03/10さだまさしさんの作詞・作曲法
2019/3/10 update
毎週ゲストをお招きして、その方ならではのパーソナルな音楽の世界を辿らせていただきます。ゲストは先週に引き続き、さだまさしさんです。
「何か例にとっていきますか?」
「音響ハウスっていうスタジオで、僕、ずっとレコーディングしていたんだけど、そこの1階の喫茶に中島潔さんという絵描きさんの絵が飾ってあったのね。かわいらしい『雨やどり』っていう絵で、雨が降ってくる柳の家の軒下で、お使いに行く途中の風呂敷持った女の子がね、下駄の鼻緒が折れて、途方に暮れている絵があったのね。“かわいいな。これを買おう”と思って、“この絵を売ってください”って言ったの。店長さんに、“大丈夫だよ、どうせ売れないんだし、持って帰っていいよ!”って言われたんだけど、ダメだよね。僕は絵を買うのが初めてで、“一体絵ってどれくらいするんだろう”と思って。その頃、僕が精いっぱい出せるお金の20万円を持って、“これで売ってください”って言ったの。それが中島潔さんの絵が売れた最初だったんだって。それから、中島潔さんは有名な絵描きさんになられたんだけど、第1回の個展をやる時に、絵を最初に評価してくれたのがさだまさしだということで、推薦文を書いてほしいと言われたの。僕、中島潔さんの絵が大好きで、この人の絵の中には、いつも風が吹いているなと思って、“風の画家 中島潔”というタイトルの推薦文を書いたら、それが中島潔さんの代名詞になりましたね。」
「僕が付けたんですよ。エッヘン。そういういきさつがあって、『雨やどり』っていうのがいいなと思ったんだけども、漫画的な歌を書こうと思って。“いい男が雨やどりしてこないかしら?”とか。この感覚は今でも女の子は一緒なんだろうな。そこへたまたま男の人が雨やどりしてきたと。あまりかわいそうだったんで、傘の代わりにハンカチを貸してあげたけど、傘の方がよかったかなと、そういうどうてもいいところから、物語が始まるのね。」
「最初はメロディーだね。雨が降る。ピチョン、ピチョンっていうギターの感じが出ないかなと思って、コードのDを雨だれが落ちてくるような感じで作りました。よくシューベルトが使う手で、コードは変わっていくんだけど、主旋律は変わらないというあの手法が一番似合っているかなと思って、そういう風にして行くと、2つ目のコードが決まるよね。3つ目のコードはだいたい自然に自分の手癖で決まるんだよな。するとメロディーが動いていくから、ある程度メロディーが動いたら歌詞を乗っけていくの。“それはまだ私が神様を信じなかった頃”と何の根拠もなく、自然に出てきたんだよね。そうか、この子はどこかで神様を信じるんだなと自分で思うわけよ。この恋が神様を信じるきっかけになるのかなと想像していくわけ。“9月のとある木曜日に雨が降りまして こんな日に素敵な彼が現れないかと 思ったところへあなたが雨やどり”。あ!これでできたなと。あとはこの2人がどういう恋をしていくかを書いていけばいいんで、神様を信じさせたいから、“そこは苦しい時だけの神頼み”でね、お願いしたら、初詣で晴着を踏んづけた人がいて、それが彼だった。恋がはじまるけど、お母さんも、お兄さんも誰も信じないというのが2番に入ってくる。家族に会わせたら、男の人は、気に入られちゃったもんだから、この人と結婚したいですって言ったら、その場で決まっちゃったんで、この子は気を失ってしまう。気が付いたら、あなたの腕に私が雨やどりしていましたっていう物語なんだよね。後半は涙もかかってくるんだけどね。」
「こういう風にうまく行くとは限らないけれども、まずはサウンドを探すね。そして、歌詞を這わしていく。」
