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23.05.26
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能登地震で2度の被災「切り出し七輪」丸和工業


5月5日に発生した石川県能登地方の地震で被害を受けた、珠洲市の伝統工芸「切り出し七輪」の製造会社、丸和工業。


七輪は大きく分けて、“練り物”と“切り出し”で作るモノがあります。“練り物製法”は、珪藻土を砕いて練り、型に流し込んで整形する製法。安価で大量に生産できる反面、劣化が進むと崩れやすく、一方の“切り出し製法”は、山から切り出した天然の珪藻土を職人が削り、およそ2日間かけて薪窯で焼く製法。こちらは熱効率が非常に高く、丈夫で、軽いのも特徴です。

珪藻土がふんだんに採れる石川県珠洲市では、江戸時代から「切り出し七輪」づくりが盛んで地場産業として発展。全ての工程を人の手によって行うこの七輪づくりは、珠洲市の「無形民俗文化財」にもなっています。

5月5日、震度6強の地震に見舞われた珠洲市にある、丸和工業を訪ねました。代表、玉置仁一さんのお話です。


「最初の6強の時、この屋根が落ちてなかったんですよ。余震の5強、あれで次の日来たら落ちてたんで。この窯も今年の1月9日で完成したばかりで、2月の中頃に火入れ式を行って、やっと出来てこれから、という時にまたこんな大きな地震があったので。まさか1年も経たないうち2回も来るとは思ってなかった。」


「ここで一番の被害は建物ですね。建物がまっすぐ建っていない。(まず建物を直さないと復旧作業が出来ないですね?)そうなんです。おまけに厄介なことに窯の上に屋根が落ちたんで、これがうまく取れれば。(しかも地震のあと雨が)シート掛けられないんですよ。だから雨が染み込んでるんで。どっちみち窯も修復しないとダメだと思うんで。前は窯だけだったんで、これくらいならクラウドファンディングで行こうかという感じでしたが、今この建物、ちょっと目途が立たないのでどうしようかなーと思ってますね。」

傾いて今にも崩れそうな建物と、崩れた屋根が窯に覆いかぶさる光景

「1月に完成したばかりの窯」とは、実はこの地域、去年の6月にも震度6弱の地震があり丸和工業の窯も被害を受けていました。クラウドファンディングの支援などで費用を集めて、ようやく修復し、3月から生産をはじめた矢先に、また今回の地震が起きました。

そしてまだ1か月経っていませんが、今は覆いかぶさる屋根は撤去され、再開へ向けて歩み始めています。

“伝統工芸の灯は絶やさない”という玉置さんの思いとは。

「昔は練炭中心だったんで業者もたくさん居たんですけど、電気ガスに押されて斜陽産業になってだんだん辞めていったり。昔は切り出しの会社は30軒くらいあったんですけど、今は2軒。去年、珠洲市の無形民俗文化財に指定されたのがウチともう一軒なんで、そういうのもあるので簡単に辞めるわけにいかないんで、この伝統技術をずっと繋いでいきたいなと思って、頑張ろうかなと思ってます。だから最初は皆で相談したけどみんな辞める気はなくて、やる気満々なんでよかったなと思って前向いてやってます。」

―――切り出し七輪の魅力は?

「切り出し七輪の場合は切り出すその技術が、文化財に指定されとる。ノミだけで切る、鉄砲ノミと平ノミだけで。切り出しは練りと違って多孔質(たくさん穴があいてる)ので遠赤外線が出て、魚にしろ肉にしろたいへん美味しく焼けます。家では肉系の方が多いですね(笑)海のものはナマで食べるから。干物とは七輪で焼くと美味しいけどね。」


丸和工業。正院町の工場再開はまだ目途は立たないものの、被害が軽微だった近くの「杉山工場」でまもなく再開を予定しています。
現在、残っている素材で七輪づくりと販売は継続中。通販サイトから購入も可能です!

丸和工業公式サイト
切り出し七輪ネットショップ




今回の地震について、政府は「局地激甚災害」に指定、復旧にかかる費用を財政面で支援することになっています。



取材したスタッフによると、大きな被害を受けている地域はあるものの、飲食店や民宿など、営業を再開しているところも多いということ。美しい奥能登の景色や海の幸などを求めて、観光で足を運ぶことも復興の支えにつながります。回転寿司のネタは新鮮で地元の方にも人気だとか!

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