いのちをまもり、医療をまもる 上手な医療のかかり方
病気やケガをした時、あなたはどの病院で診てもらいますか?
いつも混んでいて待ち時間が長くなってしまう要因は様々ですが、その中の一つに私たちの医療のかかり方も関係しているようです。
今回は「いのちをまもり、医療をまもる 上手な医療のかかり方」というテーマでお話しました。
秋元 体調が悪い時にお医者さんに診察してもらうと安心しますよね。
でも、ひと口に病院と言っても、内科や外科、整形外科など、具合が悪い場所によって違ってくるし、近所の診療所や地域の中規模な病院、大きな総合病院など、いろいろありますよね。
「本当に必要な時に、適切な病院に行っていますか?」と聞かれたら、どうですか。
JOY 難しいね。症状に合わせて病院には行くけど、そう聞かれると自信ないな。
秋元 JOYくんは地域の中規模な病院や大きな総合病院に、どんなイメージを持っていますか。
JOY 総合病院は、重い病気や難しい病気の方がかかるイメージかな。あと、24時間、365日、救急に対応してくれる。ただね、すごい混んでいるんだよね。
秋元 そういうイメージを持っている方、多いと思います。
でも、この状況を引き起こしている要因の一つには、私たち患者側の医療のかかり方も関係しているそうなんです。
ここからは、厚生労働省 医政局 医療経営支援課 医療勤務環境改善推進室長 安里賀奈子さんにお話を伺っていきます。
安里さん、病院の混雑は、私たちの医療のかかり方も関係しているということですが、もう少し詳しく教えていただけますか。
安里 はい。医療機関には、お近くの診療所や地域の中規模な病院、大きな総合病院など、いろいろあります。
日常的な病気やケガの場合、多くの方がお近くの診療所を利用すると思います。
秋元 そうですね。
早く診てもらいたいし、体調不良の時は、歩くだけでも大変ですからね。
安里 でも中には「よくわからない症状で不安だから」、「大きな病院のほうがなんとなく安心だから」などの理由で、診療所へは行かずに大きな総合病院を受診したり、「明日仕事を休みたくない」「深夜のほうが空いている」などの理由で救急外来を受診したりする方もいるんです。
秋元 翌日、どうしても外せない仕事があるという方は、夜でも診てもらえる大きな総合病院に行くかもしれませんね。
安里 こうしたことが混雑につながり、待ち時間が長くなったり、診察時間が短くなったりする要因の一つになっているんです。
JOY 待ち時間が長かったのに、診察時間が短くて、お医者さんに伝えたい事を言えずに終わることもある。こういう状況は自分たちが招いていしまっている可能性があるんだね。
秋元 確かに、「深夜のほうがすいている」という理由で救急外来を利用すると、本当に緊急の患者さんが適切な治療を受けられないことにつながりますよね。
安里 そうなんです。
また、これに伴い医師の負担も非常に大きなものになっています。
1日8時間労働で5日間働くと、1週間で40時間になります。
総務省が行った調査によると、歯科医師と獣医師を除く医師のうち、1週間の労働時間が60時間を超えている、と答えた割合は37.5%もあって、かなりの長時間労働となっていることがわかっています。
JOY お医者さんは、人の命を助ける職業だから、緊急に治療が必要な人がいれば休憩時間を取ることもできないし、代わりの人がいなければ自由に休みを取ることも難しいから、大変な職業ですね。
安里 しかも他の職業の場合、60時間以上働いている人の割合は、時間が増えるほど低くなる傾向にありますが、医師の場合は、75時間以上働いている割合が他の職種よりも高いんです。
秋元 そういう状況だと、お医者さんが体調を崩してしまうことはありませんか。
安里 実は、医師がうつ病などの精神障害を患ったり、過労死したりといった例もあります。
また日常的に疲労感や睡眠不足感があることから、医療事故につながりかねないような「ヒヤリ」とした体験や、「ハット」した体験がある医師が少なからずいることも、わかっているんです。
JOY もし、その「ヒヤリ」が大事な手術中だったら、と考えると怖いことですね。
秋元 しっかり休んで手術に臨んでほしいけど、それが難しい状況なんですね。
安里 そうなんです。医師の勤務環境が改善されないと、最悪の場合、命を失うような医療事故につながってしまいます。
医師の時間外労働の主な理由は“緊急対応”によるものや、“手術や外来対応などの延長”です。
ですから少しでも医師の負担を軽くして、私たちが安心して治療を受けられるようにする解決策の一つとして、私たちが必要な時に適切な医療機関を選択することが求められているんです。
JOY 適切な医療機関というのが、分からなかったり、病気になると冷静に考えられなくなったりする人が多いと思うな。