「しょっちゅうだよ。スラスラ書けることの方がおかしいじゃない?3日ぐらい徹夜してさ、ようやく3行絞り出してさ、1週間ツアーやって、家に帰ってきて、そうそう、この間の作りかけの曲を作ろうと思って、最初にする作業は、その3行を消すところから始まるからね。積み重ねては壊し、積み重ねては壊しだよ。僕、ヴァイオリンっていう楽器を子供の頃に教わってなかったら、この根性はつかなかったかもしれない。ヴァイオリンで反復の練習方法に慣れているから、同じ作業を繰り返すことが苦じゃないんだろうな。それはヴァイオリンに感謝しないといけないと思う。だから、詞を書いていても、曲を書いていても、面倒くさくならないね。書けないって思うことがあっても、今日はもう飲むかっていう日があっても、締め切りっていうものがあるしね。」
「絞り出すんだろうな〜。締め切り前は、かっこつけているんだよ。もっといいものが作りたいとか、もっといい言葉を選べないかとか、もっとかっこよく歌えないかとか、そういう架空の自分を求めた瞬間に歌なんて書けないね。締め切りは自分のすべての虚飾をそぎ落としてくれるすばらしい兵器だね。今日書かないとダメなんだもん。書けって言われたら、書くよね。」
「たぶんね。頭の中で妥協点を見つけているんだろうな。はい!締め切りだよって言われた時に、泣きながら、その妥協点で書いているんだろうね。歌作りって、妥協の産物ですよね。最高のものしか書かない、歌わないって決めたら、一生、アルバム作れないと思う。最高の名曲作ったら、歌、やめる。全然悔いないね、やめても。」
「いい曲を書きたいです!いけね〜!綾ちゃんに1曲書く約束を果たしてないのを今、思い出しちゃったよ〜。ごめんね。」
「がんばる!」
なんと!さださんに曲を書いていただくことになっているようですね。すごく楽しみです!
さだまさしさんは、アコースティックコンサートの真っ最中です。そして、5月からは『さだまさしコンサートツアー2019』がスタートします。日程について詳しくは、オフィシャルサイトでチェックしてくださいね。
皆さんからのメッセージをご紹介♪
「先日、中1の冬から片思いしていた男子に告白しました。結果は、“ごめん、俺、他に好きな人いるんだ”でした。彼は塾で知り合いましたが中学校は違うし、付き合えるわけないよね…と思っていましたが、やっぱり本当に振られるとショックが隠せませんでした。あーやさんの『明日』の中の、 “きっとこの街なら どこかですれちがうそんなときは笑いながら 逢えたらいいのに もう泣かない もう負けない 想い出を越えられる 明日があるから”という歌詞に共感して、今はずっと聴いています。何せ2年間もずっと一途に片思いしていたので、今すぐに立ち直ることは難しいと思うけど、ひとしきり泣いたら立ち直って、また歩き出そうと思います!あーやさんは、中学時代の恋のエピソードなどありますか?」
平原さん
「ない。いや、ある、あるよ!私は中学生で付き合うなんて、ありえないと思っていた。そんなもんよ。昭和の女は(笑)この間、イクスピアリで映画を観た時に、高校生の女の子たちが、短いスカートでバッチリメイクして、大きなイヤリング付けていたのね。もう大人だなと思っちゃってさ。ここはプロムか?みたいな。プロムってわかる?アメリカンな感じがして、日本も変わっていくのかなと思っちゃいましたよ。それが当たり前になっちゃったのかな。おませさんよね。自由だからいいけどね。表現の自由だから。
木花咲耶姫さんさ、まだ中3だぜ。34歳のお姉さんがまだ結婚していないんだよ。あなたと20歳違うんだよ?自分の好きなこと、やるべきことをまずやるべきよ!それから、恋しなさい。でも、恋は素敵だよね。この好きな男の子がね、“ごめん、俺、他に好きな人いるんだ”という言い方はよかった。素敵な人だと思う。高校生になったら、また素敵な人がいるんじゃない?一瞬、一瞬を大切に生きてほしいなと思います。」
番組では皆さんからのメッセージをお待ちしています!あなたが一番好きな平原綾香さんの曲は何ですか?リクエストを添えて、メッセージをお寄せください。
先週、曲の作り方について、質問しました。テーマから決めるって話でしたが、歌詞の作り方についてもじっくり聞きたいなと思うんですけど…。
「何か例にとっていきますか?」
『雨やどり』はどうやって作ったんですか?
