いじめをさせない 見逃さないために
「いじめ」を誰にも相談できず、一人で悩んでいる子供たちがいます。今回は、いじめをさせない、見逃さないために、私たちができることについてお話しました。
秋元 「いじめ」と言ってもいろんな種類があるよね。
JOY そうだね。僕らの頃はまだSNSとかなかったけど、今はインターネットとかメールを使ったいじめも増えていて、外からは見えづらくなっているかもしれないね。
秋元 いじめをさせない、見逃さないために、周りの大人にできることはどんなことなのでしょうか。ここからは法務省・人権擁護局・人権啓発課長の土手敏行さんと、人権擁護委員の小林元子さんに伺います。
小林 早速ですが、お二人に紹介したい作文があります。第38回全国中学生人権作文コンテストで法務事務次官賞を受賞した、当時、中学校3年生の纐纈ほのかさんの作文です。いじめをテーマにしていて、タイトルは「『良い学校』って?」です。冒頭、「『この学校はいじめのない良い学校です』という言葉。あなたには、どう聞こえますか。」という問いかけから始まります。お二人はどう感じますか?
JOY いじめがないんですよね?本当に良い学校なのかなって思いますけど…
小林 この作文を書いた纐纈さんは、中学2年生の頃、何人かの女子から悪口を聞こえるように言われたり、嫌がらせを受けたり、とてもつらい思いをしていたそうです。でもそれを「いじめ」と思ってはいなかったそうです。
秋元 どうしてですか?
小林 彼女はいじめを原因に不登校や自殺に追い込まれる人がいることから、「いじめはもっとひどいもの」だと思っていました。ですから、自分が受けているものはまだ軽いからと、歯をくいしばって毎日学校に通い、耐え続けていたと作文に記しています。そんな時、道徳の授業でいじめを原因に自殺した生徒の遺書を読む機会があったそうです。そのとき纐纈さんは、その遺書に書かれていた「いじめ」の内容と、自分が受けている行為が一緒であることに気づきました。そして、自分が受けていた行為も「いじめ」であることを初めて認識しました。
JOY なるほど。「いじめ」がないかどうかは、周りの人が勝手に決められることではないということですよね。僕も、自分が通っていた学校に「いじめはなかった」と思っていたけど、見えてなかっただけかもしれないな。
小林 人は自分が見聞きした範囲で、いじめの有り無しを語ってしまいがちです。纐纈さんは自分なりの回答として、「いじめがない」と一方的に言い切るのではなく、苦しんでいる人がいるかもしれないと、一人ひとりの気持ちを尊重し、いじめをなくそうと努力している学校を良い学校というのではないかと綴っています。
秋元 では、私たち大人は、いじめをなくすためにどうしたらいいでしょうか?
土手 まずは、ご家庭や学校で思いやりの大切さを教えることです。子供が幼いうちから、相手の立場に立って、気持ちを思いやることがとても大切です。一人ひとりが「もし自分がいじめられたら」と考えることができれば、いじめをなくす一歩につながります。
秋元 人権擁護委員の方が行っている取組もあるんですよね?
小林 はい。全国の法務局・地方法務局では、私たち人権擁護委員などが学校を訪問して人権教室を開催しています。この人権教室では、いじめなどをテーマとして、絵本を題材にしたり、グループワークをしたりして、子どもたちが興味を持ち、自分で考え、思いやりの大切さを感じてもらえるよう工夫しながら活動を行っています。
秋元 もし、子供が学校でいじめにあっていることが分かったときは、保護者や周りの大人はどうしたらいいですか?
土手 まず保護者としては、子供の話を十分に聞いた上で、学級担任などに相談し学校との連携を密にしていただくのが一番です。また、全国の法務局・地方法務局に設置されている専用相談電話【子どもの人権110番】では、人権擁護委員や法務局の職員が相談に応じています。学校と保護者同士では解決できないことも法務局が間に入ることで進展する場合があります。秘密は守ります。お困りの際は、全国共通フリーダイヤル0120-007-110にご相談ください。
秋元 もし子供たちが「なんでもない、平気だよ」と言っていても、しつこいくらいに話を聞いて、サインを見逃さないようにすることが大事かもしれないですね。
JOY 子供をいじめから救ってあげられるのは大人だからね。周囲の大人がしっかりコミュニケーションをとって、みんなで「いじめのない学校」を目指していきましょう!