
「今の能登に足を運んでほしい」震災後もおもてなしを続ける お宿たなか
今回取材したのは石川県輪島市中心街にある「お宿たなか」。創業60年。いわゆる“大人の隠れ宿”として長年ファンに愛され続けるお宿。ミシュラン2つ星を獲得しています。
輪島市中心街は、去年1月の能登半島地震で甚大な被害を受けましたが、木造3階建ての「お宿たなか」は建物の被害は少なく、1か月後の2月1日に営業を再開。復旧復興に携わる方はもちろん、観光で能登を応援したいという方におもてなしを続けています。
お宿たなか、代表の田中孝一さんに伺いました。
「地震により建物自体そんなにひどい被害はなかったんです。先代の親父の代に少し建物を大きくしたんですが、元々うちの父親は山仕事の木こりをしていて、この大きな家を建てる時に、ここは川のそばで地盤が柔らかいため松の杭を50本近く入れていたんです。そのおかげで、木造3階建てであれだけ大きな揺れだと普通は倒壊するらしいが、家を判定しに来た建築士さんの話を聞くと「あの大きな揺れで3階建の建物で倒れないのは不思議だ。それは間違いなく下に杭が入っているから」とすぐ指摘されたので、父親は先見の明じゃないが、それを考えてくれたのかなという想いはあります。
そして2月1日から営業を始めたんですが、一番思ったのは、こういう大きな災害の時、外からの力が必要な時に、やはり「泊る場所」は、最初に行政が考えるべきじゃないかなと。生きている宿泊施設、営業できる宿泊施設の部屋数を最初に把握すれば良かったんですけど、「部屋をすぐ行政で仮押さえするのでとっておいてください」という連絡が一切なかったので。その復旧復興が遅れれば遅れるほど人口は減っていくんです。そういう対応のスピードが速ければそんなに急激な人口の減少はなかったと思うんです。これからこういう大きな災害があったときに、遠隔地で人が入ってこないとなかなか復興復旧できないというところは、やっぱり第一にそれ(宿泊施設の確保)を考えるべきかなって思います。」
輪島の復旧作業がなかなか進まない理由はまさに「宿泊施設」の問題があります。ボランティアや作業員が、金沢と能登を往復せざるを得ない状況が今も続いています。
またお宿たなかは、去年9月の豪雨で床上浸水の被害も受けています。田中さんは「その時は心が折れた」と話しますが、自分たちで泥を出し、なんとその5日後には宿を再開させたそうです。それも、復旧復興に携わる人に「寝泊りする場所を」という想いで取り組んだと話します。
そんな「お宿たなか」。本当にこだわり抜いたお宿です。料理は能登の食材をふんだんに使い、料理を彩る器は「輪島塗」。柱や床も総漆塗り。壁には珠洲市で取れた珪藻土が使われています。田中さんにそのこだわりについて伺いました。
「この宿は、能登・輪島がコンセプトなので、玄関をくぐった時点で輪島を体感していただけると思います。漆には抗菌作用がすごくあって、湿気があれば湿気を吸い、乾燥してれば湿気を出してくれる。だからあえてスリッパを置かなかったんです。素足で漆を感じていただきたい。ですから、フローリングと違い冬でも冷たくない。そういうことを体感していただくという想いで宿を建てました。」
「それから能登の素晴らしい食材がいっぱいあるんです。冬の能登はすごくおいしい。
ブリから始まってアンコウ、ナマコ、カニ、タラもおいしい。
秋になれば松茸も美味しいし、この地域には実は七面鳥を育てていて、お宿たなかでは【天然キノコの七面鳥鍋】を出しているんです。七面鳥の出汁ってすごくおいしい甘い出汁で。締めはラーメンなんですけど、地元の薄口醤油を少し垂らすだけで絶品なラーメンの出汁になるんで。この宿だけなんですよ。キノコも自分で獲りに行くので。
【天然キノコの七面鳥鍋】はぜひ食べていただきたいです。
それと、これだけ大きな被害あったので「本当にあそこまで足を伸ばしていいのか」という方々にぜひ言いたいのは、今の現状が能登なんで。現状の能登を見ていただいて、その中で良いものって必ずあると思うので、地元の人たちでは気付かない部分、外から来る方々でその素晴らしい部分が必ず見えてくると思うので、そういったところを人々に伝えていただければ、「能登へ行っても大丈夫だよ」という感じになるのかなと思っています。」
お宿たなかのお料理、本当にたくさんの食材を贅沢に楽しめます!
今の時期は「毛ガニ」や「寒ブリ」の刺身やしゃぶしゃぶ
5月からは「岩ガキ」
夏になれば「アワビ」
そして秋には「天然キノコの七面鳥鍋」
お肉は「能登牛」と、一年通して能登の食材でおもてなし。
お宿たなかはホームページから予約が出来ます。
最新情報はお宿たなかのインスタグラムから。