「音響ハウスっていうスタジオで、僕、ずっとレコーディングしていたんだけど、そこの1階の喫茶に中島潔さんという絵描きさんの絵が飾ってあったのね。かわいらしい『雨やどり』っていう絵で、雨が降ってくる柳の家の軒下で、お使いに行く途中の風呂敷持った女の子がね、下駄の鼻緒が折れて、途方に暮れている絵があったのね。“かわいいな。これを買おう”と思って、“この絵を売ってください”って言ったの。店長さんに、“大丈夫だよ、どうせ売れないんだし、持って帰っていいよ!”って言われたんだけど、ダメだよね。僕は絵を買うのが初めてで、“一体絵ってどれくらいするんだろう”と思って。その頃、僕が精いっぱい出せるお金の20万円を持って、“これで売ってください”って言ったの。それが中島潔さんの絵が売れた最初だったんだって。それから、中島潔さんは有名な絵描きさんになられたんだけど、第1回の個展をやる時に、絵を最初に評価してくれたのがさだまさしだということで、推薦文を書いてほしいと言われたの。僕、中島潔さんの絵が大好きで、この人の絵の中には、いつも風が吹いているなと思って、“風の画家 中島潔”というタイトルの推薦文を書いたら、それが中島潔さんの代名詞になりましたね。」
本当だ〜。今、ネットで調べたら、風の画家って書いてありますね。
「僕が付けたんですよ。エッヘン。そういういきさつがあって、『雨やどり』っていうのがいいなと思ったんだけども、漫画的な歌を書こうと思って。“いい男が雨やどりしてこないかしら?”とか。この感覚は今でも女の子は一緒なんだろうな。そこへたまたま男の人が雨やどりしてきたと。あまりかわいそうだったんで、傘の代わりにハンカチを貸してあげたけど、傘の方がよかったかなと、そういうどうてもいいところから、物語が始まるのね。」
頭の中で想像して、お話を作っていくんですか?
「最初はメロディーだね。雨が降る。ピチョン、ピチョンっていうギターの感じが出ないかなと思って、コードのDを雨だれが落ちてくるような感じで作りました。よくシューベルトが使う手で、コードは変わっていくんだけど、主旋律は変わらないというあの手法が一番似合っているかなと思って、そういう風にして行くと、2つ目のコードが決まるよね。3つ目のコードはだいたい自然に自分の手癖で決まるんだよな。するとメロディーが動いていくから、ある程度メロディーが動いたら歌詞を乗っけていくの。“それはまだ私が神様を信じなかった頃”と何の根拠もなく、自然に出てきたんだよね。そうか、この子はどこかで神様を信じるんだなと自分で思うわけよ。この恋が神様を信じるきっかけになるのかなと想像していくわけ。“9月のとある木曜日に雨が降りまして こんな日に素敵な彼が現れないかと 思ったところへあなたが雨やどり”。あ!これでできたなと。あとはこの2人がどういう恋をしていくかを書いていけばいいんで、神様を信じさせたいから、“そこは苦しい時だけの神頼み”でね、お願いしたら、初詣で晴着を踏んづけた人がいて、それが彼だった。恋がはじまるけど、お母さんも、お兄さんも誰も信じないというのが2番に入ってくる。家族に会わせたら、男の人は、気に入られちゃったもんだから、この人と結婚したいですって言ったら、その場で決まっちゃったんで、この子は気を失ってしまう。気が付いたら、あなたの腕に私が雨やどりしていましたっていう物語なんだよね。後半は涙もかかってくるんだけどね。」
いい曲ですよね〜。
「こういう風にうまく行くとは限らないけれども、まずはサウンドを探すね。そして、歌詞を這わしていく。」
「あ〜。書けない!」ってならないんですか?
