今朝は、福島県の最北端、伊達郡国見町から、1台のピアノに関する話題をお伝えします。
ピアノの名前は、ベーゼンドルファー290。オーストリアで180年の歴史を持つベーゼンドルファーのシンボル的なモデルです。鍵盤の数が9鍵多く、97鍵盤で構成されているのが特徴。熟練の職人によって作られた希少なピアノで、「インペリアル」とも呼ばれています。ベーゼンドルファーはハンガリーのピアニスト、フランツ・リストが愛したピアノとしても知られています。
東日本大震災で、震度6強の揺れを受けた国見町は役場庁舎が全壊してしまったため、ピアノのあった観月台文化センターのホールに、仮庁舎を置いています。このためインペリアルは、誰も手を触れることなくこれまでホールの隅で眠っていました。
そして今月3月3日。地元の方々に安らぐ時間を過ごしてほしいという願いから、久しぶりにコンサートが開かれ、インペリアルの音色が2年ぶりに会場に響きました。
◆国見町 太田町長の言葉
このベーゼンドルファーのピアノは平成6年、今から18年前にこの文化センターの開館と同時に購入して、様々な演奏をこれまでにやってきた。しかし2年前の震災で文化センターは役場の仮庁舎となり、コンサートはできない状況に。2年間この名器は使われずにいた。震災から2年、町は復興へ向けて進もうとしている。そういう視点でごゆっくりご鑑賞して元気を取り戻して頂きたい。
コンサートホールは今も使えないため、研修室を利用して行われたこのコンサート。国見町・太田久雄町長も、町の財産・インペリアルの復活を心待ちにしていたといいます。
この日のコンサートでは、ピアニスト木住野佳子さんが震災後に作曲した『HOPE』という曲を披露。また、『上を向いて歩こう』や『ふるさと』などの曲が演奏されました。
会場に集まった町民の方々も「震災前を想い出して懐かしさを感じた」「まだ復興の途中。ホールは使えずイベントもできない。それが出来るようになり、町も賑やかになって欲しい」と、町の宝・インペリアルの音色が戻ってきたことをそれぞれに喜び合っていました。
国見町は、震災の揺れで2191棟が全壊、一部損壊の被害を受けましたが、自身の被害については徐々に復旧のめどが立ちつつあるそうです。ただ、放射線の問題はいまも残っています。今後は、一般家屋の個別調査や、放射性廃棄物の仮置き場の問題を解消しなければならず、復興へ向けた課題だと町長は話しています。
明日も、福島県国見町(くにみまち)から、インペリアルの演奏と地元出身の詩人・内海和子さんよる、詩の朗読の模様をお届けします。