子供のための里親制度
世の中には、様々な事情によって家庭で暮らせない子供たちがいます。今回は、そうした子供を家庭に迎え入れて、健やかな成長のサポートをする『里親制度』についてお話しました。
JOY 里親って、海外の映画なんかで見たりするけど、日本ではどんな状況なんだろう?
秋元 私もだけど、言葉は聞いたことがあっても、実際はよく知らないという人が多そうだよね。ここからは厚生労働省 子ども家庭局 家庭福祉課の島玲志さんにお話を伺います。様々な事情で親と暮らせない子供がいるということですが、実際どれくらいいるんでしょうか?
島 はい。親が亡くなったり、親から虐待されたり、経済的に親と一緒に暮らせないなどの理由で、里親や乳児院、児童養護施設などで生活をしている18歳未満の子供は、昨年3月末の時点で約4万5000人います。このうち里親の家庭で生活をしている子どもは約5000人と、わずか1割ほどです。
JOY 1割ですか!それは少ないですね。
島 子供が成長する上で、できる限り家庭的な環境で育つ機会が増えることは大切です。ですが、里親制度があまりよく知られていないことや、経済面や養育面での不安などから、里親が不足しているんです。
秋元 確かに、育てる側の責任を考えると、不安というのもわかる気がしますけど…。
JOY でも、家庭で育つことで、子供たちが受けるいい影響ってたくさんありそうですよね。
島 そうですね。例えば、幼い頃に大人との間で信頼関係を築けなかったり、虐待を受けたりした子供は、自分に自信が持てない、人間関係をうまく築けないなどの課題を抱えている場合があります。そうした子供が、温かく安定した家庭で育つことで、自分を受け入れてくれる大人や場所があることを感じて、安心感を得て、自分に自信が持てるようになることが期待できるんです。
秋元 『里親制度』には、どのような種類があるのでしょうか?
島 いくつか種類がありますが、様々な事情により家族と暮らせない子供を一定期間、自分の家庭に迎え入れて育てる里親のことを【養育里親】といいます。里親というと、幼い子供を成人させるまで長期に渡って育てたり、養子縁組をして育てるというイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、【養育里親】の中には、数週間や1年以内での受け入れを行う【短期里親】というものもあります。また、自治体によっては、週末のみ受け入れを行う【週末里親】や、夏休みやお正月などの間のみ受け入れる【季節里親】というものもあります。
JOY へえ!短期があるのは知らなかった!それなら、里親になる人たちも自分たちの環境と合わせて選べるわけだから、経済面の心配も無くなるし、ずっと面倒を見るということに不安がある人でも、受け入れやすいですね。
島 実際に里親をされた方に伺うと、「里親だからといって特別なことをしてあげる必要はなく、子供と普通に生活すればよいんだ」という話をよく聞きます。「日々の暮らしの中で起こる、たわいない出来事の一つ一つを子供に体験させてあげること、また、そうした場に一緒にいられることが、里親になってよかったこと」とおっしゃる方が多いです。
JOY 一緒に過ごすことが大事で、特別なことをする必要はないんだね。ちなみに、里親になるのに資格などは必要ですか?
島 一定の要件を満たしていれば、特別な資格は必要ありません。里親に望まれることは、子供が大好きで明るく健康的な家庭であることです。独身の方や共働きの夫婦では里親になれないという決まりもありませんし、里親の年齢に上限を設けていません。養育可能な年齢であるかどうかで判断しています。
秋元 独身でも里親になれるんですね。一定の要件とはどういったことですか?
島 例えば、子供の養育についての理解と熱意、子供への豊かな愛情があること、経済的に困窮していないこと、都道府県などが行う養育里親研修を修了していることなどです。こうした要件を満たせば、里親名簿に登録されます。その後、受け入れ準備が整えば、子供との引き合わせが行われ、お互い納得の上で里親委託がはじまります。
秋元 なるほど。里親に対してはどんなサポートがあるんでしょうか?
島 はい。例えば養育里親の場合、子供の養育に必要な里親手当が月に8万6000円、子供の食費や洋服代などの生活費が月に約5万円、その他にも、教育費や医療費などが実費で支給されます。また、子供のケガや病気、不測の事態の発生などに対応できるよう、養育里親研修で学べるほか、子供を育てる中で悩みや不安がある場合に相談できるサポート体制があります。
秋元 それは心強いですね。お話を聞いて、里親になりたいと思ったら、まずはどうしたらいいですか?
島 里親に興味のある方は、まずは児童相談所にご相談ください。児童相談所全国共通ダイヤル【189】番にお電話していただければ、お近くの児童相談所につながります。子供の健やかな成長のために、そして明るい未来のために、皆さまにもできることがあります。里親制度にまずは関心を持っていただければと思います。
JOY そうだね。もっともっと多くの人に里親について知ってもらって、救われる子供が増えるといいよね。