小さな命を守る、児童虐待防止対策
児童虐待の痛ましい事件が相次ぐ中、虐待防止に関する法律が改正されました。
今回は「小さな命を守る、児童虐待防止対策」というテーマでお話しました。
秋元 以前、この番組で保護司の方をゲストにお迎えしたときに、困っている人を助けて、社会を明るくするためには、地域の人たちの協力が大事なんです、という話を聞きましたよね。
今日は、虐待を受けている子供を守る、そのために私たちにできること、虐待を防止するための法律に関するお話を厚生労働省 子ども家庭局 家庭福祉課 虐待防止対策推進室長 柴田拓己さんに伺っていきます。
児童の虐待防止に関する法律が改正されたということですが、これはやはり、ここ数年の事件もきっかけになっているんですよね。
柴田 はい。児童の虐待防止に関する法律や体制は、これまでも、痛ましい虐待事案が繰り返されないよう、対策の強化を図ってきました。
しかし、心中以外のなんらかの虐待により死亡する子供の数は、2004年からずっと横ばいの状態が続いており、2017年度は52人となっています。
心中を含めると65人もの尊い命が失われています。
JOY 虐待自体は、どれくらいの数があるんですか。
柴田 2018年度に児童相談所が相談を受けて対応した件数は、過去最高のおよそ16万件ですが、その内容で最も割合が多いのは心理的な虐待です。
心理的な虐待というのは、言葉で脅かしたり、無視したり、兄弟や姉妹の間で著しく差別的な扱いをするなど、子供の心をひどく傷つける行為です。
また子供の目の前での配偶者への暴力、DVなども、子供への心理的な虐待にあたります。
JOY 2018年度に児童相談所が相談を受けて対応した件数は、およそ16万件。これは、あくまで対応した数ですから、報告や相談を受けた数を入れたら、もしかしたら、もっと多くなる可能性があるよね。
秋元 子供に対して傷つける言葉を直接言わない場合でも、虐待になることがあるんですね。
柴田 はい。そうなんです。
そして次に多いのが、殴る、蹴る、叩く、やけどを負わせるなど、身体的な暴力です。
こうした虐待はすべて児童虐待に当たりますが、中には“しつけ”という名目で行う人がいます。
JOY この番組でも以前、「愛の鞭は“しつけ”じゃない」という話をしましたが、しつけは大人が子供に、社会のルールやマナーを理解してもらい、自分でしっかり行動できるように教えることで、虐待は大人が子供をコントロールしようとするものでしたよね。
柴田 そうですね。ただその線引きが曖昧なため、“しつけ”と称する虐待が行われてしまっているんです。
そこで、こういった状況を踏まえて、今年3月に児童虐待防止対策の抜本的強化が決定され、6月には児童福祉法等の改正法が成立しました。
秋元 どういった点が改正されたんですか。
柴田 はい。改正の内容は多岐にわたっていますが、ポイントのひとつは【体罰禁止規定の創設】です。
簡単に言えば、しつけに際して体罰を禁止するものです。
今後、体罰などによらない子育ての推進についてのガイドラインを作っていきます。
JOY どういう内容になるか、みんなが注目していく必要があるね。
いずれにしても、法律があるないに関係なく、体罰はダメですよ。
子供の心を傷つけるだけでなく、一生消えないからね。
秋元 他にはどんなポイントがありますか。
柴田 はい。児童相談所の体制を強化するために、2022年度までに児童福祉司を2000人程度、児童心理司を800人程度増員します。
児童相談所は人手不足などの理由から、児童虐待が疑われる事案が発生した際の対応に課題がありました。
そこで専門の職員を増員することで、子供の安全を確保するための初期対応を迅速に、より的確に行えるようにします。
JOY これは良いことですよね。専門の職員が増えれば、きっと救える子供も増えるよね。
秋元 子供を虐待から守るには、児童相談所の方だけでなく、私たちにもできることがありますよね。
柴田 そうなんです。
身の回りやご近所で「もしかして虐待かも?」と思うようなことがあったときは、ためらわずに児童相談所全国共通ダイヤル189番、“いちはやく”にお電話いただければと思います。
12月から通話料を無料化する予定です。
JOY 近隣の方からの相談はどのくらいあるのですか。
柴田 児童相談所において虐待について対応した件数のうち、13%が近隣・知人の方からの通告がもとになっています。
無料化することで、地域の方がより電話しやすくなればと期待しています。
JOY ただ、虐待だと確信がないのに電話しても、忙しい児童相談所の迷惑になるかと思って、電話を遠慮する人もいると思うんですよね。
ご近所の場合、連絡して間違っていたらどうしよう、という不安から、電話をためらう場合もありますよね。
柴田 確かにそういう方もいらっしゃると聞いています。
でも、少しでもおかしいなと思ったらちゅうちょせずに相談してください。相談は匿名で行うこともできますし、相談いただいた方の名前等は決して明かしません。
秋元 相談しなかったことで小さな命が失われてしまった、という最悪の状況を考えれば、「もしかして虐待かも?」と思った時点で相談してほしいですね。
柴田 そのとおりです。
また児童相談所全国共通ダイヤル189番は、児童虐待だけでなく、予期せぬ妊娠や、出産、子育てに関する悩みや不安など、幅広く子供に関する相談に対応しています。
育児や生活に悩んで、イライラして、気づかぬうちに子供を虐待してしまうこともあります。
どうか、そうなる前に189番、“いちはやく”にお電話ください。
相談内容に関する秘密は守られます。
児童の虐待防止に関する法律が改正され、2020年4月から施行されます。
虐待を防ぐために様々な対策や取組が強化されます。
みなさんも、小さな命を守るため、189番へのお電話にご協力をお願いします。
秋元 子育てって本当に大変だと思いますが、だからと言って虐待は絶対にしてはダメです。
「虐待かも?」と思うことがあれば189番、“いちはやく”に電話してほしいですね。
JOY 虐待防止の法律が改正されるから、これから少しでも減っていくことに期待したいな。
参考:児童虐待防止対策(厚生労働省)