2013年11月29日
11月29日 「震災遺構」を考える(4) 宮古市 たろう観光ホテル
岩手県宮古市の田老町は、高さ10mの防潮堤を建設するなど、津波に対して強い街づくりを進めてきましたが、東日本大震災ではその防潮堤を越える津波が発生し、多くの犠牲者が出ました。
そんな田老町に震災遺構として残されているのが、「たろう観光ホテル」です。
このホテルの保存に、復興庁が2億円余りを交付する方針を固めたというニュースが、昨日入ってきました。これは、震災遺構の保存を国が支援する、初めてのケースです。
これまでの経緯を、宮古市復興推進課、滝澤肇さんに伺いました。
◆5度目の正直
宮古市として遺そうと想定している震災遺構は「たろう観光ホテル」。田老地区はもともと、高さ10メートルの防潮堤が2本、2.4キロにわたって整備されていた。その2本の防潮堤のちょうど真ん中に位置して、6階建の建物だったが、4階まで被災し、5階と6階が残っていた。
津波の恐ろしさを後世に伝えるものとして、非常に保存する意義が高いと考えたが、市の独自の事業としては費用が掛かりすぎるということがあり、復興交付金でお願いしたいと国に支援のお願いをしていた。これまで、意義は認めるものの時期的な問題とか、様々な観点で、4回申請した中で4回とも認めていただけなかった。今回5回目にして、始めて保存の費用が認められた。やっと市として保存に取り組むことが可能になった。宮古市としては、「たろう観光ホテル」に付随する形で、破壊された防潮堤も同時に遺していきたいなと考えているところ。
田老地区では、「たろう観光ホテル」を拠点とした「学ぶ防災プログラム」が実施されています。これは、津波の恐ろしさを伝え、防災意識を高めるための取り組み。これまで、4万人を超える方が参加しています。
◆学ぶ防災プログラム
「学ぶ防災プログラム」が宮古観光協会を中心としてすすめられている。
「たろう観光ホテル」の社長さんが、津波のときに一人で留まって撮影したDVDを館内で上映。ツアーの皆さんはそのDVDで規模と被災の状況を実際に見ることで、始めて津波の恐ろしさを体験することができる。震災遺構を保存する意味というのは非常に大きいのではないかと考えている。
「たろう観光ホテル」は震災遺構に実際に立ち入ることができる、被災地の中でも珍しい場所。
また、保存について、地元で大きな反対の声は上がっていないとのこと。「ホテルで犠牲になった方がいないこと」「ホテルの保全が復興街づくりの障害にならないこと」など、いくつかの条件が重なった結果です。
地域ごとに状況が異なる「震災遺構」。震災の教訓を後世に伝えるためにも、時間をかけて取り組むことができるよう、被災地をバックアップする仕組みが必要です。