さっきの話にあったけど、緊急でないのに救急外来に行ったり、心配だからという理由だけで、大きな総合病院へ行ったりしてしまうと、ただでさえ忙しい医師が、ますます忙しくなってしまうんだね。
じゃあ、実際、適切な医療機関はどうやって選べばいいのかな。
秋元 そこが知りたいですよね。
私たちが必要な時に適切な医療機関にかかるためには、どんなことを心掛ければいいでしょうか。
安里 まず、お近くの診療所に、なんでも相談できて頼りになる「かかりつけ医」を持ち、日常的な病気やケガはできるだけ、このかかりつけ医に診てもらうように心掛けてください。
秋元 かかりつけ医に診てもらうメリットは、どんなことがあるんですか。
安里 かかりつけ医は患者さんの日頃の生活状況を知った上で、その人に合った適切な診察や保険指導をしてくれます。
また、専門外のことや、詳しい検査が必要になる場合などは、地域の医師や医療機関と連携して適切な病院を紹介してくれます。
まずは、信頼できるかかりつけ医を持つところから始めてください。
JOY 信頼できるかかりつけ医を見つけることが、一番安心できるよね。
秋元 いろんな病院へ行くよりも、かかりつけ医に行くことで、その人の体調の変化にも気づいてくれるし、私たち患者にとってもいいよね。
JOY でも深夜、急に具合が悪くなった時に、近くの診療所へ電話しても誰もいない場合が多いですよね。
安里 そうですね。急な病気やケガで、救急車を呼んだほうがいいのか、すぐ病院へ行ったほうがいいのか、など迷ったら、『救急安心センター事業』♯7119を利用してください。
原則24時間365日、看護師など医療の専門家が、症状を聞いた上で、緊急性の有無や応急手当の方法などをアドバイスしてくれます。
#7119は、東京や大阪をはじめ15の地域で実施していて、今後、地域を広げていく予定です。
JOY これから、インフルエンザやノロウイルスが流行する季節だから、少し具合が悪いだけも大丈夫かな、と不安になるけれど、夜遅くでも相談を出来るのは助かる。
秋元 それから、子育て中のお父さん、お母さん向けの電話相談もあるとのことですが、もう少し詳しく教えてもらえますか。
安里 はい。
お子さんの場合には『子ども医療電話相談事業』♯8000があり、こちらは全国で利用できます。
小児科医師や看護師などによる保護者を対象にした、休日・夜間の電話相談窓口です。
こちらは47都道府県で実施していますので、夜、お子さんの急な発熱などは、♯8000を利用して適切な医療機関を選択してください。
秋元 急に子供が熱を出したり、何かが急に起きたりしたらパニックになりそうだけど、こうした相談窓口があることを知っておけば、冷静に対応できそうですね。
安里 はい。是非、覚えて、ご活用頂ければと思います。
また、11月は『みんなで医療を考える月間』となっておりまして、期間中はシンポジウムやイベントを実施します。
秋元 この月間を機に、医療のかかり方を考えるきっかけになればいいですね。
安里 それから、企業や病院、診療所など、医療のかかり方の改善に関する優れた取組を行っている企業や団体を表彰する、『上手な医療のかかり方アワード』の募集も行っています。
JOY 安里さん、優れた取組って、リスナーの方もイメージするのが難しいと思うのですが、どんなことでしょうか。
安里 こちらのアワードでは企業の取組も募集しているんですが、例えば、従業員が平日の昼間に医療機関にかかりやすいように、柔軟な働き方ができる体制づくりをしたり、職場の雰囲気づくりをしたりといったことも大切なので、そういった取組についても奨励していこう、ということで実施します。
秋元 確かに、平日に休みやすかったら、時間外に病院へ行かずに済む場合もありますね。
そうした企業側の体制の改善も、上手な医療のかかり方をすすめる上で大事なことなんですね。
安里 必要な時に適切な医療機関にかかることができれば、結果として医師などの過度な負担が減り、医療の質が向上し安心して治療を受けることができます。
是非、多くの方に上手な医療のかかり方を知っていただき、それぞれが少しずつ、今すぐできるところから始めていただければと思います。
秋元 自分が体調を崩すと余裕がなくなってしまうけど、周りを思いやる気持ちも大事なんだと思ったな。
お医者さんにもしっかり休んでいただきたいですね。
JOY 今日の話を聞いて、改めて、かかりつけ医をみつけることの大切さを知りました。大きな病院にいくと、待ち時間が長いのに、診察時間が短く、スムーズにいかなくてイライラしちゃったりもするけど、でも、その状況は自分が生み出しているんだよね。
お医者さんは、頑張っているのに、疲労がたまり、何かしらミスにつながるかもしれない。
病院へ行く前に電話で相談できる窓口もあるので、利用していきたいですね。
参考:みんなで医療を考える月間(厚生労働省)