知っておきたい、仕事と両立できる『介護休業制度』
家族や身内の介護は、突然やってくることが多く、仕事との両立で悩む方も少なくないと思います。“その時”に慌てないためにも、制度の活用をオススメします。
今回は「知っておきたい、仕事と両立できる介護休業制度」というテーマでお話しました。
秋元 “介護”とひと言で言っても、認知症や難病の方の介護、病気の後遺症やケガで思うように動けない方の介護など、様々なケースが考えられます。
最近は高齢化が進んで介護を必要とする人も増えているそうです。
JOY 若い世代は介護と言われても「ピンとこない」という人は多いと思うんだけど、とはいえ介護って、いつくるか分からないよね。
今日が元気でも、明日にはどうなっているか分からないし。
秋元 そこで今日は、仕事と介護の両立のための制度について、厚生労働省 雇用環境均等局 職業生活両立課長 尾田進さんにお話を伺っていきます。
尾田さん、介護が理由で仕事を辞めざるを得ない方はやはり多いんでしょうか。
尾田 そうですね。高齢化が進み介護を必要とされる方は増えています。
これに伴い、男女を問わずご家族の介護をされる方も増えています。
平成28年10月から29年9月までの1年間に、家族の介護や看護が理由で仕事を辞めた人は、およそ10万人いることが総務省の調査でわかっています。
秋元 仕事を辞めてしまった方がおよそ10万人ということですが、どのくらいの年齢でやめる方が多いのでしょうか。
尾田 40代から徐々に増えて、50歳から64歳までが特に多くなっています。
JOY 40代、50代は働き盛りで、キャリアも積み重ね、まだまだこれからという年代ですよね。その中で仕事を辞めてしまうのはもったいないですよね。
尾田 そうですよね。これまで積み重ねてきた経験や技能を生かせなくなるのは、本意ではないと思います。
また会社側でも、経験豊富な働き手を失うのはとても大きな損失ですから、介護離職は社会が抱える課題なんです。
そこで今日は、もしもの時にも仕事と介護を両立できるように知っておいていただきたい、介護休業制度をご紹介したいと思います。
介護休業制度は仕事を辞めることなく、家族の介護ができるように設けられた制度です。
秋元 制度があることは知っていても、詳しいことは知らない方が多いと思います。介護休業制度についてもう少し詳しく教えて下さい。
尾田 はい。
介護休業制度は、家族を介護する場合、介護が必要な家族1人につき通算93日まで休みを取得できる、というものです。
秋元 介護というと、一般的には長く続くイメージがあるので、93日間というのは短いような気がするんですけど…。
尾田 おっしゃるとおり、介護は予め期限があるものではありませんし、一般的に長く続くものです。
そのため、介護を全て自分でしようとすると、仕事と介護の両立は難しいですし、精神的にも肉体的にも負担になります。
ですからこの制度は、自分で介護するだけでなく、介護と仕事を両立するための体制づくりに利用していただけるように設けています。
秋元 体制づくりというのはどういうことですか。
尾田 例えば、介護保険の給付を受ける手続きをしたり、介護サービスを選定したり、施設の見学や入所の手続きをしたりといったことです。
また介護保険サービスを利用する場合、自治体や地域包括支援センター、ケアマネージャー、ヘルパーなど、多くの関係者と連携していく必要もあります。
介護は初めてという方も多いでしょうし、ご家族のお世話をしながらこうした準備をするのは時間がかかります。
そんなときに、この制度を利用していただければと思っています。
JOY 自分が直接介護するためだけじゃなくて、色々な人の助けを借りて、介護の体制づくりにも使える93日間なんですね。
尾田 そうなんです。また、この制度は93日間を3分割して利用できます。
例えば、はじめに30日間かけて、介護サービスを受ける準備をして、仕事に復帰するとします。
ところが1年後に状況が変わり、新たに施設やサービスを探さなければならなくなった場合でも、残りの63日間を1回で、もしくは2回に分けて使うことができるんです。
