身近にひそむ薬物乱用
友人や知人からの誘いを断れずに、大麻などの違法な薬物に手を出してしまう若者が増えているそうです。今回は、『身近にひそむ薬物乱用』をテーマにお届けしました。
JOY 薬物は絶対にダメ!って、誰もが知っているのに、手を出してしまう人がいるのはどうしてなんだろう?
秋元 心の弱さだったり、「一度だけなら大丈夫」と軽く考えてしまったりするのかな…。ここからは、厚生労働省 監視指導・麻薬対策課の牧角一信さんにお話を伺います。牧角さん、まずは薬物乱用について教えてください。
牧角 はい。薬物乱用とは、社会のルールからはずれた方法や目的で使うことで、乱用される薬物は主に覚せい剤や大麻(マリファナ)、危険ドラッグなどです。こうした薬物をなぜ乱用してはいけないのかというと、人間が生活していく上で最も大切な脳を侵して、精神障害を発症し、依存症を引き起こす原因になるからです。一度ダメージを受けた脳は、決して元の状態には戻りませんし、脳以外の臓器にも悪影響があります。
JOY 1回使っただけでも“乱用”になるんですか?
牧角 そうです。覚醒剤、大麻、危険ドラッグなどの違法な薬物は、1回の使用でも乱用になります。医薬品についても、医療以外の目的で、大量に服用したり、「遊び」目的に使えば乱用になります。
秋元 実際、薬物を乱用している人はどれくらいいるのでしょうか?
牧角 日本で薬物乱用により検挙されている人は、平成28年に1万4000人です。これはほぼ横ばいですが、大麻で検挙されている人は3年連続で増加していて、ほぼ半数が10代、20代の若者なんです!
JOY えっ、10代もですか!?
牧角 そうなんです。若者にとって大麻などの薬物は、大人が考えているよりも身近なようで、20代のおよそ15人に1人、10代の28人に1人が「過去1年以内に薬物使用経験のある知人がいる」と回答している調査もあります。
JOY 本当ですか!クラスに1人くらいの計算になっちゃいますよね。
秋元 なぜ、大麻に手を出す若者が後を絶たないのですか?
牧角 インターネットなどの間違った情報を鵜呑みにしてしまっていることも原因のひとつです。例えば、「タバコより身体に悪くない」とか「依存性がない」などです。でも大麻が脳に悪影響を及ぼすことは研究で明らかになっていますし、大麻を乱用すると、時間や空間の感覚がゆがんだり、イライラしたり不安になったり、集中力がなくなり情緒が不安定になります。そして長く続けていると、幻覚や妄想などの症状が出たり、物事を考えられなくなったり、何事にも無気力になったりします。
JOY 怖い!軽い気持ちがきっかけで、取り返しのつかないことになってしまうんですね。
牧角 薬物の入手の可能性について調査したところ、10代のおよそ4人に1人が「なんとか手に入る」「簡単に手に入る」と回答していて、「知人を通じて」とか「ネットで簡単に買える」と考えているようです。しかし大麻は、持っているだけで罰せられます。もちろん、譲り受けたり、譲り渡したりすることも犯罪です。
秋元 どういうことがきっかけで、大麻をやってしまうのでしょうか?
牧角 友達から誘われて、興味本位で乱用してしまう場合が多いです。また、「断ったら悪い」「仲間はずれにされたくない」などという理由で手を出してしまう場合もあります。
JOY 仲間はずれにされたくない気持ちはわかるけど、こんなことに誘ってくる仲間とは自分から離れるべきですよ!
秋元 もしも仲間から誘われた時には、どうすればいいんでしょうか?
牧角 はっきり、きっぱり断ってください。少しでも迷っている様子を見せるとまた誘われてしまいます。または、「今日は別の用事があるから」などと言って、その場から離れてください。誘われてしまっている状態から抜け出すことが大切です。
秋元 自分で解決できない場合はどうしたらいいですか?
牧角 薬物について悩みや疑問を感じた時は、周囲の信頼できる大人や、専門家に相談してください。各都道府県の精神保健福祉センターなどに、秘密厳守で相談にのってくれる窓口が設置されています。窓口に相談したからと言って、すぐに警察に捕まるようなことはありません。まず、相談内容をよく聞いて、適切に対処する方法を一緒に考えます。安心して、少しでも早く相談してください。相談窓口の一覧は、厚生労働省のホームページで公開しています。
JOY 誘われても、きっぱり断ることが大事だよね。自分の未来のためにね!
秋元 ほんの少しの勇気と強さを持って、自分を大切にしてほしいですね。