住む仮設住宅は、去年春の時点で、7348戸(1万4366人)あります。そして天野さんの言う“生きがいの喪失”。福島では震災の直接の被害で亡くなった方よりも、震災後、自ら命を絶った方の数が上回っているという現実があります。なぜそんな中でも支援打ち切りを急ぐのか?どういった対策を取るべきなのか?来週も引き続き、天野さんのお話し、お届けします。

うつくしまふくしま未来支援センター

2019年1月1日

ラグビーW杯の開催地・釜石の声

今日からの4日間は、東日本大震災の被災地で、今年大きな転機を迎える4つの地域の「声」をお届けします。まずはじめは岩手県釜石市・・・そう、今年9月に行われる「ラグビーW杯2019日本大会」、全国12の開催会場のうちの一つです。

往年の名チーム・新日鉄釜石の活躍で、“ラグビーの町”として知られていますが、津波で大きな被害を受け、とくに試合の行なわれる鵜住居町は、一時期、何も無い更地となっていました。

そこに「釜石鵜住居復興スタジアム」という立派なスタジアムが去年夏に完成。秋のW杯開催に向けて、いま準備が進められていますが、全国の各都市が試合会場として誘致活動をする中、2015年に釜石での開催が決まった時は、“奇跡”とも言われていました。

誘致に尽力したお一人で、鵜住居町の旅館、「宝来館」を営む、岩昭子さんのお話しです。


◆「生きるために“夢”が欲しかった」

「ようやくこの年が始まったなとワクワクドキドキする年明けになりました。最初の頃はワールドカップなんか夢のまた夢で、そのときは本当に出来ると思っていたのではなくて、生きるために夢が欲しいなと思ってポロッと出た思いだったんですね。それがスポーツの凄さっていうか、いろんな方が“やろうよ”って動いてくださって、で、2015年、「宝来館」がパブリックビューイングの場所だったんですけど、決まった瞬間、喜んだあの瞬間は忘れられなくてですね、そのときに思ったのは、“あ、大人の私たちがラグビーの強かった釜石をもう一度って思う気持ちより、“子供たちに未来を見せてあげたいな、盛り上がった釜石を見せてあげたいな”って思った瞬間がありましたですね。で、この間日曜日に私達の村でですね、フィジーとウルグアイとナミビアとカナダの国旗を広げて見てたんですよね。で来週から英語教室も私たちの村では始まって、釜石でやる試合のこの4か国の旗を、いろんなところでみんなで立てて歩こうということが始まったんですけど、みんなでラグビーで一つになりつつなってるなってのが、すごく嬉しく思うこの頃です



津波で384人の死者・行方不明者が出た鵜住居。岩さんも津波にのまれた一人。1963年創業の「宝来館」も2階まで津波で被災したが、翌年に再建。以来、岩さんは2016年の岩手国体のトライアスロンでも応援に奔走。宿の裏には車いすでも逃げられる避難路を作り、そしてラグビーW杯の開催会場誘致にも尽力されました。“生きるために夢が欲しかった”という言葉が胸に響きます。「釜石鵜住居復興スタジアム」では、9月25日にフィジーvsウルグアイ、10月13日にナミビアvsカナダ戦が行われます。

『LOVE & HOPE』、明日はこの春で復興計画が終了する、宮城県女川町の「声」をお届けします。

「宝来館」ホームページ

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パーソナリティ 鈴村健一

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