秋元 これは、ありがたいですね。
予め長期になるかもしれない介護に備えた仕組みになっているんですね。ちなみに介護を必要とする家族のために、1日だけ休みたいということも頻繁にあると思うんですけど…。
尾田 そうですね。
通院の付き添いや介護サービスに必要な手続きを行うために1日だけ、または半日だけ休みたいときもありますよね。
その場合には、介護休暇という制度があります。
介護を必要とする家族1人につき年間で5日、2人以上なら10日まで休暇を取得できます。
秋元 実態に合わせて、別の制度が設けられているんですね。
尾田 介護と仕事を両立するための制度については、「最大93日間のまとまった期間を計画的に休む介護休業」と、「年間5日の範囲内で必要に応じ1日や半日単位で休める介護休暇」の2つを紹介しましたが、このほかにも所定外労働の免除や短時間勤務などの制度が、育児・介護休業法に基づき用意されています。
自分に必要な制度をその都度選んで、上手に活用していただければと思います。
JOY 話を聞いていると、すごくいい制度だと思うんですけど、世の中には色んな会社があって、人手不足などの理由で制度を設けていない会社もあると思うんですけど、そういった場合にはどうしたらいいんですか?
尾田 勤務先に制度がない場合でも、法律に基づいて、取得したい旨を申し出ることができます。
パートや派遣といった有期雇用労働者の方も要件を満たせば、申し出ることができます。
秋元 でも、やはり取得しづらい雰囲気の職場もありそうですよね。
尾田 育児・介護休業法では、介護休業などの制度を利用させない、または、申出をした従業員に対して解雇や不利益な扱いをすることは禁止されています。
また、同僚からのハラスメントを防止する措置も義務づけられています。もし職場でトラブルになった場合は、勤めている会社のある都道府県の労働局雇用環境・均等部又は均等室に、お電話でご相談下さい。
相談者のプライバシーは守られます。
秋元 ここまで、介護休業などについていろいろ伺ってきましたけど、介護と仕事を両立するためには、どのようなことが大切でしょうか。
尾田 まず、介護に直面する前から、介護休業制度や介護保険制度など、様々な制度の内容を知っておいてほしいと思います。
そして、介護は誰もが直面するものだと思って、事前準備をしておくことが大切です。
介護と聞くと、どうしても大変というイメージが先行しますし、プライベートなことなので、会社に相談できずに追い詰められてしまう方もいますので、その時になって慌てないためにも、制度があることを覚えておいてください。
JOY この制度を知っているってことが大事なんですね。
知っていれば、介護休業を取りますと会社に言えますからね。
尾田 そうですね。会社によっては、法律を上回る制度を設けている場合もあります。
秋元 では、今、介護をされている方に、アドバイスはありますか。
尾田 1人で抱え込まず、どうすれば仕事を辞めずにすむか、各自治体にある地域包括支援センターや他のご家族、そして職場の上司とも十分に話し合って最善の道を探ってみてください。
そして今日ご紹介した介護休業制度などについて、詳しくは、先ほどの都道府県労働局雇用環境・均等部又は均等室へご相談ください。
秋元 私たちの年代は介護については、まだまだ先かな?と思うけど、今後、考えていかないといけない問題なんですよね。
今日、紹介した介護休業制度を知っているか知らないかで全然違うと思いますし、この制度を使って、自分と介護をする方を大事にしてほしいなと思いました。
JOY 今日の話の中で、1年間に10万人の方々が介護のために仕事を辞めているというのは驚いたな。介護休業制度があるという事を今日、知ることができたと思うので、是非、使っていただきたいですね。
この制度のおかげで、介護しやすくなると思うんだよね。
それに、介護は誰の身にも起こりえることだから、職場の仲間が寄り添ってあげられるような会社の空気づくりが進んでいくといいなと思った。
参考:育児・介護休業法・次世代育成支援対策推進法について