2019年5月31日

フォトジャーナリスト 渋谷敦志さん(3)

今日も報道写真家、渋谷敦志さんのインタビューです。

渋谷さんは東日本大震災の直後から8年に渡って、福島県南相馬市の上野敬幸さんの取材を続けています。
上野さんが中心となって活動するボランティア団体「福興浜団」では、毎年8月に鎮魂の花火大会を開催しています。その花火大会でライブを行っているのが、
ロックグループASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さん。
上野さんと後藤さん。この二人の縁をつないだのが、渋谷さんでした。


◆毎年8月に行われる鎮魂のHANABI
上野さんとの出会いというか、僕にとって一番大切な写真の一枚ですけど、上野さんと消防団の皆さんを撮った写真はなかなか発表することができなかったんです。新聞や雑誌に掲載を提案したが、震災直後萱浜は避難区域だったので政府が立ち入ってはいけないと言っている場所で撮った写真は掲載しかねる、ということで。「この人の話を誰に託せばいいんだろう」と考えていたときに、アジアンカンフージェネレーションの後藤正文さんと出会う機会があったんです。彼が自分で、自腹でThe Future Timesという新聞をつくって、東北のこと、自分たちの社会のこと、未来のことを考える新聞を発行するという。その紙面で上野さんのストーリーを掲載できないかと言われて。この人だったら託せるかもしれないと思って掲載することになったんです。それだけじゃなく、後藤正文さんが「編集長としては自分も上野さんに会ってみないと」と言うことで、福島に案内して会ったんです。それが縁となって、上野さんは毎年夏に鎮魂の花火を打ち上げているが、その会場で後藤さんがボランティアでライブをやるようになって。今年も8月11日に花火が予定されていて、後藤さんも来てくれる。もしかしたら今年はアジアンカンフージェネレーションで来てくれるかもしれないという話にもなっているので、すごく楽しみですね。こういう形でつながったことを本当にうれしく思います。


今年の花火大会は8月11日。今年は初めて、アジカンでのライブになるかもしれない、とのこと!
詳細は今後「福興浜団」のFacebookで随時発表される予定です。

2019年5月30日

フォトジャーナリスト 渋谷敦志さん(2)

今日は報道写真家、渋谷敦志さんのインタビューです。

東日本大震災の直後から東北に取材に入った渋谷さんは、福島県南相馬市の原町区萱浜で上野敬幸さんに出会います。
上野さんは両親と小さいお子さん二人が津波の犠牲になりましたが、当時萱浜では、原発事故の影響で行方不明者の捜索ができませんでした。

◆「わからないまま分けずに、つながりを続けていく」
上野さんは当時も僕に怒っているわけではないんだけど、自分のぶつけようない怒りで爆発しそうな、触れたらやけどをしそうな感じでした。だから最初はカメラを向ける勇気もなかったが、でも彼の眼をみたときに、この人のことはとにかく伝えないといけない、この人から逃げるくらいなら、写真なんかやってきた意味がないと思って。この人を撮るか、写真を止めるかぐらいの覚悟で彼につきまとっていたわけです。そしてようやく一枚の写真を撮らせてもらった時から関係が始まったんですが、8年たった今もわかり得ないという感じのほうが強い。どんなに言葉を聞いても、どんなに写真を撮っても、上野さんという存在は僕にとって絶対的な他者で、わかりえない。僕たちの間にはボーダー(境界線)があって、僕はいつもそれを越えることができなかったな、という想いで取材から帰ってくる。でもまた向かっていく。それは繋がっていたい、という気持ちからで、少しでも近づきたいと言う気持ちがあるからなんです。上野さんを通して学んだのは、「わからないということが悪いことではない」ということ。「わからないということは分けない」ということでもある。逆に「相手の気持ちがわかる」というのは、それを整理して分類して横に置いてしまうような感じもして。そうするくらいだったら、わからないまま分けずに彼とつながっている状態を維持していることのほうが、意味があるんじゃないかと思っています。



渋谷さんがようやく撮ることができたという、最初の一枚。
地元の消防団の皆さんと上野さん
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パーソナリティ 鈴村健一

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