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24.08.16
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地物の魚を味わってほしい〜いち早く再開した能登町の鮮魚店を訪ねて


1月1日の地震から8か月が経過した能登町。今もなお被災した家屋が点在し、解体や復旧工事が続いていますが、先週は地震の影響で延期となっていた成人式の式典が行われるなど、少しずつ日常を取り戻しつつあります。

そんな能登町の松波地区で約50年前から営業を続けているお魚屋さんが、「魚正鮮魚店」。取材に訪れた日も注文を受けたお刺身を仕込んでいる最中でした。


「キジハタ、フクラギ、タチウオ、クロダイ、サザエ、サワラ、イカ、サーモン、甘エビ、タコ、ハモ・・・、これ、お昼に田舎独特の感じでね、子供たち帰ってきたりとか」

魚をさばきながらお話しを聞かせてくれたのは、店主の梶山浩一さん。傍らでは妻の久子さんがサポートをしていらっしゃいました。

津波で船が転覆したり地震の影響で海底が隆起して船が出せなかったり、奥能登の漁業は大きな影響を受けていますが、漁を再開している漁師さんや、近くの宇出津漁港などいくつかの漁港も再開していて、お聞きの通りお店には色とりどりいろんなお魚が並んでいました。

しかしお店のある通りには崩れた家々がまだ手つかずで残っており、半年以上が経過したとはとても思えない光景。そんな中で店を開け、避難先から一時帰宅したり子供たちが里帰りしてきた家庭に届けるお刺身を、嬉しそうに笑顔で仕込んでいた梶山さんの表情が印象的でした。

松波地区には推定で高さ3.1メートルの津波が押し寄せ、漁船は転覆したり岸壁に打ち上げられたり。定置網漁の網も流されたといいます。そして電気や水道もストップして、「魚正鮮魚店」も休業を余儀なくされますが、わずか2か月後の3月1日にお店を再開しました。


「これ(向かいの家)の向こうが浜なんですよ。あの浜の前で胸まで、1メートルぐらいじゃないかな。でも船(陸に)上がってもうてるからね。津波よりも道がばーっと割れていく。前の小屋がガサッと落ちて。で、町内の人を避難させなきゃダメやし、みんな集めて上まで上がった。上まで上がって“なんか津波が来るみたい”っていう感じでずっと見てたんですけど、音だけ。ぜんぜん聞いたことない音。海が鳴いてるみたいな感じ。ガーって。んでザアザアが収まってから帰ってきたら、ここベタベタ。海まで小川があって小川から上がってきたんじゃないかな。大根から木の屑からここいっぱい。うちの店のギリギリまで。2ヶ月休んだね。3月1日から1個だけある仕入れのとこ、宇出津漁協が3月1日から開催。僕も3月1日からずっと仕事してるんですけど2ヶ月で休んだ。

(その時はまた人もいなかったんじゃないですか?)今も一緒。仕事やからね。誰もいないっていうのもあんねんけども、やっぱり帰ってくる人もちょこちょことね。やっぱり今までのお客さんがあるし、お客さんも懐かしいいうのあるから、閉めようという気はさらさらない。

これからこっち(先の建物)ぜんぶ潰すんですよ。家を。だから松波が半分になる。ちゃんと建ってても“住みたくない”ってどっか行ってんねん。潰れた人は仮設(住宅)に入れるけど、潰れてない人は仮設(住宅)にも入られないし、家はそのままやけど、金沢に子供がいてたら子供のところとか。ほんでも思うんだけどね、1年ぐらいしたら帰ってきたくなるんじゃないかって思う。そんな時にやめてたらダメでしょ。ただそれだけやね。やってて儲かるかいうたらそんな儲かるもんじゃない。でも仕事や。今まで儲けてるから頑張らな。」



能登町の「魚正鮮魚店」店主、梶山浩一さんのお話しでした。

もともと地域にあった“過疎”という課題が、地震によってさらに進むことへの懸念についても、梶山さんは話しておられましたが、能登町は5月末に「能登町復興計画」を策定して、復興や新たなにぎわい創出へ向けて歩み始めています。キャッチコピーは「未来のとびら」(MIRAI NO TOBIRA)

大きな旗も重要ですが、地物の美味しい魚や、昔ながらの地域の歴史、魅力を、地元の人とふれあいながら知ることも、地域の再興にとっては大切な要素の一つであると思います。

夫婦でちいさなともし火を守っている「魚正鮮魚店」。梶山さんによると、今はハチメ(メバルの仲間)、サザエ、少し値段は高いけどアワビも美味しいということでした。イートインのスペースはありませんが、せっかく能登へ行ったなら地物の魚を食べたいもの。“醤油くらいは出すので車の中で食べて貰えたら”と笑顔で話しておられました。

ちなみに取材後、スタッフは真ダコと焼きハモを購入し、味あわせて頂きました。いや、本当に美味しかったです!


「魚正鮮魚店」、能登町へ行く機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。

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