2024.12.21
GUEST
ダークスカイ・ジャパン代表
(東洋大学准教授)
越智信彰さん
もともとダークスカイ・インターナショナルという親組織は、1988年にアメリカで設立されたNPOで、世界24カ国に80以上の支部があり、その日本支部がこのダークスカイ・ジャパンというわけなんです。具体的には光害のフィールド調査や、啓発活動、さらに星空保護区認定制度も行なわれているんだとか!
あらためてこの光害とはどういうものなのかというと、照明を過剰に明るくしてしまったり、光の向きや点灯時間が不適切で周りの自然環境や生活環境に悪影響を及ぼしている状況のことを指します。そのことで星がきれいに見えなくなるだけでなく、様々なトラブルが起きることに…。たとえば夜行性動物・昆虫・農作物といった生態系への影響、まぶしさや睡眠を邪魔する光といった生活への影響、そしてエネルギーの浪費などなど実は誰にとっても身近で起こっている、社会的に取り組むべき環境問題なんですね。
実例としては、生まれたばかりの海亀の赤ちゃんは「一番明るい方向に歩きなさい」という本能が備わっているんだそうです。本来、自然の真っ暗な環境であれば月や星あかりのおかげで海が一番明るいのですが…街の過剰な明るさがあると、「あっちが海だ」と思ってそちらに向かって歩き始めてしまいます。このように実は知らぬところでも問題が起きている…それが私たちの生活にも欠かせない”明かり”だったりするんですね。
そもそもこういった「光害」に越智さんが興味を持たれるようになったきっかけはなんだったのでしょうか??それは2007年頃に見かけたある新聞記事だったといいます。「自治体が光害を抑える条例を作ろうとしているが、関係者の理解が得られず頓挫している」という内容だったそうで、越智さんなりに調べたところ当時はあまり情報がなく…そこでなんとご自身で町の現状を調査することに!!「照度計を使って、道路・歩道・公園、いたるところで明るさを測ってみたんですが、たったの1~2時間歩き回っただけだったのにものすごく衝撃を受けました。ほとんど人なんて歩いていないのにものすごく明るく照らされていたり、逆にそこそこ人通りがあるのに暗いまま、危険を感じる歩道があったり。省エネルギーや地球温暖化対策が叫ばれている世の中なのに、照明に関してはあまりにも無駄が多いんじゃないか、しかも一般の人たちが全く気にしていないのは、どういうことなんだろう」ということで本格的に研究テーマとされたんだとか…!越智さん、すごい熱量です!!
番組後半では、そんな越智さんにとっての忘れられない星空の思い出も伺いました。お答えは25年くらい前、大学院生だった時にご覧になった「バイカル湖での星空」★ 当時、ニュートリノ観測実験の手伝いに約1ヶ月間参加された時のこと。マイナス20度にも達する真冬のバイカル湖での作業はとても辛かったそうですが、周囲の町明かりは一切ない光害ゼロの環境で、頭上に広がる星空は…「本当に素晴らしかったです!私は子どもの頃天文少年だったわけでもなく、満天の星なんて見たこともなかったのですが、この時は”星ってこんなにあるんだ!”ととても感動して、星を見ているだけで涙が溢れてきて、今すごく辛い状況だけど、この星空を見れただけで本当に来てよかったと心の底から思いました」と越智さん。
「星には、そういう力がある」と発見されたということで、もしかしたらその時の経験が、今の光害を向き合う最初のきっかけにもなっていたのかもしれませんね…☆ということで、まだまだお話は尽きません!越智さんには来週もお話を伺いますよ♪お楽しみに!
♪ When You Wish Upon A Star / クリフ・エドワーズ
♪ 火星水路 / 遊佐未森