知財のミカタ〜巡回特許庁〜
私たちの身の回りにあるアイデアやデザインなどは“知的財産(知財)”と呼ばれ、上手に活用すればビジネスに活かすことができます。今回は、ちょっと難しそうな、この“知財”について教えていただきました。
JOY 新しいアイデアを思いついたら、それでちょっと稼ぎたいなっていう気持ちは誰にでもあるんじゃない?無いものを生み出すってことは、チャンスがあるってことだからね!
秋元 そうだね。でも自分では新しいアイデアをひらめいた!と思っても、先に誰かが考えていた…なんてこともありそう。ここからは、知財、いわゆる知的財産について、特許庁・普及支援課長の武田一彦さんに伺います。
武田 知的財産とは、人の知的創作活動によって生み出されたアイデアやデザインなどをいいます。私たちの暮らしはたくさんの物で溢れていて、例えばこのスタジオにあるマイクやヘッドフォン、スマホやボールペンなども、アイデアやデザインなどの知的財産をもとに作られています。このスマホ1台だけでも、およそ10万ものアイデアや多くのデザインが詰まっていると言われているんですよ。
JOY スマホ1台で10万もですか!
どういう部分が知的財産になるんですか?
武田 スマホには電話機能の他にも、カメラやメールなど様々な機能が付いていますよね。今では当たり前ですが、この一つ一つがアイデアによって生み出されたもので、知的財産なんです。そしてこの知的財産の中には、勝手に使われたり、真似されたりしないように、「知的財産権制度」で守られているものがあるんです。知的財産権には色々な種類がありますが、特許庁では、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を所管しています。
JOY 特許権?実用新案権?難しいですね…
武田 特許権は発明やアイデアを守るもので、スマホで言えば、タッチパネルなどは、特許を受けた発明やアイデアをもとに作られています。それに対し、実用新案権はものの形状や構造などのアイデアを守るもので、スマホの保護シートなどでは、実用新案登録を受けたアイデアが使われています。他にも主婦の皆さんが考案し実用新案登録を受けたアイデアによって、台所用品や掃除用具などたくさんの便利グッズが作られています。
JOY なるほど。じゃあ、スリッパの裏に雑巾をくっつけて、歩きながら掃除できる…みたいな便利グッズのアイデアは実用新案権になるのか。
秋元 では、意匠権と商標権というのはどんなものですか?
武田 意匠権は物の形、模様、色などのデザインを守るもので、スマホで言えば本体の形や、アプリの操作画面、表示画面などには、意匠登録を受けたデザインもたくさんあります。商標権は商品やサービスにつける名前やマークを守るもので、車や高級ブランドのバッグなどに使われている名前やマークの多くは商標として登録されています。
JOY 例えば、僕が今度描こうとしているとっておきのイラストをTシャツにしたら、それは意匠ですか?
武田 イラストだけだと絵そのものなのでダメですが、イラストがプリントされたTシャツだと、それは意匠になります。ただし、そのためには意匠権を取得することが必要です。そのデザインを描いた書類を特許庁に提出していただき、審査をクリアすれば、そのTシャツの意匠権を国から認められるんです。
秋元 そもそも「知的財産権制度」は何のためにあるのですか?
武田 はい。知的財産権制度の目的は、無断使用や勝手に真似されるのを防止することですが、それだけではありません。例えば特許権の場合、発明者がこれを取得すれば、一定期間、発明利用の独占が認められ、その市場で優位な立場を確保できます。しかしその一方で、特許権を取得すると、その発明が公開されます。
JOY えっ、公開されちゃうんですか?
武田 公開された発明をヒントに、多くの人が新たな技術開発をして産業が発展することを目的にしているんです。携帯電話も昔は肩から掛けるほど大きかったわけですが、発明の積み重ねで小型になって、皆さんの生活が便利になっていますよね。このように特許権には、技術開発を促進する役割もあるんです。
JOY 公開することで、もっと素晴らしいアイデアが生まれるんですね!
武田 こうした知的財産は、上手に活用すればビジネスに活かすことができます。例えば特許権を取得していれば、他社から真似をされてしまった時に損害賠償請求などの法的な措置をとることができますし、商標権の場合、権利の取得を通じて、自社ブランドの構築や上手なPRをすることができて、販売力の向上につながります。特許庁では、多くの方に知的財産に対する見方を変えていただき、知的財産権制度を身近に感じていただくために、【知財のミカタ〜巡回特許庁〜】という取組を全国各地で行っているんです。
秋元 巡回特許庁では、どんなことを行っているんですか?
武田 特許庁の職員が全国各地に出向いて、知的財産権制度や特許庁の支援策をセミナーで紹介したり、特許や意匠をすでに出願した人に特許庁の審査官が面接してアドバイスをしたりなど、様々なことを行っています。各地域のイベント内容などは、ぜひ【知財のミカタ〜巡回特許庁〜】の公式ホームページでご確認ください。
秋元 知財についての知識があれば、アイデアを思いついた時に役に立ちますから、ぜひ活用してほしいですね。
JOY それに、自分でも何か考えてみよう、発明してみようって思うきっかけにもなりそうだね。僕もTシャツの意匠権を取りに特許庁に行かなきゃ!