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24.07.05
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七尾湾の名物「能登とり貝」が地震被害を乗り越えて初出荷


4か月ぶりに放送を再開したHand in Hand。今回私たちが訪れたのは、令和6年能登半島地震の被災地、石川県七尾市の能登島です。七尾湾に浮かぶ風光明媚な能登島は、古くから半農半漁の島として知られ、1980年代以降は「のとじま水族館」や「ガラス美術館」、ゴルフ場などの開業によって、観光の島としても人気を集めています。

そんな能登島はブリを獲る定置網やナマコを獲る底びき網も盛んで、なかでも県内外のプロの料理人などから評価が高いのが「能登とり貝」です。

寿司ネタや刺身などでおなじみの二枚貝、「とり貝」。しかし「能登とり貝」は、一般的に流通するものより身が大きく肉厚で程よい歯ごたえがあります。最高等級の「プレミアム」は200gを超えるビッグサイズに!味わい深く上品な甘みと旨味が特徴とも言われています。

貝じたいも、通常のとり貝の殻はやや褐色がかった色ですが、「能登とり貝」は黄色が鮮やか。そして身は黒が濃いのが特徴です。


そんな「能登とり貝」は、漁獲量が減った七尾湾特産のとり貝を安定して供給しようと、石川県が種苗の生産に取り組み、国内で2例目となる事業化に成功。県から種苗を受け取った七尾湾内の4地区の限られた生産者に配布して、互いの協力で育成の手法を磨き上げ、2015年から出荷が始まった養殖トリガイのブランドです。

今年元日の「令和6年能登半島地震」では、その養殖施設も被害を受けましたが、5月の初競りでは最高等級の「プレミアム」が1個当たり2万5000円と、過去最高額で競り落とされ、関係者の間に安どの輪が広がりました。

そんな「能登とり貝」の生産に初期から携わり、養殖技術向上の面でも貢献、そして地区の生産者をまとめ、リードしてきた第一人者である、山本吉昌さんに今回はお話を伺いました。

◆◆

「能登とり貝は、ブイに縄を張って、砂の入ったコンテナに貝の種を入れて、10メートルほど下にぶら下げるんです。そしてそれを、ひと月ぐらいするとだんだん砂も汚くなるので掃除をするんです。ひと月1回。それを1年。

天然のとり貝は1年で出荷ってちょっと難しいんです。十分太らないんです。それでほうぼうから聞いたり試行錯誤して、砂もこういう“アンスラ”(アンスラサイト=無煙炭)っていうのを使って。それでぐんぐん太るし1年で出荷できる。出荷間近になると85mmぐらいに大きくなるんです。

去年もうまくいってたんです。12月まで。“今まで最高の数が出せるかな”と。そう思っていたら今回の地震にやられて。ぶら下げてあるから揺れ自体は大丈夫なんだけど、潮の流れがすごく強かったもんで、張ってある錨が引っ張られて隣の縄と絡んで、箱もみんなめちゃくちゃになった。全部ではないんだけど一部。それを処理するのにひと月ばかりかかりました。絡んでなくてもこの潮でコンテナがひっくり返って中の砂が出てしまって、貝は蓋してあるから出てないんだけど、すぐ行って直したんだけど、次見るとまただめなんですよ。やはり潮の流れがひと月ばかり強かった。それで貝じたいもストレスがかかって太らない。小さい12月頃のサイズのまま、そういう貝が1/3ぐらいいたと思う。

(壊れた筏)
(通常時)
(地震直後、潮で砂が流出した様子)
それでも大きくなるのは順調に大きくなって安堵しました。関係者からは“じゅうぶん今年の貝も美味しい”という声も聞いています。うちらも刺身も食べるけど、半分に切ってきれいに腹のワタを取って、そして一瞬、煮立ったお湯で湯がいて、そして醤油ちょっとつけて食べる・・・地震があったからよけいに旨い気がする(笑)」


石川県七尾市、能登島の「能登とり貝」生産者、山本吉昌さんのお話し。地震のあとの潮の被害を乗り越えた「能登とり貝」の味わいは、さぞ格別だったことでしょう。

地震の影響で出荷量は例年より2割ほど減少したものの、山本さんはじめ生産者の努力によって、例年と変わらない品質のものが出荷できたということ。何しろ山本さんは地震のあと、家の片づけを後回しにして「能登とり貝」の養殖施設修復に向かった方。山本さんをはじめとする生産者のこうした向き合い方、思いが、最高品質の「能登とり貝」を生み出しているのでしょう。

5月から始まった漁期はわずかひと月ほどで終了。すでに来季へ向けた作業に入っています。漁期が短く希少な高級品ですが、6月1日〜16日に開催された「能登とり貝フェア」では、そんな希少な「能登とり貝」が味わえるということで、全国からファンや食通の愛好家らが七尾や金沢の参加店を訪れ舌鼓をうったとか。来季の収穫時期を狙って旅を計画するのもおすすめです。

(「能登とり貝フェア」より)
風光明媚な能登島ですが、地震の直後は2つある橋が通行止めとなって孤立。「能登島大橋」は通れるようになりましたが、もう一つの「ツインブリッジのと」は今も通行止めが続いています。倒壊した家屋などつめ跡は今も残っていますが、宿泊施設や飲食店なども再開、少しずつ元の姿を取り戻しつつあります。観光で訪れるのも復興の一助となりますので、これから夏秋の行楽で能登島を訪れるのもおすすめしたいと思います。美味しい七尾湾の海の幸も待っています♪

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