2019年1月8日

「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授/天野和彦さん3

今朝は引き続き、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんのお話しです。

福島県は、福島第一原発事故による避難者向けの応急仮設住宅の無償提供を、大熊町と双葉町を除いて、原則2020年3月に終了する方針を決めています。そのうち川内村、葛尾村、南相馬市、飯舘村、川俣町の“避難指示解除地域に住んでいた人たち”が暮らす仮設住宅については、今年3月での無償提供終了がすでに決まっています。

住民の帰還は進まず、商店や病院の少ない地域もあって生活が不便、除染されていない山や森が近くにあって不安もある・・・問題が山積する中で、避難者への支援は次々と打ち切られていくわけですが、この背景について天野さん所感です。


◆「2020までに」

「これは私の私見ですけど、2020年に開催が予定されている、東京オリンピック、パラリンピック。そこまでの間に、なんとかこの“避難者”をゼロにしたいのではないか。被災地は残ってるけど避難している人はいないですよ、と、アンダーコントロールされていますよ、と、いうふうな状況を作り出したい。だからいついつまでに帰還を決めれば支援をしますよ、と、つまり帰還政策を進めていく中で、戻らない人はそれぞれの自己決定をお願いします、というふうな中でですね、きわめて被災をされた方、あるいは避難をされている方に厳しいつらい政策が展開されていると言わざるを得ないというふうに思います。 」



あくまで天野さんの私見ではありますが、「2020年3月」という「期限」がまず先に示されていることを考えると、否定はできない意見です。期限を切るより帰還者たちが生活できる環境を整えるのがまず先なのではないでしょうか。

今年、そして来年、なかば強引に復興へ大きく舵を切りそうな福島。あらためて「課題」について、天野さんのお話しです。


◆「福島を21世紀の地域のモデルに」

「課題ということで、風化が進んでいる状況があるんだと思うんです。これはある意味しかたのないことだろうと思います。それを我々いま福島に住むものの一人として思うのは、やはりこうした状況を発信し続けていくということは非常に大事だと思いますし、これから日本が直面する課題が、福島の場合は、震災があったことで、あるいは原発事故があったことで、より顕在化していってる、つまりこれからの日本で多くの地域が抱えていくような課題、少子化や高齢化がより加速度的に福島には出ているんですね。で、我々はこれを解決していくことによって、ある意味、21世紀の地域のモデルを逆に提案していくことができるのではないかということをお示しできるようにしていきたいというふうに考えています。」



福島はまだ復興の途上にあり、私たちはその道のりを見つめ、自分の住む地域のこととして考えなければなりません。風化に抗い、これからも伝え続けていきたいと思います。


うつくしまふくしま未来支援センター

2019年1月7日

「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授/天野和彦さん2

今朝は金曜日に引き続き、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんのお話しです。

福島県は、福島第一原発事故による避難者向けの応急仮設住宅の無償提供を、大熊町と双葉町を除いて、原則2020年3月に終了する方針を決めています。そのうち川内村、葛尾村、南相馬市、飯舘村、川俣町の“避難指示解除地域に住んでいた人たち”が暮らす仮設住宅については、今年3月での無償提供終了がすでに決まっています。

住民の帰還が進まない中で、仮設住宅の打ち切りは進み、そんな中で問題となっているのが、震災と原発事故に関連した自殺者の数。被災3県の中では最多。年齢別では50代以上が7割を占め、中でも働き盛りの50代が最も多いという現実がじつは福島県にはあります。

この背景について、天野さんに伺いました。


◆「指の間からこぼれていく人たち」

「なぜこういう状況が生まれているのかと考えると、分かり易く言うと、この丸7年もの間、故郷に帰れるのか帰れないのか、あるいは帰っても大丈夫なのか、そうしたことがずっと朝から晩まで、頭の中にどこかにある。こういう状況の中で心が弱っていくのは当たり前なんだろうというふうに思います。故郷に帰れないという状況、それは単に場所だけを指すのではなくて、人とのつながりであったり、あるいはそれまで地域の中にあった自分の生業、仕事ですよね。そうしたことの暮らしのすべてが奪われてしまったことによって、自らの命を絶つとか、あるいは持病が悪化して命を失ってしまうとか、そういう状況が後を絶たないと言わざるを得ないというふうに思います。そういう中でどういう方向がこれから、これまでもなんですけど、必要なのかというとこれは、コミュニティの力を強くしていくしかないだろうというふうに思います。つまりこれまでの暮らしの中で培われてきたそうしたつながりを、なんとか避難先にあっても回復するようなそうした取り組みや努力が、ますます求められている。つまり孤立化していって一人ぼっちになっていくっていうそういう状況の中で、指の間からこぼれていく方をなんとかすくい上げていくっていう、そうした取り組みが求められているんだろうっていうふうに思います。 」



震災と原発事故に伴う避難者数は、去年春の時点で県内外に約5万人。災害公営住宅の整備が進んで、仮設住宅の入居者は減りましたが、それでも約3000人が住んでいます。今なお避難生活をしている人、あるいは人のいない故郷へ帰還した人や、災害公営住宅に移った人、いずれも“コミュニティづくり”が、生きていくための重要なキーワードになるということ。そしてこれが福島の現状でもあります。

こと福島においては、今なお復興は遠い道のりなのです。


うつくしまふくしま未来支援センター

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