立ち直りを支える地域のチカラ・保護司というボランティア
犯罪や非行をした人の中には、再び犯罪に手を染めてしまうケースも多いそうです。犯罪や非行を繰り返さないためには、彼・彼女らを見守り支える地域社会のあたたかい心が必要です。
今回は「立ち直りを支える地域のチカラ・保護司というボランティア」というテーマでお話しました。
秋元 平成29年に、刑法犯で検挙された人は、およそ21万5000人で、そのうち、再犯者は、とても残念なことに、ほぼ半数!
しかも、検挙された人の数は平成16年をピークに年々減っているのに、再犯する人の数はほぼ横ばいで、再犯者の割合は増加しているんです。
ここからは、保護司として31年間、犯罪や非行をした人の立ち直りを支えている、東京の千代田区保護司会の木ノ島希久子さんにお話を伺っていきます。
木ノ島さんは保護司をされていますが、具体的にどのようなお仕事ですか?
木ノ島 保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える更生保護ボランティアです。
犯罪や非行により“保護観察”を受けることになった人の生活を見守り寄り添い、指導をしたり相談に乗ったりすることが主要な活動ですが、犯罪や非行により刑務所や少年院に入った人の釈放後の生活環境を整えたり、犯罪や非行を予防するための地域や学校などでの啓発活動も行っています。
秋元 保護観察はどういう方が対象になるんですか?
木ノ島 事件を起こしてしまい、保護観察処分を受けた少年や、刑務所を仮釈放になった人などです。
JOY 具体的にはどんな支援をされているんですか?
木ノ島 保護観察を受けている人を定期的に家に呼んで面接をしたり、逆に保護司がその人の家に行き、家族も含めて最近の生活状況などについて話を伺ったりします。
また、その時に困っていることがあれば相談に乗り、解決策を一緒に考えたりもします。
保護司は、地域の事情をよく理解しているので、その特性を生かし、保護観察を受けている人の支援を行っています。
秋元 面接の時に気を付けていることはありますか?
木ノ島 まずは、話しやすい雰囲気を作ることだと思っています。
最初は、大人も少年もなかなか心を開いてくれず、目も合わせずに「うん」ぐらいしか言ってくれないこともあります。
少年ですと、私と年齢が離れていますので、彼ら彼女らが興味のある音楽やファッションなどリサーチし、話の間に入れるなどしています。
なかなか難しい場合もありますが、“いつも私はあなたの味方ですよ”と心を開いて接していると、徐々に信頼関係を築いていくことができます。
そうすると、色んな話をしてくれるようになります。
秋元 木ノ島さんが保護司の活動をする中で特に印象に残っていることはどんなことですか?
木ノ島 バイク事故で保護観察付執行猶予となったある男性のことが印象に残っています。
保護観察の期間中、経済的に厳しい時期もありましたが、仕事・彼女・親のことなど色んな話を丁寧に相談に乗りました。
保護観察終了時に本人から、「毎月2回の面接が生活の張りになっていた。愚痴を含めていろんな話を包み隠さず話せたことで心が安らいだ。」と言ってもらえたんですね。
涙が出るほど嬉しく、保護司をしていて良かったと感じた体験でした。
このような経験は多くはないですが、また、がんばって活動していこうと思った出来事でした。
秋元 大変ではあると思いますが、やりがいのある仕事ですね。
木ノ島 以前、アジ研(国連アジア極東犯罪防止研修所)がテーマの時に、世界の一部の国に保護司制度が導入されているというお話があったと思いますが、実は私もアジ研のお手伝いをさせて頂いているんです。
「保護司アジ研協力会」という会の会員として、アジ研の活動や、海外から来る研修生との交流の機会のお手伝いを保護司の立場でさせてもらっています。
特に、これまでの経験では、フィリピンで保護司制度を活性化させるためのプログラムに参加し、後に実際にフィリピンを訪問してフィリピンの保護司さんとも交流することができました。
他にも国際会議に参加したりして、実際に保護司という民間の立場からも世界に保護司制度を紹介する取組のお手伝いをさせてもらっています。
秋元 ところで、保護司って、どんな人たちがなっているんですか?
木ノ島 色んな職業の方がなっています。
会社員だった方、学校の先生だった方、神社やお寺の方、職業にはこだわりはありません。
主婦の方も多いですし、千代田区では2分の1は女性が保護司として活動しています。
ちなみに私は以前、薬剤師として病院に勤務していました。
その知識は、薬物依存のある保護観察中の人と接するときに生かすことができました。
色々な職業の人が保護司になってくれることで、支援の内容が豊かになると思います。
JOY 先ほど、保護司は更生保護ボランティアと言ってましたけど、ボランティアということは、無償ですか?
木ノ島 はい。非常勤の国家公務員で無給です。
それでも、ライフワークのひとつとして続けている方が大勢いるのは、こうした活動が明るい街づくりにつながっていることも理由のひとつだと思います。
また、様々な犯罪が起こる中、私たちも研修を受けますし、対象者からも色んなことを教わるんです。そうすると様々なことを学び、自分自身が成長していくんです。
そして、同じように保護司として活動する方と知り合えること。
これは、自分の中で大きな財産になります。
そういうことを含めて、みんな保護司として頑張っているのだと思います。
JOY 今のお話を聞いていると、無給だけども、自分に返ってくるものが大きいなと感じますね。
秋元 今日は保護司の活動のお話を伺いましたけど、犯罪や非行をした人の立ち直りを支援する地域のチカラとして私たちにできることはありますか?
木ノ島 もちろん、あると思います。
犯罪や非行が起きるのは、私たちが今住んでいる“社会”で起きます。
その方たちが、戻ってきて更生するのは、この“社会”の中なんです。
まずは、偏見を持たず差別をせず、犯罪や非行をした人の更生について理解を深めて頂きたいと思っています。
また、一人でも多くの人たちが、私たち更生保護ボランティアの仲間になってくれるといいなと思っています。
ちょうど、7月は“社会を明るくする運動”の強調月間で、全国で誰でも参加できる様々なイベントが開催されています。
是非、こうしたイベントに参加するなどして、犯罪や非行のない安全で安心な暮らしを支えるために、何ができるか考える機会になればと良いと思っています。
JOY 木ノ島さん、お母さんみたいな優しい雰囲気を持った方で、話を聞きたくなる感じでしたね。
秋元 実際に、保護司としての話を聞いて大変なのかなと思ったけど、その分、やりがいのある仕事なのだと感じたな。