福島県浪江町発の新ブランド野菜「ゴルゴ・ナミエ」と「月と太陽」
Hand in Hand、今回は、福島県浪江町発の新ブランド野菜、「ゴルゴ・ナミエ」と「月と太陽」についてお伝えしました。
まるで歌のタイトルみたいなネーミングですが、これ何かというと、イタリア原産の根菜「ビーツ」(ボルシチの具だったり、ポタージュやグリルのソースなどでよく使われます)。
手がけたのは浪江町にある“コミュニティー実験農場”、「なみえ星降る農園」。この農場は、土づくりの段階で、地元の酒蔵の酒粕や、“土壌改良と獣害対策に有効”とされる「ヒトデ」をまいているんです。
ヒトデ・・・星の形してますよね?? そんな農場に東北の“スター生産者”が集まり、地域の名産品となるような“スター作物”を産み出す・・・! そんな思いから農場の名前は付けられました。
プロデュースしたのは、東日本大震災で被災した東北地方の食産業を支援するため、多くの企業や団体が参画して2011年に立ち上げられた一般社団法人、「東の食の会」。
2021年11月に開園し、初年度はなんと70種類もの作物を手掛け、現在は2〜30種類に絞って栽培を続けています。
その中から新ブランド第一号として、この夏8月ごろにデビューするのが、「ゴルゴ・ナミエ」と「月と太陽」です。
「東の食の会」専務理事・福島県浜通り地域代表で、「なみえ星降る農園」プロデューサーの、高橋大就さんにお話を伺いました。
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『東の食の会は、震災直後、東北の農業漁業食産業がなくなっちゃうんじゃないかっていう危機感のもと、食の企業家の方々と、個別ではなく、かつ短期間ではどうしようもないってのもはっきりしていたんで、長期にわたって産業をあげて東北の素晴らしい食産業を復興させようっていうことで立ち上げました。とにかく東北の素晴らしい食の生産者、農家さん漁師さん加工業者さん卸さん、そういう方々をどんどんヒーローにしていこうと。今までのところに戻しても産業は成り立たないってのもうはっきりしていたんで、この地域から新しい産業を興していこう、新しい農業漁業食産業を作って行こうっていう方々を全面的にバックアップするってことでやってきて、具体的にはそういう方々に、ビジネスのスキル、マーケティングスキル、売るスキルみたいなことをお伝えしていきながら、一緒にブランド作ったり、ヒット商品を東北から生み出そうということで、たとえば鯖の缶詰の「Ça va缶」ですとか、捨てられてた海藻のアカモクのブランディングをして全国のブランドにするというようなことをやりつつ、あとは消費者と生産者をつなげていくっていう活動をずっと地道にやってきてます。
「なみえ星降る農園」というのは、このいちばん大変な福島、原発周辺地域から、どうやってブランドを創り出していくかっていうこと考えた時に、まだ、“本当にこの地域で農業ができるのか”、“人が住めない、農業なんてもってのほか”、と思ってる方もいる中で、ここから食のブランド作るためには思いっきり人のイメージを変える必要がある、なのでいちばんいいのは、“関わってもらうこと”だと思ったんです。出来た作物だけではなく、その作る過程も含めて、人々がどれだけ関わり、その過程がめっちゃオモロイ!っていうものをいかに生み出せるかっていうことが、そのイメージを変えるのには早いかなと思って、そういう意味で考えて作ったのがこの「なみえ星降る農園」です。
去年実験をやって収穫した中で、いちばん私が“これはブランドとして成功しうるんじゃないか”と見定めたのがこの“ビーツ”でして、品種が「ゴルゴ」っていうんですね。名前も素敵だし、切ると断面が渦巻き、綺麗な鮮やかな渦巻きになっていて、ものすごくビジュアルが綺麗で、且つシェフに食べてもらったら味も評判が良いということで、この「ゴルゴ」っていうのを浪江発のブランド第一号としてデビューさせようと、ロゴやブランディングを決めて発表させて頂いたと。もう一つ同じビーツで「ルナ」と「ソーレ」、これイタリア語で「月」と「太陽」っていう意味なんですけど、“野菜のデュオでデビュー”って今までないと思うんで、非常に鮮やかな黄色のビーツと赤のビーツなんですけども、それを「月と太陽」っていうコンビ名で2個セットで売り出そうという考えでデビューさせました。』
『一般的にはサラダ、あとはスープにしたり、フレンチ料理なんかとソースによく使うんですね。あとシェフにいろんなレシピも開発して頂いたんですけど、そのまま焼いたグリルしたもの=ステーキも非常に評判がよくって、収穫が夏になる予定ですが、少量なんで近しいレストランで提供して頂く予定です、東京も含め。これはこの「星降る農園」だけが作るんではなくて、浪江の生産者の方々にはどんどんフリーで使ってもらおうと思っていて、いま何人か作ってくださってるんで、収穫量も増えてきてもっと多くのレストランで楽しんで頂けるようになったらいいなと思ってます。道の駅でも販売したいと思います。「道の駅なみえ」ですね、はい。』
お話を伺った高橋大就さんは現在48歳。元外務省の官僚で、震災時は外資系コンサルティング会社に勤務。東日本大震災を目の当たりにして、“復興のために為すべきことをする”と決意。東北支援NPOへの参加を経て、「東の食の会」の立ち上げに関わり、これまで数多くのプロジェクトに関わってきました。そして10年が経った2021年、いまだ多くの課題が残る福島県の復興に力を注ぐことを決め、浪江町へ移住されました。
浪江町はいま、街の再興も進み、若い移住者もどんどん増えています。そんな浪江町での生活について高橋さんは、“移住者も多く、毎日新しい何かが生まれる・・・希望が溢れる「浪江町の今」が、非常に楽しい!”と語っていらっしゃいました。
今後大きく広がっていくであろう浪江町の新名物、「なみえ星降る農園」の新ブランド野菜、「ゴルゴ・ナミエ」と「月と太陽」。「道の駅なみえ」でも販売が予定されているという事なので、ぜひ浪江町に足を運んで、そして味わってみてください。