「しょっちゅうだよ。スラスラ書けることの方がおかしいじゃない?3日ぐらい徹夜してさ、ようやく3行絞り出してさ、1週間ツアーやって、家に帰ってきて、そうそう、この間の作りかけの曲を作ろうと思って、最初にする作業は、その3行を消すところから始まるからね。積み重ねては壊し、積み重ねては壊しだよ。僕、ヴァイオリンっていう楽器を子供の頃に教わってなかったら、この根性はつかなかったかもしれない。ヴァイオリンで反復の練習方法に慣れているから、同じ作業を繰り返すことが苦じゃないんだろうな。それはヴァイオリンに感謝しないといけないと思う。だから、詞を書いていても、曲を書いていても、面倒くさくならないね。書けないって思うことがあっても、今日はもう飲むかっていう日があっても、締め切りっていうものがあるしね。」
締め切りがあると書けるのはなぜですか?
「絞り出すんだろうな〜。締め切り前は、かっこつけているんだよ。もっといいものが作りたいとか、もっといい言葉を選べないかとか、もっとかっこよく歌えないかとか、そういう架空の自分を求めた瞬間に歌なんて書けないね。締め切りは自分のすべての虚飾をそぎ落としてくれるすばらしい兵器だね。今日書かないとダメなんだもん。書けって言われたら、書くよね。」
もがいている時間も意味があることなんですね。
「たぶんね。頭の中で妥協点を見つけているんだろうな。はい!締め切りだよって言われた時に、泣きながら、その妥協点で書いているんだろうね。歌作りって、妥協の産物ですよね。最高のものしか書かない、歌わないって決めたら、一生、アルバム作れないと思う。最高の名曲作ったら、歌、やめる。全然悔いないね、やめても。」
そろそろ、お時間なんです。最後に恒例の質問です。今後の夢や目標を教えてください。
「いい曲を書きたいです!いけね〜!綾ちゃんに1曲書く約束を果たしてないのを今、思い出しちゃったよ〜。ごめんね。」
忘れてなかったんですね。家族一同、そしてファンのみんな、手ぐすねを引いて待っております。
「がんばる!」
なんと!さださんに曲を書いていただくことになっているようですね。すごく楽しみです!
さだまさしさんは、アコースティックコンサートの真っ最中です。そして、5月からは『さだまさしコンサートツアー2019』がスタートします。日程について詳しくは、オフィシャルサイトでチェックしてくださいね。
皆さんからのメッセージをご紹介♪
ラジオネーム 木花咲耶姫さん
「先日、中1の冬から片思いしていた男子に告白しました。結果は、“ごめん、俺、他に好きな人いるんだ”でした。彼は塾で知り合いましたが中学校は違うし、付き合えるわけないよね…と思っていましたが、やっぱり本当に振られるとショックが隠せませんでした。あーやさんの『明日』の中の、 “きっとこの街なら どこかですれちがうそんなときは笑いながら 逢えたらいいのに もう泣かない もう負けない 想い出を越えられる 明日があるから”という歌詞に共感して、今はずっと聴いています。何せ2年間もずっと一途に片思いしていたので、今すぐに立ち直ることは難しいと思うけど、ひとしきり泣いたら立ち直って、また歩き出そうと思います!あーやさんは、中学時代の恋のエピソードなどありますか?」
平原さん
「ない。いや、ある、あるよ!私は中学生で付き合うなんて、ありえないと思っていた。そんなもんよ。昭和の女は(笑)この間、イクスピアリで映画を観た時に、高校生の女の子たちが、短いスカートでバッチリメイクして、大きなイヤリング付けていたのね。もう大人だなと思っちゃってさ。ここはプロムか?みたいな。プロムってわかる?アメリカンな感じがして、日本も変わっていくのかなと思っちゃいましたよ。それが当たり前になっちゃったのかな。おませさんよね。自由だからいいけどね。表現の自由だから。
木花咲耶姫さんさ、まだ中3だぜ。34歳のお姉さんがまだ結婚していないんだよ。あなたと20歳違うんだよ?自分の好きなこと、やるべきことをまずやるべきよ!それから、恋しなさい。でも、恋は素敵だよね。この好きな男の子がね、“ごめん、俺、他に好きな人いるんだ”という言い方はよかった。素敵な人だと思う。高校生になったら、また素敵な人がいるんじゃない?一瞬、一瞬を大切に生きてほしいなと思います。」
番組では皆さんからのメッセージをお待ちしています!あなたが一番好きな平原綾香さんの曲は何ですか?リクエストを添えて、メッセージをお寄せください。